STEREO CLUB TOKYO

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シャッターのチューニング(前編)

 前回、ガバナーに手を出してはならないとしたが、簡易的なものでもシャッタースピード測定器があれば調整が可能になる。測定器については以前にこのコラムで紹介された方法を使い、完全な調整を行ったので簡単に紹介する。聖域への挑戦である。
 まず、設定カム①を取り外す。これはビューファインダー鏡筒に差し込まれているだけなので簡単に引き抜くことができる。このカムをよく観察すると、山部にタガネを打った痕がある。これは調整のために叩いて寸法を伸ばしているのである。寸法を縮小する場合は削ればよいが、伸長する方法としてこのような手法を採っている。この手法は左右のシャッター羽を連結する軸にも見られる。部品の機械加工精度だけに頼るのではなく、組立時に一台ずつ調整を行っていたことが想像できる。
 次にガバナーを取り外し、分解してギア類も全て洗浄液に浸し、清掃と脱脂をする。シャッターの低速側は、ガバナー内にあるガンギ車とテンプによって発生する抵抗でシャッタースプリングが戻る時間を制御している。シャッター秒時の各段階は、ガバナーの扇形ギア②の位置を変え、ガバナー抵抗から開放されるタイミングを変えることで秒時設定をしている。ここで、扇形ギア②の位置を段階的に保持するのが先ほどの設定カム①というわけだ。高速シャッターではガンギ車からテンプが離され、抵抗の解除をするのだが、ガバナー内の変速ギアの回転抵抗が残っているのでこれを利用して制御している。段階の設定は低速シャッターと同じしくみだ。機構的にギア軸受の汚れや油の高粘度化が原因でシャッターが不安定になる。
 ガバナー内のギアは高速で回転するので、僅かな狂いが不安定な動作になって現れる。組立は慎重に行わなければならない。無理な力でギアが変形すると本来の機能の回復は期待できない。機械時計を組み立てるのと同じ集中力が要求される。(つづく)
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投稿者 sekiguchi : 2007年02月25日 17:09


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