STEREO CLUB TOKYO

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除虫菊の里

 夏が近づくと、あのいやな虫、蚊が飛び回る。奴らはほんの少しの水溜りさえあれば繁殖する。バケツに水を入れて外に放置しておこうものなら、ボウフラがたくさん涌いてくる。それにしても、奴らはどうやって冬を越しているんだろう。
 蚊を退治するのに今ではいろいろと殺虫成分を配合した商品が売っているが、僕らの世代で馴染み深いのはやはり蚊取り線香だろう。少々煙たいが、ブタを模った線香置きなど趣深い。線香の渦巻き型、昔は手でこねた線香のモトをひも状にして巻いて形作った。燃焼時間を長くする工夫だという。この線香のモトに、蚊が嫌う殺虫成分を錬り込んであるというわけだ。
 蚊取り線香のパッケージには菊がデザインされている。そういえば子供の頃、蚊取り線香には菊が練り込んであると聞いた。だから強烈に濃い緑色なのか、と納得したのを思い出す。だけど、仏壇の線香も含めて、線香は緑色が普通だったじゃないか。やはり、なぜ緑?・・・まあ、それはさておき、練り込んでいる菊は普通の菊ではなく、殺虫成分を多く含む除虫菊であるということを最近になって知った。今は大量生産のために合成された殺虫成分が使われているが、今でも昔ながらの蚊取り線香がある。
 この除虫菊の花畑が瀬戸内海の因島で見られるという。5月ごろが見ごろだというので行ってみた。日の当たる斜面を利用して除虫菊が植えられている。小さな白い花が一面に広がっていて美しい。こういう花畑を立体写真にすると面白い。立体で見ると、一つ一つの花が分離して、どの花も主張しているように見える。これが線香になるとは想像もつかない。
 それにしても瀬戸内海というのはいつ行っても波が穏やかだ。静かな海に小さな島々が浮かぶ。風は穏やかで波の音もせず、海はまるで大きな湖のようだ。ふと見上げれば、除虫菊の咲く丘から島々を結ぶ吊り橋が見える。これだけ美しい風景がありながら、派手な観光地にならずに島の暮らしが残っている。のんびりと海からの風を身に浴びるのが心地よい。

除虫菊.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年05月14日 10:00


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