STEREO CLUB TOKYO

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自作マウントの可能性

 写真のタテ・ヨコ比率というのはどうやって決めたのだろう。35mmフィルムが映画用フィルムの流用であることはよく知られている。映画ではフィルムの両端にあるパーフォレーションを使ってフィルム走行を行うのだが、ここの加工精度はかなり厳しく設定されている。精度が悪いと、映画の画像がタテ・ヨコにブレてしまうからだ。スチル写真用カメラのフィルム送りに、この精度の良いパーフォレーションを使うのはごく自然の流れだったのだろう。
 一般的な35mm版カメラの画面サイズを「ライカ版」と称するのは、8パーフォレーション分のコマ送りで画面を構成したライカに由来すると聞く。僕は常々、これはちょっと横長すぎだと感じている。世の中、高アスペクト比が歓迎されるけど、撮影する側からすれば、アスペクト比が高すぎると画面構成を考えるのに苦労する。
 昔、ニコンは7パーフォレーション送りの独自フォーマットを採用したが、既にライカ版が浸透した世の中では受け入れられなかったと聞く。この画面サイズはヨーロピアンフォーマットのステレオカメラとほぼ同じで、アスペクト比は1:1.33となる。偶然にも、この比率は中版カメラの6×8フォーマットと同じである。
 僕は6×7をよく使っていたことがあるが、これはヨコの長さが中途半端で使いづらい。あまり一般的ではないが、6×8フォーマットの方が構図を作りやすい。そんなわけで、ヨーロピアンフォーマットはとても気に入っている。
 リアリストサイズはほぼ正方形と言いながら、若干縦長。マウントで完全な正方形、21mmスクエアにトリミングしたらスッキリするだろうか。そんなことも、マウントを自作できるので簡単に試すことができる。もちろん、ヨーロピアンも、ライカ版も作ることができる。マウントの自作は、いろいろな可能性を広げてくれるのだ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月28日 10:00

工具の手入

 カメラの修理をする上で、最も重要な工具はドライバーだろう。古いカメラには小さなネジが何本も使われている。これを回すのに、ネジの大きさに合わせてドライバーを選択する。合わないものを使うと、ネジの頭をひどく傷つけたりする。古いカメラをよく見ると、ネジの頭のきれいなものは少なかったりもする。
 ちゃんとした職人なら、ネジの頭を傷つけずに回すことができるが、素人がやるとドライバーがネジから逸れて、ネジの頭のきれいな溝をいびつな形につぶしてしまう。昔のネジの頭はいわゆる“マイナス“の溝がある。
 正式にはこの溝は”すり割り”という。‘50年代のカメラに使われているのは、ほぼ全てこのタイプ。現代ではプラスと呼ばれるものばかり。プラスネジは扱いやすいため、工場がコンベア化されると共に急激に需要が伸び、すり割を駆逐した。だが、すり割りネジは締め付けにトルクを伝えやすく、そういった分野には今でも使われている。
 さて、トルクを伝えやすいすり割りも、ドライバーの使い方が悪いと効果はない。精密ドライバーの尻に付いている回転座。これはドライバーをネジに押し当てても回転させやすくする工夫なのだ。ネジを回すときは、締めるときも緩めるときも、ドライバーを強くネジに押し当てる。ただし先端とすり割がきちんと合致していること。
 ドライバーは使えば磨り減ってくる。定期的に手入をすることが大事。ヤスリや砥石を使い、ドライバーの先端をきれいに整える。ピンセットなどの道具も同じ。かみ合わせに隙間ができないよう、慎重に、丹念に仕上げる。
 整えた形が良いか、ルーペで確認する。さて、自分の思い通りに仕上がっているだろうか。気持ちが落ち着いていないときにやると、それが表れてしまう。ネジを回すということにも、いろいろあるということだ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月21日 10:00

