STEREO CLUB TOKYO

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巻上げ制御不良の事例

 コマの重なりは、正常な状態でも僅かに生じるが、大きなコマの重なり、不自然な未撮影部分の発生がある場合、フィルム送りに故障が生じている可能性がある。ただ、巻き上げを中途半端にした状態でもシャッターを切ることはできるから、人為的なミスの場合もある。しかしこれ以外の場合、かなり重大な故障の場合があるのだ。コマに異状が生じた場合、フィルムのパーフォレーション部をよく観察してほしい。パーフォレーションに傷がある、欠けているなどの異状が発見されたら一大事である。これは、スプロケットギアが固定された状態で巻き上げノブが進んでしまったことを意味する。このコラムで紹介したように、巻き上げノブはスプロケットギアでストップ制御をしているが、この制御が利かなくなっている。原因は巻き上げ軸を分解した時に見られたラチェット機構にある。
 トップカバーを開けると、スプロケットギアの軸から伸び、ラチェット機構につながるアーム①が、スプロケットの回転によって動く様子を観察できる。このアームの先端が鉤状になっており、ラチェット爪②を引いたり、開放したりする。アームが爪を開放すると、爪はスプリングの力でラチェットギアに押し付けられる。スプリング③が弱くなっているとロックがきかない。この他にロックがきかない原因はラチェットの損傷が考えられる。
 過去に巻き上げの操作で無理な力が掛かっていると、ごく僅かでもギアの損傷が生じ、これが動作に影響している場合がある。巻き上げ部のオーバーホールで紹介したレアケースがこれだ。実際の事例がCUSTOMで生じていた。後期モデルは、巻き上げノブを大きくして操作性を改善している。しかし、これがラチェット部に過大なトルクをかける原因になった。後から設計変更する場合は、当初の設計計算をよく吟味しなければならないという事例である。修理には、別の機体からギアを取り出して交換せねばならなかった。
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投稿者 sekiguchi : 2006年06月17日 02:16


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