STEREO CLUB TOKYO

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遮光対策

 モルトプレーンは黒いスポンジ状の素材で、弾力があり、裏蓋との接合部分や隙間を埋めるために多用された、優れた遮光材である。少し前のカメラには必ずといってよいほど使われているが、モルトプレーンは樹脂製で、経年変化により劣化し、たいていの場合はペースト状に変質してしまう。最近のクラカメブームでもこのモルトプレーンの交換方法がよく話題になるのはこのためである。しかし、リアリストは遮光にモルトプレーンを一切使っていない。使っていないというよりは、このような樹脂材料が工業ベースで使われるには時代が早かったと見るべきだろう。リアリストの遮光は、勘合部の構造で対処しているのである。遮光材に限らず、生産された時代の背景から、劣化する素材を使用していなかった。それ故、今でも実用機として使用できるのだ。果たしてあと半世紀後、現代のカメラは実用に耐えるだろうか。
 リアリストは、製造当時のフィルムが低感度だったために顕在化しなかった現象が現れる。光線引きである。暗箱であるはずの筐体に外部からの迷光が入り、フィルムを感光させてしまう。これはなんとしても対処せねばならない。リアリストの光漏れ発見方法については他でも紹介されているので詳細は紹介しないが、初めて入手した機体や、光線引きを生じた機体には次の処方が有効である。簡単な方法なので是非トライしてほしい。
 光線漏れの場所はたいていの場合、①で示す裏蓋の接合部だ。蓋が変形して生じているのではない限りこの部分に遮光材を置く事で解決する。遮光材は先に紹介したモルトプレーン②が有効だ。修理パーツとして市販されている。厚さはあまり厚くないほうが良い。厚いものや、他の弾力に乏しい素材だと蓋のロックが極端に重くなる。接合部をカバーするように両面テープで貼り付ければ完全に遮光される。
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投稿者 sekiguchi : 2006年05月28日 14:47

ビューファインダーの修理

 ビューファインダーの汚れなどのため、ファインダーが見づらくなっているケースは多い。対物レンズの汚れは特に目立つものとなって現れる。対物レンズの前面を清掃するだけで解決する場合もあるが、内面が汚れている場合は分解清掃が必要だ。
 対物レンズを外すには、レンズカバーのベークライト台座をまず外し、レンズを押さえているリング①をカニ目レンチで外す。つかみしろが小さいので、レンチのズレによってリングやレンズに傷をつけないよう慎重に作業をすること。リングを外すと、視野枠のマスクと②、対物レンズ③を取り外すことができる。レンズクリーニングのみで驚くほど改善する場合も多い。取り付け時には、視野枠マスクがずれないよう微調整が必要だ。
 さて、ここまでは簡単なケースだが、その奥にあるミラー④が劣化してコントラストが低下している場合も多い。また、CUSTOMのようにごく後期型になるとミラー材質が変更になっており、黄色く変色している場合もある。修理にはミラーの交換が必要だ。ミラーはガラスにアルミ蒸着した表面鏡が必要だが、万華鏡専門店などで素材として入手することが可能だ。これをガラス切りで切り出し、交換すればよい。と、言うのは簡単だがこれが結構大変な作業になる。自信のない人は手を出さず、ミラーもブロワ-で吹くぐらいに留めた方が良い。ミラーをペーパーで拭いたりするとかえって傷がつくことがある。
 ミラーを交換する場合、オリジナルのミラーは接着されており、破砕して丹念に清掃するしか方法はない。交換用ミラーは接着剤等で貼り付けることになるが、切り出したミラーの寸法が悪いとうまくセットできない。また、表面鏡は傷がつきやすいので作業は慎重を要する。ミラーは接眼レンズ側にもう一枚⑤あるので、これは底蓋を開けて交換する。難しい作業だが、これでビューファインダーは見違えるほど見やすくなる。
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投稿者 sekiguchi : 2006年05月27日 08:23