潤滑油の考察

 カメラに限らず、機械には潤滑剤が使われる。つまりは機械油。潤滑剤の役割は、金属などの接触面の間に薄い膜を作ることで抵抗を減らしたり、接触面が高速で摺動することで生じた熱を伝達し、拡散させることである。
 もう一つの目的は、金属表面を油の膜で覆い、空気と遮断し錆を防ぐこと。ただし多すぎる油の塗布はあちこちに回り込んで、本来の目的以外に、機械構造に悪影響を及ぼすこともあるから注意したい。
 一口に油といってもいろいろな種類がある。まず、粘度。さらりとした油もあれば、ねっとりとしたものもある。特に粘度が高いものにグリス。これは油と石鹸を混ぜ合わせたものだ。これにも豊富な種類がある。
 カメラのシャッター機構や時計に使われる油は比較的さらりとしたものが多いが、気をつけなければならないのは低温でも粘度が上がらないこと。油は一般的に温度が下がるほど粘度が上がる。冬場の寒冷地で使うときなど、作動不良につながるからだ。低温でも粘度が上がらないことだけでなく、実用温度の範囲で粘度変化が少ないものが、安定した機械動作に不可欠ということになる。こう考えると、油の選定はとても大事に見えてくる。
 それに、油はそれ自体が酸化して性質を変えるから、精製度合いの低いものを使うのはダメなのだ。 鉱物油、つまりは石油由来の油というのも便利だけど、石油系の油でも精製度合いが低いものは硫黄分が多く、これも長期間の使用には変質の元になる。また、スプレー入りの潤滑油は揮発成分が多く、これも向かない。
 僕は、妻殿がお肌に使っているスクワランオイルをちょっと借りて使っている。深海ザメの肝臓から精製した油。低温でも安定している。とってもいい油なんだけど、とっても高価である。だから、ほんのちょっとだけもらう。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月14日 10:00

軽量化

 ステレオ・リアリストはとても重い。そんな気がしてきた。というのも、最近のカメラはとても軽いのだ。カメラがデジタル化したことで、可動部が少なくなり、部品の剛性がそれほど必要ではなくなってきたのだろうか。今も昔もアルミダイキャストでボディを作っているとしても、今のカメラは構造も部材の厚さも昔と大きく違っているはずだ。
 昔のカメラは剛性を確保しながら小さく、軽くすることに大きな努力が払われてきた。ボディ単体では驚くほど軽量化がされている。ガラスブロックから作られるレンズや、一眼レフのペンタプリズムだけは大幅な軽量化ができないから、システム全体を軽量化するために機械部分の軽量化に大きな努力が注がれてきたわけだ。
 そういう視点でリアリストの約770グラム(*)という数値を見ると重い。大きなレンズが付いているわけではないから軽くできるはずである。ダイキャストで作られている部品も、もっと肉を薄くして軽くできるはずだ。
 リアリストを分解し、強度や機能に問題がない範囲で部品を削ったらどれぐらい軽くできるだろう。もちろん、見た目が悪くならないよう内部に手を加えるのである。ボール盤を使い、貫通しない穴をあけてゆく。ボディの内側、トップカバー、レンズボードの内側など。歯車やアームも穴をあけて軽量化ができるかもしれない。軸はヤスリを使ってくぼみを付け、軽く。二次大戦の零戦開発の時のように、リベットの頭を削って1グラムでも軽くという精神だ。リアリストのネジの頭を削って0.1グラムでも軽くしてみるか。レンガと呼ばれたリアリストを軽くするのだ。
 そんなことを考えながら、この面倒な作業はいつか時間をもてあます時が来たらやってみようかと思っている。軽いリアリスト。果たして、どれほどの存在感があるのか。あるいは、存在感が失われるのか。

(*)世の中の各種資料には重さの値が記されていますが、
改めて実物を計量しました。ただしバラバラの状態で。
ボディ本体 291g
レンズ、ボード 150g
レンズカバー他 31g
トップカバー 78g
フィルムレール 50g
裏蓋 60g
圧板 11g
他部品類 102g
合計 773g
(なんか部品が足らない気がしてきた・・・)

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月07日 10:00