STEREO CLUB TOKYO

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水準器

 ステレオ撮影をするときは水平にすること。と、よく言われる。立体視するには水平にすることが大事なんです。と説明されることもある。コダックステレオとか、ステレオVivid、ビューマスターパーソナルなんかにはビューファインダーで確認できる水準器を内蔵しているものもある。でも、本当に水平にして撮らなきゃいけないんだろうか?
 水準器を内蔵しているそのほかのカメラといえば、レンズがスイングするパノラマカメラがある。これは、左右を水平にするだけではなく、俯仰角の水平も確認できる水準器が付いている。なぜかといえば、この方式のカメラは画面が大きく歪むので、水平から外れると写真の雰囲気がまったく変わってしまう。たとえば、カメラを水平にして風景を撮ると、地平線が直線に記録されるので違和感が無い。しかし、カメラを上に向けると地平線が凸形に変形するし、下を向けると逆にへこむ。作画を意識して歪ませるものオモシロイが、そうでないならば厳密に水平にせねばならぬ。ビューファインダーだけではこの「厳密に」というところが難しいので水準器が内蔵されている、というわけだ。
 ステレオでは、わざわざカメラを傾けて撮ることは少ないだろう。画面が傾いても画面が歪むわけではないし、少しぐらい水平じゃなくても不自然に見えるわけではない。そんなわけで、僕は水準器が付いていようといまいと完全に無視して使っている。でも、初めのころは水平にして撮らなければイケナイんじゃないかと思い、リアリスト用に売られていた後付の水準器をebayで購入したことがある。純正のものではなく、後発のアイデア商品だ。取り付けてみると、ビューファインダーの画面が大きく狭まって見えづらいことこの上ない。こんなものイラナイ。もっといいものができるはず、とバラバラにしてみたが、水準器の必要がないことがわかったので今もバラバラのままだ。

竹林.jpg
△撮影したときと同じに、見上げる姿勢でビュアーを覗くと臨場感が出る。

投稿者 sekiguchi : 2010年06月29日 10:00

おまつり

 僕はお祭りが大好きだ。神輿を担ぐのが好きとかいう分野じゃなくて、夜店を見て歩くのが好きなのだ。白熱電球で照らされた駄菓子やおもちゃが、いつもとは違ってキラキラと光っている。今ではずいぶんと減ってしまった駄菓子屋も同じように好きなんだが、楽しみの傾向としては同じなのかもしれない。
 ただ、僕が子供の頃に比べると夜店のスタイルもずいぶんと変わってしまった。最近の夜店は食べ物を扱う店が圧倒的に多い。金魚すくいは定番として生き残っているものの、射的や輪投げなんていうのもあまり見かけなくなった。夏祭りなら鈴虫や蛍を売る店、吊り忍と風鈴なんていうのがあったのに今では見ない。七味唐辛子の口上売りというのもない。子供の頃は唐辛子なんて無縁だったが、大人になったら好きな風味にブレンドしてもらおうという夢も遠いものになった。
 それでも夜店を見て歩くのは楽しい。夜店の定番、綿菓子屋やお面屋も健在だ。大人になってビールを片手に散策するというのもいものだ。浴衣に下駄履きでリアリストを首から下げる。一眼レフじゃなくてレンジファインダーというところがポイント。クラシックであるというところもポイント。このときだけは撮影はおまけ。気が向いたときだけ、ちょっとだけ撮る。ビールを右手、イカ焼きを左手に持っていたのではカメラの操作もうまく出来るわけがない、というわけだ。
 さて、子供と一緒に祭りに出かけるようになって気がついた。そうか、昔の夜店は子供達の視点で楽しめるようになっていたのだ。子供達が欲しがるようなものがこれでもかというぐらいに並べてあった。こづかいを握りしめながら次は何を買おうかと迷ったものだ。夜店のスタイルが変わってしまったのは、子供たちの興味の対象が大きく変わってしまったことも理由にあるのだろう。ゲームばっかりやっていないで、こういう楽しみもあるよ。おじさんになった僕は、今そう思う。

