STEREO CLUB TOKYO

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逆ステレオ

 マウントのとき、左右の画面を間違えてセットすると凹凸が逆になった妙なステレオ写真ができてしまう。左右を間違えなくても、フィルムの裏と表を間違えても同じことが起きる。完全に貼り付けてから気がつくと、マウントをはがしてやり直さなければならないから大変だ。大事なフィルムに傷がついてしまうこともある。
 左右を間違えないようにという意味で、ステレオカメラの画面には切り欠きが付いていることがある。リアリストの場合だと、右側画面の下(フィルムだと上下が逆になるから上)に台形のくぼみが付いている。でも、実際に撮影したフィルムではこのマークは見えにくい。僕はマウント作業のときにこのマークをあてにせず、フィルムのコマナンバーの大小で左右の確認をしている。ただ、作業の時には画像が逆になる位置でセット作業をするので、コマナンバーは逆文字で見なければならない。うっかりするとフィルムの裏表を間違えてセットしてしまうことがたまにある。
 話は変わり、山の中で咲いている桜の撮影に行ったことがある。公園に咲いている桜とは違い、人の手が入っていないから樹高が高い。低い位置に枝が伸びていないので、桜の花は遥か頭上にある。おまけに足元は膝ぐらいまで伸びた雑草でいっぱい。見上げた姿勢で撮影するしかなかった。これをマウントして鑑賞すると、やっぱり花が遠くて面白みが無い。
 何枚かマウントしているときに間違って逆ステレオにしてしまった。ところが、桜の花が近くに飛び出して見える。ちょっと変わった感じの写真になったが、密集した木々の葉枝を背景に桜の花が手前に見える。普通にマウントすると地味に背景に埋もれてしまう花が、よりきれいに見えるではないか。これは面白い。マウントをやり直すことなくそのまま仕上げた。逆ステレオの使い方として新しい発見をした気分だ。積極的に使えるワザでもないが、こんな効果もあるんだというお話でした。

逆ステレオ.jpg
これは平行法でご覧下さい。

投稿者 sekiguchi : 2010年03月30日 10:00

一本桜

 春といえば桜。なじみの深いのはソメイヨシノ。いっせいに開花するので桜前線が北上して・・・というようなニュースを毎年聞かされる。ソメイヨシノというのは栽培種であり、人間が手を加えて品種改良し、全国に広めていったものである。では、品種改良したのならそのモトとなった桜は?といえは、山に咲く山桜である。山桜と一口に言っても亜種が多く、その木特有の花を咲かせたりする。ソメイヨシノより早く咲くものもあれば、だいぶ後になって咲くものもある。
 山里には古い山桜が大事に残されていて、巨樹となり、その地域の一本桜として有名になっている場合がある。天然記念物に指定されているものもある。広島県の比婆山脈にある山里に、こうした一本桜で有名なところが3箇所ある。それぞれ車で20分圏内に隣接しているから、開花の時期がうまく合えば1日で3箇所を巡ることが出来る。最近はこうした一本桜巡りがブームなのか、見に行く人も多いので桜の周りに囲いがしてある。根を踏みつけると木が傷むからである。どれも樹齢が数百年と推定される貴重なものだから、毎年花を咲かせてくれるよう配慮してあげねばならぬ。
 3本のどの桜も見事だが、千鳥別尺の山桜と呼ばれるものは視界が開けている中にドンと立っている。のんびりと花見をするのにちょうどいい。樹高が高く、周りが刈り取ったあとの田になっているので、囲いの外で弁当を広げても木の全体が見渡せる。ちょうど近くの田では田植えの前の代掻き作業をしていて、水を張った水田に大きく桜が写っている。夕刻までのんびりしていると、対面の山から満月が昇ってきた。水田に満月が映える。こういった幻想的な風景は写真に残すのがとても難しい。イメージ通りにはなかなか撮れないものだ。
 こういった風景はいつまでも失われること無く残って欲しいと思う。

