STEREO CLUB TOKYO

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⑤ルーツはおなじ

 欧州の都市を訪れると、教会に行ってみるというのがお決まりのようになった。ブリュッセルにも大きな教会がある。聖ミッシェル大聖堂である。15世紀に完成するまで、300年を要したという。
 地図を頼りに、緩やかな長い上り坂をのんびり歩く。坂を上りきったとき、それと一目でわかる建物が視界に飛び込んでくる。小高い丘の上に建っているので、教会の入り口で振り返るとブリュッセルの町並みが見渡せる。
 中に入ると、静かで薄暗い。この教会も内部の明かりはステンドグラスとろうそくの灯火だけ。左右を見渡すと、大きなステンドグラスがずらりと並ぶ。その図柄は聖者の伝記に基づくものなのだろう。ひとつひとつ、眺めてゆくだけで時間の経つのも忘れそうになる。これらの絵は、どのような物語を記しているのであろうか。
 精巧に造られたそれらは、宗教的な意味合いだけでなく、美術品としても貴重な存在。五百年を超える昔に、これだけのガラス工芸技術があった。ガラスに着色するには、様々な金属や、金属酸化物などを混ぜて発色させる。透明で美しい、濁りの無い着色ガラス。きれいな赤を出すには金を混ぜることもあるという。
 ガラスというのは不思議だ。加えるものやその量で色味が生き物のように変わる。ステンドグラスの職人たちは、イメージに合った色を出すのに何度も試行錯誤をしたのではないだろうか。決して簡単な道のりではなかったはずだ。
 レンズもガラスでできている。屈折率を変えるためにいろいろな添加物を加えている。収差を打ち消すために、異なる屈折率のガラスを組み合わせるためだ。ここにも苦労の積み重ねがあっただろう。
 レンズ技術のルーツを辿れば、ステンドグラス職人達の苦心の技に、きっと行き当たるに違いない。(つづく)

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投稿者 J_Sekiguchi : 2011年12月08日 10:00


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