お面やサン.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月25日 10:00

目の錯覚

 リアリスト・レッドボタンビュアーを使って、池に浮かぶ睡蓮の花のスライドを見ていて気がついた。平面のはずの池の水面が湾曲している。言葉で表現するのが難しいんだけど、画面の真ん中が膨らんで見える。ちょうど、大きなボールの表面のように池が湾曲して見える。睡蓮の花はしっかり立体で見えている。マウントの仕方が悪かったのだろうか。
 こんな現象は聞いたことがないのであわてた。自分の視力もとうとう限界に来たかと落胆もした。でも待てよ、とビュアーの目幅調整をしてみる。フォーカスがずれるので合わせ直すと、立体感はそのままで今度は池がへこんで見えるではないか。ということは、ちょうど良い目幅ポイントがあるはずだ。というわけで目幅を合わせると自然な池の水面が現れた。
 今まで、ビュアーの目幅調整なんておまけ程度と考えていた。実際、目幅の調整をしたところで立体感に差はない。これは、画面の湾曲を調整するために必要なものだったのだ。こんな現象が起きる理由についてはわからないが、たぶん左右の画面の中心とレンズの光軸、目の角度のズレによって錯覚が起きるのだろう。この現象について気がついている人は少ない。ステレオで撮影したスライドをただ鑑賞しても、被写体によっては感じにくいからだろう。
 試しに、いくつかのスライドを用意して画面の湾曲を意識して鑑賞すると、画面の湾曲が気になってくる。目幅を調整して鑑賞しないと気分がしっくりこない。意識しているか否かで感じる似たような現象に「ステレオは書き割りのように見える」というのがある。僕もステレオを始めたころは被写体によってカキワリのように見えることがあった。でも、慣れてくるとカキワリに見えなくなってしまった。頭脳というのはマコトに不思議なもので、順応というすばらしいものを持っている。このために気がつかないでいることがあったり、錯覚を起こしていることもある。という話。

睡蓮.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月22日 10:00

トマソン物件

 昔、TVのタモリ倶楽部でやっていた「東京トワイライトゾーン」のコーナーが好きだった。なんでこんなものが存在するのだ?という、街中にある奇妙な物件を紹介するというもの。一つの通りの中にマンホールが異常に多く存在する「マンホール銀座」とか、住宅の2階の壁面に唐突に設けられた蛇口とか、記憶に深く突き刺さっているものが多い。毎回楽しみにしていたのだが、終了してからだいぶ経つ。500円札を知らない世代には、何のことだかわからないだろう。
 録画したものなどないので確かめようがないが、あのコーナーを担当されていた久住さんか滝本さんが首からぶら下げていた奇妙なカメラ、あれはスレテオカメラではなかったか?久住さんが赤瀬川さんの本に登場しているのを発見し、このコーナーがトマソン、路上観察に深く関係している、と気がついたのはコーナーが終了してだいぶ後になった頃だった。
 そんなわけで、僕もトマソンというかトワイライトゾーン的な物件を観察するのは好きである。ステレオカメラをぶら下げて散策しているときも、トマソン物件がないかとつい探してしまう。でも、自分でそういう物件を探し出すというのはあまり得意ではない。見つけようと思う時に限って見つからない。ぼんやり歩いているときの方が遭遇しやすいが、これは!?と思うものがあってもなか記録に残せない。いざとなると、こんなもの本当に面白いかなぁ、と考え始めてしまうのだ。
 そんなぼんやりとしていたある日。とある海岸の駐車場である。海水浴のシーズンも終わるという頃。駐車している車が少ないナーと思ったら、不審車が一台。だが、これを一台と呼ぶべきかどうか。ハッチバックの後の扉だけなんである。扉だけ置いてあるなら不法廃棄の自動車と同じであるが、これにはちゃんとナンバーが付いている。邪魔だからと、勝手にどかしたりしてはいけない。どうしてもどかしたいなら、警察に電話してレッカー車を呼ばなければならない。

トマソン物件.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月18日 10:00

水滴

 梅雨の季節がやってきた。どこへ行くにも足元が濡れるし、気温が下がる日もある。体調を崩しやすく憂鬱な気分になる。カメラを持って出かけるといっても、お天気が悪いのではいい被写体にも出会えない。余計に憂鬱な気分になる。
 マクロカメラなら何か面白いものが撮れるかもしれないと思い、傘をさして外に出た。雨の中でもよく観察すると面白いものがありそうだ。あちこち見て回ると、たくさんの蕾をつけたナンテンの木が、水滴をたくさん含んでいる。慶事で出される赤飯に添えられる小さな枝葉、これがナンテンだ。難を転ずるという意味から来ている名前らしい。
 この日は細かい雨がずっと朝から降っている状態で、そのためか水滴がナンテンの蕾とか枝葉にたくさんぶら下がっている。これをマクロで撮り、マウントしてみた。マウント前はなんだかごちゃごちゃした構図に見えるが、立体視してみると結構面白い。水滴の粒に周囲の景色が小さく写りこんでいて、これが同じようにたくさん並んでいるのだ。よく見ると、空中に球状のものが浮かんでいる。はじめはゴミだろうと思ったのだが、左右の画面に同じように写っている。
 これはナンテンにぶら下がっていた水滴が落下したものだった。落ちてゆく水玉を偶然捕らえたというわけだ。小さいのでフィルムをスキャンした画像では存在自体がわかりにくいが、完全な球の形をした水玉だ。
 僕たちはイメージで、落下中の水玉は頭がとんがったいわゆる「水滴型」だと思い込んでいるが、自由落下中の水滴自身は無重力状態にあるから完全な球になる。はじめにゴミだと思ったのも、こんな思い込みからきている。
 空から落ちてくる雨粒はどんな形をしているか。こんな疑問が話題になったりする。空気抵抗のために底が平らになった形じゃないか、とかいろいろ推測されたり、理科実験のネタになったりする。雨粒をステレオ視できたら面白いだろうに。