一本桜.jpg ほこら.jpg
                                         木の根本に小さなほこらがある

投稿者 sekiguchi : 2010年03月26日 10:00

ビュアーへパワーを投入せよ

 乾電池というのは、得られる電力に比べ、その製造に使われるエネルギーのほうがはるかに大きい。だから電池は便利でも、よく考えて無駄なく使わなければ環境にやさしいとはいえない。ステレオビュアーのバックライトには、単1乾電池を使うものがほとんどだ。使い捨ての乾電池を屋内で使うのはやっぱりもったいない。
 では、家庭のコンセントから得られる電力、昔は電灯線と言っていたこのエネルギーで、まさに電灯を灯してみようというわけだ。豆電球用の電圧に落とすにはトランスを使えばいいのはわかっているが、僕は何度も言うように電気工作が苦手である。100Vの電気を扱う勇気は無い。
 じゃあ、簡単なところでACアダプタを使ってみっか、となったのだけど、電圧は適合しても電流が適合しないと危険らしい。豆電球というのは、意外と大きな電流が流れるらしいのだ。試しに使ったACアダプタでは電流量が足りないらしく、豆電球が蛍のように光っている。この状態はACアダプタにとって負荷が高い状態になっているのかもしれない。
 いろいろ当たってみたが、大きな電流のACアダプタというのはあまり一般的ではないようだ。あるとき、ホームセンターに立ち寄ったら、お買い得品コーナー(早い話が売れ残り)のワゴンの中に、携帯電話専用の充電用ACアダプタが置いてあった。異様に大きいので規格を確認したら、3.0Vの2Aとある。これならいけるかなと思い、いつも使っているクリプトン電球につないだら、一瞬明るく光ってフィラメントが切れてしまった。普通電球の3.0Vに付け替えると、クリプトン電球並みに明るくなった。長時間使ってもACアダプタは異常がないようだ。これなら大丈夫かな。
 というわけで、今はなんとなく不安を抱えながら使っている。いつかのようにバン!!というのは経験したくないものだ。

ACDC.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年03月23日 10:00

火星大接近

 今から約6年半前の2003年8月に火星が地球に大接近した。地球も火星も太陽の周りを楕円軌道で回っているから、あるところで大きく近づくことがあるのだ。このときはマスコミも大きく報道し、各地の公開天文台は見学客でにぎわった。僕も大きな望遠鏡のある天文台に出かけ、約5600万km彼方の火星の姿を見せてもらった。地球に大接近した火星はマイナス2等級ぐらい。望遠鏡で拡大すると赤く輝く円盤に、微かな模様が浮かび上がる。
 にわかに天文熱が出始め、情報を収集すると9月9日には月に近づいて見えるという。これは距離が近づくという意味ではなく、見かけ上の位置が近づくということ。角度で6分まで近づいて見えるというではないか。明るく輝く火星は、満月に近い月に近づいても霞むことなく見えるし、望遠レンズを使って両方を同一画面に写すこともできるだろう。
 ところで、星は地球の自転によって東から西に移動して見える。月も同じように動くが、月は地球の周りを回っているので、この分だけ移動する速さが違う。厳密に言えば、火星も太陽の周りを回っているから、恒星とはわずかに移動する早さが違うのだ。この辺の詳しい話はやめておく。火星と月の間隔が時間とともに変わるということだ。というわけで、一眼レフに350mmの望遠レンズを付け、三脚に固定してわずかな露出で撮影した。時間を置いてもう一回撮影。これをステレオペアに見立ててマウントすると、間隔の変化が視差と同じように働く。月の奥に火星が輝く立体写真が完成した。
 わざわざ立体にしなくてもよいではないか、という声も聞こえてきそうであるが、ちょっとやってみたかったのである。空を見上げたときには月に火星が接近するように見えるが、これは見かけ上のことであって、実は相当な距離があるのだ、という写真にしたかったのだ・・・大きな望遠鏡で撮影した写真でやったら、もっと面白かったかもしれない。

月と火星.jpg 天文台.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年03月19日 10:00

フォーカスの調整再び・後編

 さて、お茶を飲んで気持ちをリラックスしてから調整の作業に入る。まず、遠景の被写体で距離計にずれが出ていないことを確認しておく。これをやっておかないと後で全部の調整がやり直しになる。ここで紹介するのは、前に紹介した遠距離を基準としたものではなく、近距離の被写体でばっちり調整する方法だ。
 テーブルに小型三脚を置いて、カメラを載せる。レンズの絞りを開放にし、シャッターをTにして開ける。ピントグラスを、ガタつかないように輪ゴムを使ってフィルムレールに密着させる。さて、被写体は何にしよう。テレビをつけると、日曜だったのでゴルフトーナメントがやっていた。これにしよう。部屋の照明を落とした状態のテレビ画面はピントグラスでよく見える。また、ゴルフでは画面の隅にスコアが小さな文字で表示されるので、これを使うと正確な確認ができる。
 被写体までの距離は、距離計を使って約4フィート。ピントグラスで像を確認すると3フィート強になっている。一度分解したので、初めからこうなっていたのではない。この状態は、フィルムとレンズの距離を大きくするよう調整する。フィルムレールの調整ネジを右に回す。尻に目印をつけたドライバーで少し回して距離計に合わす、という作業を繰り返す。
 まず右フレームのセンターで合わせ、次に左のセンターで合わせる。もう一度右のセンターを確認する。次は右の上ハジで合わせ、次に左の上。右の下に移って同様に調整する。全部調整したら、ネジが4本なのでどこかレールにガタがあるはず。ガタの位置を確かめたら、1本だけ低くなっているネジをゆっくりと右に回してガタを取る。カメラに耳を当ててレールを触り、慎重にガタを確認する。ここまでやったら、もう一度左右のフレームの各部分でフォーカスが出ているか確認。ネジの回り止めの処置をしておしまい。ちょうどゴルフの番組が終わったところだけど、誰が優勝したのか覚えていない。

