STEREO CLUB TOKYO

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巻き上げのこと

 さあ撮りますよ、という前にフィルムをよいしょと巻き上げな。フィルム巻き上げはノブを回すんだ。ぐりっと時計回りに止まるまで。うん?巻き上げレバーだって?そンな便利なものはないよ。
 ノブを回す時にはロック解除ボタンを押しながら回し始めるんだ・・・ほら、いつまでも解除ボタンを押しているとパトローネからフィルムが全部でちゃうよ。はじめだけボタンを押して、ゆっくりノブを回せばいいんだ。決められたところまでフィルムが送られればカチリと止まる。どうやっているかというと、主役は裏ブタを開けた時に見えるギア、スプロケットギアだ。
 このギアの歯数を数えてごらん。10個の出っ張りがある。この出っ張りはフィルムのパフォーレーション穴にはまり、フィルムが進むとギアが回転を始める。このギアは、一回転するごとにロックがかかって回転が止まるようになっている。このロックを解除し、ギアを回転する状態にするのが、さっき巻き上げるときに押したボタンなんだ。実はスプロケットギアは自分自身では回転しない。フィルムに動かしてもらっている。そのフィルムを動かしているのは君の指。でも、スプロケットギアが一回転して止まっても、君の指がもっと巻こうとしたら?フィルムが切れてしまうだろう。だからスプロケット君はもう巻けないよ、と巻き上げノブのロックも同時にかけてしまう。
 スプロケット君はフィルム巻き上げのコンダクターだ。彼はいつも、フィルムの穴10個分のリズムを数えてくれる。カチン、カチンと数えてくれる。何でいつも10個分のリズムでいいかって?それがリアリストのきまり、スプロケット君との約束さ。
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投稿者 sekiguchi : 2004年09月25日 01:21

あなたのカメラホールドは間違っている!?

 普通に構えると指がレンジファインダーの窓を塞いでしまう。一体どういうことか?普通のカメラのように、両サイドを握るようにしてホールドするとレンジファインダーが使えない。おまけにこの構え方だとフォーカスダイヤルの操作も非常にやりにくい。実は、リアリストはまったく別のカメラホールドを前提にして創られている。
 なぜかこのカメラの底には革が貼ってあるが、デザイン的な理由ではなく、実は滑り止めである。底を両親指で支えて、人差し指から薬指でトップカバーを押さえる。つまり、カメラの上下をつまむようにする。シャッターは左手人差し指で、フォーカスダイヤルは右手人差し指か中指で操作する。こうするとレンジファインダーを塞ぐことなく、各部の操作が快適にできる。疑う事勿れ。本当だから試してみなさいってば。
 ステレオカメラでは水平に注意して構えることが大切、とよく言われている。構える時に両手が同じ形だと、自然に水平を保ちやすくなる。さらに、ファインダーがボディの下側についているから額にカメラを押しつけるような構えになり、安定が増すのだ。ファインダーが上側についているのが常識であるように我々は思っているが、上側についているカメラは鼻が邪魔をして安定が悪い。だから両脇を締めて腕を固定し、安定させなければならない。リアリストの”おでこホールド”は欧米人の高い鼻だってまったく影響せず、両脇を締めなくても安定する優れたアイデアだ。おでこホールド万歳。
 ファインダーが下にあるステレオカメラは、コンチュラ、イロカラピッド、リアリスト45、キンダーステレオがある。グリップのしかたは違うが、みんなおでこホールドの仲間達である。ちなみにリアリストの取り扱いマニュアルに描かれている絵であるが、よく見ると。。。デザイナー氏はカメラホールドの指の位置までは理解していなかったようである。
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投稿者 sekiguchi : 2004年09月18日 02:20

3個目の目玉・ビューファインダー

 このカメラ、ほんとうに変っている。正面から見るとレンズが3個並んでいるように見える。だけど、真ん中のレンズは構図を決めるためのファインダーになっていて、カメラの裏側、それも下の方にある小さい覗き口とつながっているのだ。対物レンズと覗き口の間には、2枚の鏡が入っている。覗き口とは言ってもちゃんとレンズが入っていて、アイピースになっている。アイピースを覗くと真四角の小さな絵が見える。僕たちが良く知っているコンパクトカメラのファインダーとはだいぶ見え方が違う。なんだか、写る範囲をぎゅっと圧縮してトンネルの向こうを覗く感じだ。対物レンズは、実は度が非常にきつい凹レンズになっていて、かなり広角の画面をマスクで四角く切り取っている。ファインダーとしての倍率は低いので、もう少し大きく見えてもいいのに、と思う。だけど、全体が一度に見えて構図がとりやすいと考えることもできるし・・・。
 ところで、ステレオカメラの左右のレンズの間にある空間、これはフィルムに像を結ぶ上では必要のない空間だ。ここにファインダーの機構を埋め込んだことは、スペースの有効利用になっている。おまけに、左右のレンズの中間に位置することで、撮影距離によって生じるファインダーと撮影レンズのずれ、つまりパララックスの影響をなくしている。ファインダーの構図と鑑賞時の画面の構図が極めて近い関係になるようにできているのだ。ステレオカメラのファインダー位置としてこれ以上に最適なものはない。もう一つ感心するのは、ビューファインダーの鏡筒をシャッター機構の作動軸としていること。分解しなければ見えませんけどね。リアリストのビューファインダーには合理化精神がこれでもか、というぐらいに詰め込まれている。すごいね。
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投稿者 sekiguchi : 2004年09月11日 00:36

ミリタリー・レンジファインダー

 レンジ、つまり距離を測るファインダーであり、三角測量の原理でピント合わせをする。フォーカスダイヤルとレンジファインダーは連動していて、撮る人は距離を測りながらピント合わせをしていることになる。さて、レンジファインダーの像は上下に分割されていて、ピントが合う位置でピタッと合致するようになっている。キンダーステレオやイロカラピッドは像が二重に見える方式。どちらが使いやすいかというのは個人の好みで意見が分かれるところだろう。一般に、像が上下に分かれる方式は視覚効果の点で測定精度が勝ると言われているが、カメラ用の精度で問題になるものじゃない。
 リアリストで採用している方式はミリタリータイプと呼ばれる。戦場で砲撃をする時には、敵のいる場所までの距離を測量しなければ話にならない。ミリタリーとは、この時に使われる測距儀という光学機械が同じ方式を採用していたことに由来する。ちなみに、かの戦艦大和には世界最大級の測距儀が艦橋の上部に配置されていたという。
 リアリストは、フォーカスダイヤルを回すとフィルムレールが動き、フィルムレールに直結したピンが回転してレンジファインダーの部品を動かすしくみになっている。一心同体というわけだ。だから、レンジファインダーの像がぎくしゃく動くのを発見したら、フィルムレールの動きも悪くなっている証拠だから注意した方がいい。画面の一部がピンぼけになるトラブルが起きているかもしれないからだ。ぜひ点検を。
 ところで、リアリストのレンジファインダーの覗き口は、ビューファインダーの右側に並んで置かれている。ビューファインダーとレンジファインダーが別。僕は画面がすっきりして好きだけど。というわけで、次のお話はビューファインダーです。
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投稿者 sekiguchi : 2004年09月04日 01:36