雨の中のマクロ.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月15日 10:00

レンズカバーの修復

 リアリストのレンズカバーは以前に紹介したことがある。ベークライトでできているので、これが割れるとなんとも情けない格好になってしまうのだ。だが、スペアを手に入れることができる。ebayにも数多くのステレオアイテムを出品しているDr.T氏がいくつかの在庫を持っているようだ。彼が時折出品するので、スペアのカバーを購入しておくとよい。
 僕も彼からスペアを購入したことがあるが、これは後期モデルのCUSTOMに使われていたものと同じだ。丸いでっぱりが無く、「Realist」のロゴも入っていない。CUSTOMにはロゴ入りのアルミプレートが取り付けられるが、プレート無しでもそれなりにカッコいい。僕が特別にチューンした一台は、このロゴ無しのレンズカバーを使っていた。
 ある日、バッグに入れた状態で無理な力をかけてしまい、レンズカバーを壊してしまった。落としたのではないから粉々になるのは免れたが、きれいに二つに割れてしまった。スペアを持っていたのでこれに付け替えようと思ったが、壊れたからといって捨ててしまうのはもったいない。うまくつなげば直るはずだ。というわけで、シアノアクリレート系の接着剤、平たく言えば瞬間接着剤でくっつけた。瞬間接着剤は便利だが、一般的には万能ではない。だが、ベークライトに対しては完璧な接着を発揮するのだ。隙間が無いように張り合わせると、完全に一体化する。少し磨けば、接合の跡も目立たない。
 せっかくチューンした機体に取り付けたのだから、オリジナルのプレートを取り付けてみようと思った。金属で作るのは大変だから、紙と粘着シートで作ってみた。銀色で梨地の紙があったので、これを長方形に切り取り「Realist」のロゴをスタンプした。この上から透明な粘着シートを貼り、耐久性に問題が無いようにした。レンズカバーには両面テープで貼り付け。カメラ本体の銀梨地とマッチしている。いいかんじでしょう。

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投稿者 sekiguchi : 2010年06月11日 10:00

地下鉄

都市の地下深くに張り巡らされた迷路。どこまでも続く迷路。
暗く、曲がりくねった道が縦横に走る。地上の明かりは届くすべもない。
壁からは地下水が少しずつ染み出ている。暗く、暗く、湿った臭い。
ここには昼も夜もない。夏も冬もない。闇があるだけ。
もしかしたら。
闇の中に誰か隠れていませんか。
世の中が嫌になってこんなところに隠れていませんか。
おーい。出ておいで。
僕は地下鉄に乗って窓の外を覗き込む。そこには暗い闇しか見えない。
もしかしたら。
おーい。出ておいで。
心の中で声をかけてみる。
だけど、窓には自分の姿が映って見えるだけだった。
君も地下鉄に乗ってみませんか。
彼を探してみませんか。

地下鉄.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月08日 10:00

続・湿原の植物

 マクロステレオカメラを作ってから、草花の写真を多く撮るようになった。花壇に咲く花を撮ることもあれば、野原に行って撮ることもある。そうした中で気付くのが、園芸種と呼ばれる人の手によって品種改良された花と、自然のままに咲く花とはだいぶ趣が異なるということ。往々にして品種改良されたものはより花をきれいに、大きく咲かせるように選択と交配が重ねられたものだから、見ごたえはあるが素朴さというものは失われている。
 どちらがいいとも言えないのだが、自分にとってはマクロで撮って面白いのは野生の花の方のような気がする。とはいえ、近所の空き地で咲いている花なんかは、野生なのか園芸種なのかわからない場合もある。古い花壇に植えられていたものから種が代々芽を出し、花壇がなくなってからも花を咲かせているたくましい奴らもいる。植物図鑑で調べればいいのだろうけど、これが結構面倒くさい。いろいろ撮影しても未だに名前のわからない花というのも多い。
 湿原に行って撮ったきれいな花も、名前のわからないものがある。遊歩道の脇にいくつか咲いていたもので、赤い小さな花が鞠のように集まっているものがあった。この花は湿地ではなく、だいぶ踏み固められ、草がだいぶ生えているところにあった。そのため、湿原の植物として調べても出てこなかった。たぶんマイナーな部類になるんだろう。もうちょっと気合を入れて調べればいいんだが、どうにも面倒だ。誰か教えてください(こういう楽な方向に流れるのがイケナイ)。
 花の名前を調べるのは面倒というだけでなく、苦労して判明した割にはつまらない名前だったり、なんとも変な由来だったりすることもあり、がっかりという場合が結構ある。スライドマウントに和名を記載するぐらいなら、学名をラテン語で入れておいたほうがカッコイイんじゃないかとも思ったりする。で、学名まで調べるとなるとさらに面倒くさいというわけ。

高山植物3.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年06月04日 10:00