STEREO CLUB TOKYO

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リアリストを持って西へ

 欧州旅行へは、リアリストを持ってゆくと決めた。当時の相場価格は4万円前後。既に旅行代金を支払ったので、予算の余裕はない。いくつか中古カメラ店を回ると、格安のリアリストがあった。相場を大きく下回る価格で入手できたのは幸いだった。本当にうまく撮影できるか不安を抱えながらもこれを購入したのだが、その顛末は前に紹介したとおり。
 さて、購入したリアリストでテスト撮影だ。単体露出計が必要だったから、これも格安で中古のスタジオデラックスを買った。今まで、反射光式のスポットメータばかり使ってきたが、入射光式の露出計というのは実に使いやすい。テスト撮影の結果は露出もバッチリ適正で、マウントしたものを簡易ビュアーで覗くと、初めてビュアーで見た立体写真の感動がよみがえる。
 これで撮影機材は揃った。フィルムは多めに持ってゆこう。今回の旅行は、ロンドン・ヒースロー空港乗継でオーストリア・ウィーンに飛び、あとは観光をしながら陸路で国境を越えてハンガリーに入る予定だ。空港のX線検査が重なるので、念のため鉛入りのバッグを使う。フィルムはかさばらないよう、箱とケースを捨てて、小さなビニール袋に入れ替えてバッグに詰めた。30本のフィルムを手荷物にするための工夫だ。預け入れの荷物に入れたりしたら、より強力なX線でダメージを受ける。
 こうして、リアリストと露出計、フィルムの3点セットがいつも鞄の中にあるというスタイルができあがった。旅の間中、僕とリアリストはいつも一緒になった。撮影することが楽しい。初めてカメラを手にしたときの、撮影することが楽しかった頃の気持ちと同じだ。いつの間にか、日食を見に行く旅行が、ステレオ写真を撮りに行くという旅行に変わっていた。
 さて、長い長い空の旅の末、ようやく夜のウィーンに到着した。既に街はひっそりと静まりかえっている。外を見ても、墨を流したような暗闇に包まれた街角しか見えない。今日はもう寝るだけ。明日からが楽しみだ。(つづく)

旅セット.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2010年12月06日 10:00


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