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ILEX PARAGON ANASTIGMAT 35mmF3.5

 ILEX社は大判用レンズの供給でも知られる。このレンズはトリプレットで、レンズを3枚しか使っていない。しかし、条件を限定すれば3枚のレンズでも十分に各収差を改善できるのだ。光学設計の世界では教科書的なレンズ構成である。ANASTIGMATとは「収差がない」という意味だ。現代のレンズは何枚ものレンズを組み合わせているが、これは3枚しか使っていないからカラーコントラストが非常に高い。画質は硬調に仕上がる。外観ではコーティングが深いブルーで、レンズ枠にはギザギザがある。
 初期のモデルだから普通に見るリアリストとは違いも多い。絞りリングには正面から見てDavid White社の社名がありそうなものだが、何もない。裏蓋をあけてダイキャストボディに彫られた社名を確認しなければ、どこのカメラかわからない。よく見ればカメラ内部のパーツや仕上げ方も少しずつ違っている。初期モデルなので二重露出防止機構・解除機構は付けられていない。
 僕の持っている機体は製造番号がかなり初めの方なのだが、なんと左右のレンズの焦点距離が違う。だからビュアーで見ると像の大きさが合わず、きちんと立体に見えないのだ。困ったものである。実はILEXに関しては前に書いた「絞り指標・三つ星の謎」の推測が当てはまらない。絞り表示は左右のレンズの両方にあるのに、左には指標だけがないのだ。指標がないから左レンズでは絞り設定ができない(!)。左右のレンズ枠の部品が違うということは、レンズ組立の時から左用・右用が決まっていたのではないか?
 おそらく、レンズペアの組合せに手間がかかりすぎるので途中でやり方を変えたのだろう。生産初期の黎明を感じさせる一台である

Ilex.jpg Ilex_2.jpg

投稿者 sekiguchi : 2004年11月21日 03:33


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コメント

私のところのIlex Paragonは左側のレンズにも指標がついてるので、どちらのレンズでも絞りの設定ができます。
ちなみにシリアル・ナンバーは、Ilexとしては後期型と思われるA8621です。
細々したところが結構、違うんですね。

投稿者 yuda : 2004年11月21日 09:48

ということは、かなり初期の段階で工程を変えたコトがうかがえますね。全てのILEXが僕の機体のような状態ではないと思いますが、入手される方は一応ご注意下さい。
 さて、補足ですが、レンズの曲率のバラツキや枠部品寸法のバラツキで、どうしても完成レンズの焦点距離は一定の幅を持って生産されます。これは現代でも同じコトで、工業製品の宿命みたいなものです。一眼レフの交換レンズなどでは、スペーサーで調整してフランジバックに合わせる工程がありますが、ステレオカメラではこれができない。立体視に影響するバラツキはかなりシビアなものだと予想します。だから加工精度を上げて対処するより、バラツキの中からチョイスした方がコスト・生産性の両方から見て有利だ、という結論に至るのはごく自然であると思います。

投稿者 sekiguchi [TypeKey Profile Page] : 2004年11月22日 15:06

幸い私のIlex Paragonは、立体視が困難なほどの画角のズレはありません。
一眼レフ・ツイン・リグで使っている標準ズームレンズの画角が、無視できないほどズレていることに、つい最近気づきました。あまり使ってなかったとはいっても、半年以上、使ってたんですけどね。メーカーに出して、調整をお願いしています。

投稿者 yuda [TypeKey Profile Page] : 2004年11月22日 21:08