STEREO CLUB TOKYO

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1041/DAVID WHITE ANASTIGMAT 35mmF3.5

 このレンズもILEXと同じ3枚玉トリプレットである。社名を冠した「ANASTIGMAT」とは「収差がない」という意味で、この時代のレンズ名によく見られる。リアリストのこのレンズも、クラシックレンズとは思えない鋭い描写をする。古いレンズだからといってボンヤリ写るようことはない。この時代、すでに写真レンズの基本性能は確立されていたのだ。レンズ構成が単純だから非常にコントラストが高く、描写はかなり硬い印象を受ける。
 欠点としては、トリプレットレンズのボケは画面中央を中心とした同心円状に変形する傾向をもつ。パンフォーカスで撮ることを推奨されるステレオ写真だが、絞りを開けてボケの効果を作画表現に使うとこの現象が目立つことがある。この他、トリプレットは設計上開放F値をあまり明るくできないとか、画角を広くできないという制限がある。画角の点でいえば、このレンズのイメージサークルはリアリスト版の画面のギリギリしかカバーしない。マウント前のポジをよく見ると、画面の四隅が暗くなっているのはこの理由だ。この部分はマウントする時に隠れる程度なので、実用上は問題ないだろう。
 リアリストに限らず、ステレオカメラはこのトリプレットを使っているモデルが実に多い。ステレオカメラの使われ方を前提にチョイスすると、当時としては最もコストパフォーマンスに優れたレンズ構成だったのだろう。1041モデルはおよそ13万台と、膨大な数が生産された。そのため、数あるステレオカメラの中でも最も入手しやすい機種である。米国の中古マーケットでは、$100あれば手に入れることができる。コストパフォーマンスの高さは現在も変らない。

DW.jpg

このレンズには”GERMANY”の刻印がない。刻印のあるものは、文字の上下がこれとは逆になっている。

投稿者 sekiguchi : 2004年11月28日 17:01


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