STEREO CLUB TOKYO

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昔の思い出

 今から溯ること約10年、リアリストを手にして欧州行きの飛行機に乗った。行き先はハンガリーにあるバラトン湖。ヨーロッパを縦断して起こる皆既日食を見るためである。20世紀最後の皆既日食、1999年8月のことだった。
 皆既日食を見ることのできる地域というのは、ごく限られた場所になる。地図の上にサインペンで線を引いたような細い地域、ここに行くのである。太陽が南中する前後に皆既日食が起こる場所が最もよいので、ハンガリーやトルコへのツアーが旅行会社各社で用意されていた。問題は、その土地の天候である。8月のその土地は、どの程度晴れるのか。
 僕は天候が悪くて日食を見ることができなかった場合に備え、観光が充実しているハンガリー行きを選んだ。それでもカメラを持ってゆくことはどうでもよかった。皆既日食のコロナは自分の眼で見るに限る、と思っていたし、写真を撮ること自体にちょっとあきていたのだ。せいぜい、いつものマキナ67と数本のフィルムがあればいいだろう、と。
 旅行の申し込みをする日を前後して、ふと持っていたカメラ雑誌を手に取った。ステレオカメラか・・・このとき、僕はステレオカメラについてはほとんど知識がなかった。撮影に失敗しないよう一度に2枚を撮るものだ、昔のフィルムは質が悪かったんだろうなんて勝手な想像を膨らませていたこともある・・・立体写真が撮れるカメラか。面白いかもしれない。
 どんなものだろうと少し興味が涌いてきたので、とりあえず中古カメラ店に行ってみる。いくつかあるじゃないか。珍しいものだと思っていたのだが。ふと見ると、簡単なビュアーにスライドをセットしたものが置いてあった。これを覗いてみて、自分の感覚が大きく変わった。これだ。ハンガリーに持ってゆくカメラはこれがいい。いや、これで撮影旅行をするのだ。当初の皆既日食を見に行く、という目的が、ほんの少し変わってゆく感じがした。(つづく)
マキナ.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2010年12月02日 10:00


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