鮎の塩焼き.jpg
近距離でもジャスピン(笑)

投稿者 sekiguchi : 2010年03月16日 10:00

フォーカスの調整再び・前編

 久しぶりにリアリストのお話。手持ちのリアリストの中で、特別にシャッターをチューンした1台があるけど、そのときに調整したつもりのフォーカス位置が合っていないことに気がついた。これはもう一度調整しなければならない。
 ところで、リアリストのフィルムレール、つまりフィルムが乗っかって擦動するところは黒い塗装がしてある。前から疑問に思っていたのだけど、寸法精度とか、面の平行度が厳しく要求される部分には塗装はしないものである。近代的なカメラになるとこの部分は精巧な工作機械で切削されていて、金属の素地が出ているのだ。もっとも、リアリストの場合でもごく後期のもの、CUSTOMなどは塗装ではなく切削した金属面になっているものがある。
 せっかくフォーカスの再調整をするなら徹底してやってみることにした。フィルムレールを外し、フィルムとのコンタクト面を水平に研磨するのだ。600番のサンドペーパーから始まって、4000番まで使って仕上げる。平らな面にペーパーを置いて、力が偏らないように磨りあげるのが一番大事なところ。匠の気持ちで仕上げてゆく。削って気がついたのが、オリジナルの塗装の状態のままでも平面性は悪くない。しかし、ここはスペシャルに仕上げよう。
 仕上げたフィルムレールを再び組み入れる。そこにフォーカス確認用のスクリーンをセットする。適当なすりガラスが無かったから、透明なガラスをガラス切りでカットして、この上に乳白色の薄いフィルムを貼り付けた。精度よく調整するには、このフィルムはできるだけ薄いほうがいい。あまり厚いものだとどこにピントがあっているのかわからなくなる。フィルムレールには調整用のネジ穴があり、ガラスはこの穴を避けるように窪ませなくてはいけない。荒い砥石でゴリゴリやって作ったのだけど、ここまでくるのに一苦労。次は精神力の要る調整作業だ。さて、いっぷく一休み。

ピント調整A.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年03月12日 10:00

幸福の木

 何かのお祝いで貰った「幸福の木」という植木が実家にある。30cmぐらいの丸太が植木鉢に立ててあって、その丸太から葉が出ているという、文章にするとなんとも変な姿しか想像できないような代物なんだが。これが、環境が合っていたのかどんどん育っている。植え替えたりしながらもう今では10年以上経つ。茂った葉が天井に届きそうになっている。
 特に花も咲かない、いわゆる観葉植物というヤツだ。成長に勢いがあり、いったいどこまで伸びれば気がすむのだろうと思っていたら、見慣れない芽のようなものが出てきた。その形からもしや花の芽か?と思っていたら大きくなりながら伸びてきた。白いつぼみのような、球状の集合体が枝についている。この球状体がいくつも枝にぶら下がっているのだ。
 これは珍しいコトかと思って調べたら、やっぱり珍しいコトらしい。幸福の木というのは、「ドラセナ」という植物の、いくつかの亜種のうちの一つのようである。花を咲かせるのは珍しく、数年に一度しか咲かないのだそうだ。それに、たいていの家庭は花が咲く前に株ごと枯らしてしまうらしい。そんな珍しいものなら、無事に開花して欲しいものだ。期待して待つ。
 ようやく花が開き始めると、甘い香りが部屋中に広がる。こんな小さな花なのに、これほどまでにと思うほど香りが強い。放射状に並んだ花はマクロステレオに最適の被写体、ということで早速撮影。マウントに仕上げるとなかなか面白い。
 数日の後、花は全て散ってしまい、あの甘い香りも部屋から消えた。花が散ったら株ごと枯れてしまうかと心配したが、相変わらず旺盛に成長している。あれから2回目の開花の兆しはない。たまに写真を見ては懐かしく思うくらい印象的な出来事だったのだが。はて、あの甘い香りはどんな風だったか。時が経つと記憶が薄れる。ステレオマウントに香りも記録できれば面白いだろうに。将来デジタル技術が進歩し、いずれは香りも記録できるようになるだろうか。

