STEREO CLUB TOKYO

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水素増感

 カメラの保管庫で「減圧してはいけない」ということを書いた。これがフィルムになるとまた別の現象が起きるので紹介しよう。写真フィルムを真空下に置いておくと、感度が上昇する。どうやら真空下に放置することで僅かに含まれる水分が放出し、感度上昇に働くらしいのだ。詳しい仕組みは解明されていないとも聞く。
 この現象は天体写真を撮影する時、フィルム感度を上昇させる方法の中で紹介されていた。感度を劇的に上昇させる方法として、更にフィルムを水素ガスに暴露させる方法がある。原理は水素ガスがハロゲン銀に作用し、潜像を作る前の励起状態に活性化させるというもの。この方法はアマチュアを巻き込んで工夫がなされた。
 この手法は主にモノクロフィルムで活用され、超微粒子にも関わらず高感度が得られるということで脚光を浴びた手法なのだ。暗黒の宇宙空間に仄かに輝くガス星雲を捉える、伝家の宝刀だった。
 僕も昔、フィルムを真空に引く装置を自作したりもしたが、今ではそんな人も少ないだろう。今僕がこの方法が活用できるのではないか、と企んでいるのが、ローライスライドダイレクト(RSD)の感度上昇作戦である。
 通常の現像処理でモノクロポジが得られるRSDは魅力的なフィルムである。既にRSDは入手しているのだが、テクニカルデータが乏しい。かなり感度が低く、普通のフィルムとは撮影の勝手が全く異なる。
 感度が低くて使いづらいならば、水素増感をして使いやすい領域まで引き上げたらどうか。もちろん、フィルムの特性もあるから失敗に終わるかも知れない。こんなことを考えながら、めんどくせえ手法の考案を面白がっているのだ。こんな化学実験みたいなこと、フィルムならではの遊びである。そう、フィルムは遊びが満載である。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年04月25日 10:00

増えたね・増えるね

 いったい今まで、何組のステレオスライドを作ってきたのだろう。そう思って、棚にしまってあるスライドを収納している小箱の数を数えてみる。ざっと数えて200箱。小箱一箱には40枚が入るようにしてあるから、全部で8千枚になる。棚に収めていないものもあるからこれ以上ある、ということがわかった。フィルムで約280本分。
 なんとまあ、よくもこれだけ撮ったものだ。でも、約10年で、ということだから年に28本、毎月2本程度のフィルムを使ってきたということだから、そんなに驚く数字でもないか。ほかの人なら、もっと撮っているかも。
 これだけあると観賞するのも面倒になりがちだ。分類をちゃんとしておくのが大事になる。箱に貼ったラベルで中に何が入っているのかわかるようにしておかないと。それなのに僕は、1/3程度、ラベル貼りをサボっている。そろそろまずいかな~と焦っている。どこかでちゃんとしておかないと、いつ撮ったかさえ忘れてしまう。
 もしも、デジタル化されたビューマスターみたいなものが登場したら、このたくさんのスライドから画像データを取り込んで楽しんでみたい。覗きながら、ボタン一つで画面が変る、そんなビューマスター・デジタルが早く登場しないかな、と待ちわびている。通勤電車に乗りながら、ステレオ写真を鑑賞する。そんな日が早く来ないか。
 そろそろデジタルにしなさいよ、と言われそうである。もうステレオ・デジタルカメラが登場したよ、と。わかってはいるが・・・僕ままだSLに乗っていて、早く新しい電車に乗り換えなさいよと言われているようなものである。
 僕は今のところ、通勤電車のように下車する目的地があるわけじゃない。まだまだSLでいい。ゆっくりと、これからもスライドを増やしてゆく。デジタルに乗り換えたら、管理できなくなるほど写真が増えてしまいそうだしね。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年04月18日 10:00 | コメント (2)

COMBI-METER

 目測での距離あわせが嫌いな僕は、ベルプラスカに距離計が付いていないことが不満だった。それでも、数少ないヨーロピアンフォーマットのステレオカメラだ。リアリストの次に手に入れた。また、初めてebayで買ったカメラでもある。因みに、安く買えたのはいいがファインダーが曇っていて、分解掃除も苦労してやった。
 ファインダーがきれいになると、いい写真が撮れるような気がしてくる。だけど、目測でフォーカスを合わすところでブレーキがかかる。勘に頼らなければならない部分が、機械としての不完全さを感じてしまうのだ。
 そんなわけで、距離計を探しに中古カメラ店巡りをした。僕が見つけたのはドイツ製のコンビメーターと表記されたもの。レンジファインダーの隣に、もう一つ大きな覗き窓がある。覗いても真っ暗で何も見えない。レンジファインダーの距離ダイヤルのほかに、上面にもう一つダイヤルがある。ダイヤルを回しても何かが変る様でもない。
 不思議そうにしていると、お店の人が教えてくれた。これは光学式の露出計です、と。大きな覗き窓は、ちょっと離れて見ると中に数字が見える。3から7までの数字があって、数字が小さいほど暗く見える。見えた数字を上面のダイヤルにセットすると、シャッターと絞りの組み合わせがわかるというもの。こんなものがあるのか、と驚いた。
 人間の目は優れた順応能力があるので、明るいところでも暗いところでも目の感度が調節されて、ちょうど良い明るさに感じるようになっている。だから、ダイヤルには晴天の屋外、曇天の屋外、部屋の中というイラストがあって、目の順応を考慮したものになっているのだ。これはいい。シャッター速度も国際系列になっているし、便利かも。そう思ったが、やっぱり精度に問題がある。それでもいいじゃないか。ベルプラスカといつも一緒にしている。


投稿者 J_Sekiguchi : 2013年04月11日 10:00 | コメント (2)

ステレオアダプター

 今はもうブランド名だけになったペンタックスが、旭光学工業だった頃。この会社は面白いものを作っていた。レンズの先端に取り付けて、90°横を撮影するアダプターがあった。中にミラーが仕込んであって、横の窓から撮影するというもの。カメラの正面にはダミーのレンズを取り付けてある。スパイ撮影アダプターなんて呼ぶ人もいた。どこかの国のB級映画で、スパイに使わせているシーンもあったように思う。
 今なら発売することも、それを使うことも怪しいシロモノ。まあ、普通に考えて常用する場面なんてないんじゃないかと思う。同じようにミラーで構成されたオモシロ製品にステレオアダプターがある。
 僕がリアリストを手にする前、このステレオアダプターを購入した。ミラーだけの光学系だから安価だったと記憶している。専用のスライドビュアーも発売されていたが、ネガで撮ってプリントし、裸眼立体視すればいいと考えていたからビュアーは買わなかった。ちょうど裸眼立体視が流行っていた頃だから、これでイイと思ったのだ。
 初めの頃は立体に見えることに喜んでいたのだが。裸眼立体視のできない人は全くの無反応。それに、画面を左右に分割し、分割位置に黒い帯ができる関係で縦長の画面にならざるを得ない。レンズの絞りもF8前後にしなければならないとか制約が多く、使いづらいものだった。そんなわけで、あまり使わないまま現在に至る。
 最近になって工夫次第でオモシロイ使い方ができるんじゃないか、なんて考えている。当時のスライドビュアーを探してくるもよし、デジタルカメラに取り付けるのもよし。ポジフィルムで鑑賞するのが一番良いのはわかっているが、プリント&トリミングを活用して楽しむのもいいかもしれないと思い始めている。さて、どうするか。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年04月04日 10:00