STEREO CLUB TOKYO

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撃鉄を起こせ!シャッターチャージ

 今のカメラはボタンを押せばシャッターが切れるし、フィルムも勝手に巻き上げる。巻き上げるフィルムさえいらないものだってある。ところがリアリストはシャッターチャージも撮影者がやらなければならない。フィルムを巻いているうちにチャージするセルフコッキングではないのだ。デジカメがレーザー銃ならリアリストはリボルバーの拳銃だ。重いレバーをガチャリとやる。さあ、撮るぞという気になる。さすがに連写は厳しいけど、メカとしての信頼性はセルフコッキングにしないことで高く保たれている。
 巻き上げとシャッターチャージを同時にやろうとすると、どうしても機械が複雑になるから故障が起きやすい。リアリストはメカの信頼性を高めるためにセルフコッキングにしなかったのか?いや、メカを単純にすると当然コストダウンにもつながるから、価格設定のためかもしれない。実際のところ、リアリストを分解すると部品点数が少なく、非常にシンプルな構造をしている。ただし、安易にコストダウンを狙っていたとは考えにくく、部品の一つ一つはとても丁寧に作られている。ちょっと専門的に言えば直接材料費は下げずに部品品質を確保し、組立工数(労務費)が増えないような設計工夫をして工期短縮とコストダウンを実現し、同時に品質確保のしやすさにより歩留りを上げる。つまり製造業の基本、QCD(クオリティ・コスト・デリバリ)のバランスがうまくつり合うように考えられていたんじゃないか、と思う節がある。
 きっといろいろな経営努力があったんじゃないかと勝手に推測しているが、セルフコッキングの排除は結果として壊れにくいカメラになったわけだ。生産数の多さもあれど、50年以上経った今でも手に入れやすいことにつながっていることは間違いない。
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投稿者 sekiguchi : 2004年10月23日 01:44


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