シンクロ調整

 リアリストは外部補助光源として閃光電球を使用することを前提に作られているから、ホットシューの接点はシャッターが全開する数ミリセカンド前に接触するように調整されている。それは、閃光電球は電流が流れてフィラメントが燃焼しはじめ、最大光量に達するまでに数ミリセカンドのタイムラグがあるからである。低速シャッターで全開している時間が比較的長い場合はこのような遅れ調整がなくても良い。しかし最高速でもシンクロするためには、シャッターが全開する僅か前に閃光電球のトリガーをする必要がある。
 一方、ストロボはトリガーの瞬間に発光し、閃光電球に比べればタイムラグはほとんど無いといってよい。だから、ストロボを使うとシャッターが全開する前に発光してしまう。実はこのタイミングは、シャッターが8~9割開いた時点であるし、シャッターの機構を考慮すると実用上は影響を無視しても良い。しかし、絞り開放で高速側シャッターを使い、かつストロボの光量をフルに使いたいなどの特別な場合はこの調整が有効になる。
 調整方法は至って簡単。レンズボードのネジ4本を外し、これを開けるとシャッター機構が丸見えになる。左右のシャッター羽は連結棒①でつながれている。これを向かって右方向にスライドさせると、左右のシャッターが同時に開くのがわかる。連結棒の右端にシンクロ接点があり、コードでつながれた銅合金の電気接点②と接触するしくみになっている。オリジナルの状態だと、シャッターが全開する前に接触する。調整は②の合金板に力を加えて曲がりの状態を変える。合金板を取り外す必要はない。連結棒をスライドさせながらシャッターの開き具合と見比べ、接触位置の調整をする。
 ちなみに、シンクロしないなどの不良の場合はコードの断線、合金板とボディとの絶縁不良、ホットシュー部分とストロボ側接点の接続不良が考えられる。

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投稿者 sekiguchi : 2006年05月14日 11:29

巻き上げ部のオーバーホール

 機体によっては巻上げが極端に重い場合がある。原因は二つ考えられ、その一つはフィルム圧板がフィルムレールに過度の力を加えている場合だ。フィルムレールがトンネル式ではないため、圧板の力がダイレクトにフィルムにかかってしまう。しかし、このケースでは巻き上げ操作が深刻な状況になることはない。フィルムを装てんしない状態で巻き上げノブが重い場合が今回のメンテナンスケースである。
 原因は巻き上げ軸系のグリスが固着していることにある。ノブを止めるネジ①を外し、ギアの清掃とグリスアップ、軸部への潤滑油給油で回復する場合もあるが、分解することにより完全なメンテナンスができる。ただし、ここで紹介するのは後期型の巻き上げ機構に限っているので注意いただきたい。
 軸部の分解は巻き上げスプール②にあるイモネジ③を外す。ネジの頭は四角になっているので、専用のレンチがない場合はドライバーを自前で削った特製の工具を用意する。このイモネジを外すとギア付きの軸④が上部に抜ける。スプールとラチェットギア⑤も外れる。ギアの組立は多少のコツがいる。組立に自信のない人は分解を諦めたまえ。
 さて、軸を外したら清掃し、傷や錆浮きがあれば研磨をする。ボディ側の軸受部の清掃も同様。スプール軸内部にはフィルム端保持用の銅板が入っている。これが変形していると軸とスプールの平行が悪くなるので矯正しておく。組立時に軸受部にグリスアップし、丁寧に組上げれば驚くほどスムーズに回転し、巻き上げは格段に軽くなる。
 分解のついでにラチェットギアとラチェット爪⑥の点検もしておこう。ギアの欠け、磨耗、ラチェット爪の磨耗は巻上げ不良の原因になる。残念ながら部品交換なしで回復はできないが、ギアは工具鋼で作られているので磨耗が生じるのはレアケースである。

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 後期型は紹介したようにラチェットギアで巻き上げ軸のロックをしているが、前期型はスプリング締め付けでロックするユニークな機構になっている。前期型、後期型の見分け方は、スプールの上をよく見ればギアかスプリングが観察できるのでこれで判別する。前期型も同様の手順で分解はできるが、組立は数段難しい。

投稿者 sekiguchi : 2006年05月13日 15:10 | コメント (2)