幸福の木.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年03月09日 10:00

下北再び

 シモキタと言っても下北沢じゃないよ。本州の最北、下北半島である。最近は大間のマグロ一本釣りでTVに登場したりするが、他にも見所がいろいろある。前に恐山の話を書いたが、その後、寒さが和らいだ季節に再び行く機会があった。その話。
 この半島は本当に不思議な形をしている。マサカリの柄の部分は両側を海に囲まれた南北に伸びる陸地なのだが、たとえば羽田発-千歳行きの飛行機に乗るとこの上空をまっすぐ通り、その地形を観察することができる。東側は太平洋の荒波、西側は湖のように静かな陸奥湾に挟まれている。この海に挟まれた土地には菜の花の耕作面積が日本一の横浜町がある。春先には菜の花がいっせいに花開く。上空から見ると黄色いモザイクが一面に広がって美しい。
 今回は三沢空港からレンタカーを借り、太平洋側の道を北上した。菜の花畑は実に広大で、どこまでも黄色いじゅうたんが広がっている。ステレオ写真というのは、ハイパーステレオにしない限り遠景の立体感は出ないのであるが、こういう手前から奥まで花畑というような状況なら臨場感があるのではないかという気がしていた。スライドに仕上げると広大な風景がビュアーの奥に広がるではないか。さて、モニターでどこまで再現できるか。。。それにしても本当に広い菜の花畑だ。
 黄色一面を堪能し、さらに北上すると、鳴り砂のある海岸があり、さらに北上して最先端まで行くと尻屋崎という岬にたどり着く。ここには天然記念物の寒立馬と呼ばれる野生馬がいる。ずんぐりとした体形がかわいらしい。野生といっても管理された放牧環境にある。岬には灯台があり、海と灯台と馬という不思議なコントラストの風景がここにあるのだ。
 さて、陸奥湾の名物はホタテである。ここのホタテは大きくて味が良い。残念ながらこの時期は旬をやや過ぎていた。代わりに乾物のホタテを味わうと、これが実に旨い。ビュアー片手に土産の乾物ホタテで酒が進んでしまうではないか。

横浜町.jpg

寒立馬.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年03月05日 10:00

測距儀

 リアリストのレンジファインダーはミリタリータイプだと以前に書いたことがある。戦場で砲撃をするには、まず標的までの距離を測る。この距離に弾丸が落ちるように調節して弾丸を発射する。どうやって調節するかというと、弾丸が飛ぶ速度と砲の仰角で調整する。砲によっては射撃のたびに火薬の量を調節し、弾丸が飛ぶ速度を変えられるものもある。
 そんなわけで、戦場では目標物までの距離というのは重要な情報で、レーダとかレーザー光線を使った距離計で計測をする。光学機器としては測距儀があり、現代では射撃には使わず、僚艦との距離を測ることなどに使われる。
 このレンジファインダーの親分みたいな機械、海上自衛隊が行う観艦式で見ることができる。昔、運よく観艦式の予行に参加する艦船に乗船できた。横須賀港を出航し、各方面から来た艦船と相模湾で合流。縦一列になって進んでゆく。このきっちり並んで進むことは高度の操艦技術が必要だという。ここでも測距儀が使われることだろう。
 航空機の観閲、艦艇の観閲、訓練展示と続き、一連の行事を終えるとまた一列になって港に帰る。帰る頃になると、艦内のあちこちを見学させてもらうことができた。ブリッジの近くに周囲が見渡せる見張り台のようなものがあって、ここに測距儀が置いてあった。アイピースを覗き込むとリアリストと同じように上下に分割した像が見える。ダイヤルを回すと像が動く。先を行く艦艇のマストに合わせてみる。ゆっくりと、カメラでフォーカスをあわせるようにダイヤルを回す。
 ちょうどマストの像がきっちりと合った。ダイヤルの数値を見ると1kmほどだったろうか。基線長が長いのでこのぐらいの距離のものでも正確に測定できる。こういうのがあれば距離を測るのに便利だ。でも、なんに使うの??・・・おお、そうだ、ハイパーステレオを撮るときに使ったら相当便利じゃないかな。ね、使えそうですよね、関谷サン。

測距儀.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年03月02日 10:00