STEREO CLUB TOKYO

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モデルナンバーST523

 なんとも不思議な装置がある。ハンマーストーン塗装にリアリストのロゴが入っていてかっこいい。折り畳みのできるルーペのような格好をしていて、カメラレンズの先端に取付けると思われる側には凸レンズがついている。反対側にはメモホルダーのようなものがついている。折りたためばポケットサイズになるのだけど、何のために使うのだろう?
 実はこれ、フィルムを装てんして撮影を始める時に、フィルムにメモを写し込む装置なのである。リアリストを使った人ならわかりやすいだろうけど、撮影のはじめには2回分の巻き上げでフィルムを送る。これは、フィルムの先端が既に感光しているからやるのだけれど、この2回目の空送りで左側レンズにブランクのコマができる。右側のコマは既に感光しているので、ステレオペアにならないコマが生じるのだ。もちろん、これを普通の2D写真用としてムダ無く使うのもいい。でも、メモ用として使うのなら便利な方がいいだろうということで、このアタッチメントが考えられた。
 アタッチメントには強い度の凸レンズが入っていて、強烈なクローズアップレンズと同じ働きをする。マーケットでは当然中古品を購入するわけだが、中にはこのレンズが紛失しているのもあるから注意したい。実際に使ってみると、思いのほか鮮明にメモを写し取ることができる。旅行などで撮影本数が多いと、現像した後に順番を並べ替えるのに苦労する。メモがあると楽である。使ってみるとほんとうに便利なんだけど、どうしても必要かというと、どうでもいい気もちょっとする。

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投稿者 sekiguchi : 2005年01月29日 00:05

吊り金具の治療

 リアリストを使い込んでゆくと真っ先に壊れるのがストラップの吊金具だ。カメラ本体に左右に付いていて、ネジで止めてあるやつね。これは板金用のアルミ板を打抜いて作られているから軟らかい。ストラップを通すリングの方が硬い材質で作られているから、どうしても軟らかい方が負けてしまう。特に、左側の金具の方が薄い板で作られているからやられやすい。重いリアリストを支え、あなたの首に下げられてブラブラしているうち、ゴリゴリやられて削れてしまう。使い込まれたものほど金具の端がめくれ上がっていて痛々しい。これを放っていれば、ついには金具が切れてカメラが落下、硬いコンクリートに叩き付けられてバラバラのパー。あーこわい。
 こんなことになる前に、直してあげましょう。金具を全部作り直す手もあるけど、これはめんどくさいし、上手に作るのが難しい。補強金具で対処しましょう。まず、めくれ上がった金具部分はヤスリで削って滑らかにしておきます。次にDIY店でボールチェーン用の端金具を購入しましょう。ちょうどいい幅のものを選んで。ステンレス製もあり、1個20円ぐらい。ニッパーで両端を切り離し、真中の部分だけ使います。切り口はヤスリで滑らかに。カメラ金具のカーブと同じになるように形を整え、金具にかぶせます(かぶせるというより、横から差し入れる感じ)。エポキシ系の2液接着剤で固定すれば出来上がり。施工後は損傷が進行しませんし、接着剤が剥がれにくい工法ですからカメラ落下の危険がぐっと減ります。カメラ側の金具がひどく損傷していても補修が可能ですからぜひお試しください。
 これってなんだか、虫歯の治療で銀のクラウンをかぶせるみたいだな。

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投稿者 sekiguchi : 2005年01月22日 00:11

幻の偏光フィルターユニット

 フィルターの話がでたのでその続き。水面の反射をカットしたり、カラーコントラストを増すために使われるのが偏光フィルターだけど、二つ目玉のステレオカメラに使うのはかなり大変なことになる。フィルターには向きがあり、回転させて最適なポジションで撮影しなきゃならない。左右で位置をピッタリ揃えるのはめんどくさい事この上ない。ファインダーでフィルター効果を確認しようと思えば三枚要る。三枚のフィルターを同時に手で動かす・・・こりゃたいへんだ。前に紹介したフィルターホルダーではまずやりようがない。
 それではというのでリアリストの生みの親、Seton氏がD.W.社を退社した後にプロデュースした偏光フィルターセットがある。レンズカバー部分を交換して取り付けるこのセットは、左右レンズとファインダー用の計三枚が連動して動くようになっている。フィルターなしの撮影時にはカバーと同様に全体を上に跳ね上げられるし、撮影しない時にはフタができるようにカバーもついている。こんないいものならぜひ欲しいと思うが、総生産数が千数百個と極めて少ない超レア・アイテムだ。市場に出ても高値でとても手が出ないし、古いものだからフィルターの劣化で効果が弱くなっている可能性も高い。
 それではというので、僕も同じようなアイテムを考案してみた。市販の小径フィルター三枚を、銀ロウ付けで組み立てたフレーム(部品はDIY店で購入)にセットしている。ブラケットもDIY店で買ったアングルを利用している。各フィルターはワイヤーで連動して動き、ファインダーで効果を確認しながら使うことができる。フィルターを使わないときはフレームごと動かすこともできるのだ。Seton氏のデザインより携帯に不便だけど、実用面では互角だ。どうだー。

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投稿者 sekiguchi : 2005年01月16日 23:36 | コメント (2)

レンズフードのひみつ

 リアリストの付属品類にもそれぞれ番号がついている。ST○○というのがそれ。今回紹介するのはST54、レンズフードです。海外ではサンシェードと呼ばれるこのアイテム、逆光に強いリアリストにはなくても特に困らない。だから無理をして手に入れる必要はないんだけど、本来の日除けの役割のほかにもうひとつ特技があるのを知っているかな。それはフィルターホルダーとしての機能だ。前に紹介した小径のフィルター枠を使って新しいフィルターを作ろう、なんて苦労はしなくていい。よかったね。
 カメラ取り付けの部分には櫛歯が刻まれていて、レンズの絞りリングにはめ込んで使う。金属製の本体はネジで前後に2分割でき、分割のところにはシリーズⅤのフィルターが入るように工夫されている。シリーズⅤは昔の規格で、ネジのない金枠にガラスフィルターがセットされている。ちょっと入手が難しいが、特注で新品を作ってもらうことができる。もちろん、中古マーケットでも根気よく探せば実用的なものが見つかるはずだ。特にNDフィルターは屋外撮影で絞りの余裕ができるので便利だよ。シリーズⅤが手に入らなくても、市販のゼラチンフィルターを丸く切って使うことができる。種類も多いしかさばらないので、思いのままのフィルターワークを楽しめるというわけだ。どうだー。
 さて、欲しくなった人のためのガイド。ST54にはアルミ製と、真鍮+ニッケルメッキ製の2種類がある。アルミの方が軽量で実用的。真鍮製はズシリと重いが見た目はイイ。マーケット価格は最近ぐっと下がって共に$40程度かな。取り付け固さは、櫛歯を僅かに曲げて調節してね。リアリストカスタムには絞りリングのノブに櫛歯が当たるから、櫛歯の一枚を削るなどして工夫して取り付けてみてねー。

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△左がアルミ、右が真鍮+ニッケルメッキ。中央の写真はNDフィルターを入れたところ

投稿者 sekiguchi : 2005年01月08日 05:43