STEREO CLUB TOKYO

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南の海岸

 景勝地と呼ばれる場所に行くと、日常にはない不思議な風景、感動的な風景に出会えるのだが、立体写真として面白い写真にするのは難しかったりする。それは大体が遠景で、普通のステレオベースのステレオカメラで撮ったのでは立体感が出ないのだ。高台から見るパノラマ的な風景なんていうのは、リアリストが最も不得意とする被写体だ。
 それでも、なるべく立体写真として面白いように構図を考えるわけである。例えば、被写体が遠景だったとする。ステレオカメラで普通に撮っても平面的な仕上がりになる。かといってステレオベースを大きくするにも限度があるし、なによりスナップとして撮るには無理がある。そんなわけで、近くにある雑草を視野に取り込んでみたりとかするわけ。でも、安易な工夫というのはダメだよねぇ。仕上がりを見てがっかりする。当たり前だ。手を抜いたのだから。さて。
 九州の東側、宮崎県の日南海岸はきれいな海で知られている。とある夏の日。海岸沿いを車で走ると、切り立った断崖の下に澄んだ海が広がっている。その青さといったら、濁りのない青なのである。陽の光りを反射させ、海岸の深さに応じて色合いが変化して美しい。それに、ここの海岸は普通の海岸ではないのだ。鬼の洗濯岩と呼ばれている。
 太古の地層が浸食され、隆起したことで巨大な洗濯板のような形になっている。見渡す限りの海岸一面がこのような風景だ。子供向けの百科事典では、地層や地面の沈降、隆起を説明する事例としてよく紹介される。僕も子供のころに図鑑で見た「鬼の洗濯岩」は深く記憶に残っていた。でも、宮崎県にあるというのは忘れていたけどね。
 車の窓から見える風景だけでは満足できない。青島を散歩しながら潮の引いた海岸を散歩する。日差しは強いが気持ちのよい日だった。波の音を聞きながら、この不思議な地形を歩く。潮溜まりには小さな魚が泳いでいた。

撮影には画面サイズを拡張改造したステレオ・リアリストを使っています。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月15日 10:00


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