STEREO CLUB TOKYO

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日が沈まぬ国のカメラ

 ソ連が崩壊してから、彼の地のカメラはebayを通じて手に入れることができるようになった。僕がebayを始めた頃、ロシアからの出品物は比較的安価に落札できた。それは米国からの出品物に比べ、送金方法が面倒だったり、輸送時のトラブル懸念で不人気だったのだろう。僕も、ロシアの銀行にルーブルで入金しろといわれても困るので長く遠慮していた。
 あるとき、米国の出品者がFED・BOYを出していた。送金は米国に、だが、物品はロシアから送るという。送金方法に面倒が無いので、安価に落札させてもらった。紙紐で丁寧にくくられた荷は、何のトラブルも無く僕の元に届いた。
 かつて日本では高価で売買されたが、手に取るとさほど高価には見えない。安価に落札したと思っていたが、まあ妥当な金額だったということだろう。部品の作り方やメッキの仕上げなどに、他の国のカメラには無い妥協のようなものが感じられる。でも、我々からすれば妥協に見えるが、ここまでの品質でよいという共産圏のマーケット事情が背景にある。工業製品というのは、適度な競争がないと進歩が無い。製造現場からの改善も進まない。
 この国の昔のエピソードとして、聞いた話。国土に鉄道を引く会議で揉めているとき、権力者がこうすれば良いと定規とペンを取って地図上に直線を引いた。だが、定規から指がはみ出していたので、指の形にカーブした妙なでっぱりができた。なのに誰も修正することなく、そのままの形で鉄道が敷設されたという。信憑性はともかく、お国柄が感じられる話。
 ソ連崩壊の後は、ものの作り方もだいぶ変ってきたようであるが、やっぱり彼の地から買うカメラにはUSSRの刻印のある古いものが魅力的だ。品質がどうであれ、当時の時代背景に思いを馳せながら使うというのも趣がある。
 そう、わが国の東京西部を走る中央線も、定規で直線を引いて計画された。指の形のカーブがあれば面白いのに。

USSR.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年09月08日 10:00


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