STEREO CLUB TOKYO

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火口の島

 三日月形をした島の真ん中に、誰も住んでいない小島がある。この島が大昔、海に浮かぶ火山だった名残だ。海に沈下した山の、火口の部分が小島になっている。サントリーニ島には遊覧船があって、この火口の島に渡ることができる。
 船に乗り、内海を巡る。火山活動は完全に休止しているわけではなく、一部には温泉が涌いているという。そのスポットに船が到着すると、皆、海に飛び込んでゆく。日本の温泉のような雰囲気ではなく、海の一部が温かくなっているというわけ。カナヅチの僕は温泉に浸かるのは遠慮しておいた。とても船から飛び降りる勇気はない。
 内海は穏やかで、波も少ない。ふと船の縁から海底を覗き見ると、どこまでも透明で美しい。火山島の荒々しさとは対照的な美しさが海の中にある。誰かがビスケットを投げ入れると、小魚たちがいっせいに群れてついばむ。
 船は温泉客を収容し、火口に続く入り江に到着した。ここから歩いて火口を見るのだ。本島の美しい街並みとはかけ離れ、荒々しさだけが広がっている。足元は黒い岩ばかり。溶岩が固まったものだ。中には溶岩の流れた模様がくっきりと刻まれた大岩もある。歩きづらい、道なき道の山登り。さすがに体力が尽きてきた。
 火口まで行くことは断念し、ちょっと一休み。先に行った人達が戻ってくるあいだ、辺りを眺めると溶岩の岩ばかりの土地にも植物が根付いている。遺跡のある山で見た、香りの強い草花が群生している。風で種が運ばれるのだろうか。荒れ果てた土地にも、こうして生命が根付こうとしているのだ。命というのはなんと逞しいことか。
 火口まで行った人達が船に帰ってきた。皆満足げな表情だ。大きな黒い岩を土産に持ってきた人もいる。船は火口の島に別れを告げ、内海を廻ってもとの港に帰ってきた。さて、今日でこの地ともお別れだ。また会いましょう。
(ギリシャの旅・おわり)

サントリーニ6.jpg

火口.jpg

次週より、別の異国の地をご案内いたします。お楽しみに。

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年07月14日 10:00


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