STEREO CLUB TOKYO

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感謝のしるし

 太陽はまだ欠けている。ちょっと太い三日月のような形をしているが、周囲は普段の日中の風景を取り戻している。大きな感動が過ぎ、体の力が抜ける。この体験は、どのような記録機材を駆使しても再現することは不可能だろう。コロナの濃淡の全てを記録できる装置はなく、ましてや写真プリントではコロナやプロミネンスの力強い輝きを再現できない。
 そんなことを考えながら、バラトン湖畔でビールを片手に余韻に耽る。写真撮影は少しだけした。でも、撮影結果が失敗に終わってもいい。自分の眼で見て、体で感じたものは決してカメラでは記録できないのだ。カメラは目では見えないものも捕らえることができるが、残念ながら目で見える全てのものを記録できるわけでもないのだ。
 この場所にいた、全ての人が感動に浸っている。皆、幸せそうな表情をしている。あちこちで祝杯があがる。感動のあまり、バラトン湖に飛び込む人までいるではないか。だんだんと力が抜けて、腹が減ってきたことに気付き、ホテルのスタッフが用意してくれた軽食とワインを貰う。彼らに礼を言い、彼らをステレオで撮影させて欲しいと願い出た。
 するとスタッフのチーフと思しき人物が、写真を送って欲しいという。彼の住所をメモし、必ず送ると約束した。(後日談。帰国してからステレオスライドに仕上げ、ビュアーと共に彼の元に送ったときのこと。彼は約束したのが立体写真だとは思っていなかったらしい。ずいぶんと喜んでもらえたようで、シーズンオフで家族と共にブダペストに引き上げた先から返事が届いた。)
 さて、皆既日食を終え、明後日は帰路につく。途中、ドナウの真珠とも謳われるハンガリーの首都・ブダペストに立ち寄り、最後の観光を楽しむ予定である。フィルムはまだまだたくさん残っている。ステレオ・リアリストも快調に働いてくれている。古い都に古いカメラがマッチして、いい写真が撮れるに違いない。(つづく)

ホテルスタッフ.jpg

手紙.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2010年12月23日 10:00


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コメント

再開。たのしみにして読んでいますよ。
読者がたくさん来ているのに、反応が少ないのは、
ワタクシも経験しておりますが、たまにはエールです。

投稿者 テツオ : 2010年12月24日 09:34

お楽しみいただき、ありがとうございマス。
今お読みいただいている、ハンガリー旅行編は次回で終わりとなりますが、引き続きいろいろな題材でボチボチ続けてまいります。

今後とも御贔屓のほどお願い申し上げます。

投稿者 sekiguchi : 2010年12月26日 23:49