STEREO CLUB TOKYO

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みえないもの

 見えないものが、見える。いや、あなたの後ろに御先祖様が立っていらっしゃる、という話じゃない。写真にすると、見えない光を捉えることができるという話。目に見えない赤外線や紫外線も、フィルムは感じることができる。
 いまから30年位前は、天体写真の撮影にはリバーサルフィルムを使うのが当たり前だった。ところが、カラーネガフィルムを使うと星雲がよく写るという記事が天文雑誌に掲載された。サクラカラーのASA400フィルムが最適と紹介されたのだ。実際使ってみるとよく写る。「天体写真にはサクラカラー」という大ブームが起きた。
 ガス星雲は望遠鏡を使っても、目ではほとんど見えない。おもに水素で構成されるガス星雲からは、水素が励起して発光する赤外線に近い光が強く出ている。この波長は目では見えにくい。だが、フィルムはこの光も感じ、サクラカラーはこの波長の感度が他のフィルムより高かったのでよく写ったのだ。
 自分が撮った写真にガス星雲が赤く写ったときは感動した。何もないように見える夜空の一角なのに、写真ではたくさんの小さな星たちと一緒に星雲の姿を捉えることができたのだから。感光材料の工夫で見えない光を捉え、超音波の周波数を下げて聞こえるようにしたり、科学の力は人間の世界観を確実に変えてきたはずである。
 一方で、感じないということも大事。どうも、僕は高音域の音が他人より聞こえやすいらしい。ブラウン管のテレビから高い音が出ているのを、隣の部屋からでも感じる。煩わしいのだが、家族の誰もそんな音は聞こえないという。
 猫は、もっと高い波長も聞き取るという。彼にとって家の中はさぞうるさいことだろう。そんな彼は、僕にはちっとも匂わないマタタビの実に夢中だ。匂いにも人間が感じない、猫にはわかる領域というのがあるのだろうか。ふしぎ。

ヘールボップ彗星.jpg ねこくん.jpg
かのヘールボップ彗星もネガフィルムで撮影しました。&ウチのねこくんたち。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月20日 10:00


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