STEREO CLUB TOKYO

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コインケース?

 作画に凝ってくると手を出したくなるのがフィルターだ。今普通に売っている、レンズの先端にねじ込む方式のフィルターは規格化されているから、イマドキのカメラに使うのなら迷うことはない。でも、リアリストにはレンズの先端にネジはないし、径も小さい。これに合う現代のフィルターは無い。いくら探しても、ない。こういうコトはクラシックカメラではよくあることだ。だからしょうがない、とあきらめましょう。
 そう言っちゃうと話が終わっちゃうのだが、リアリストにはちゃんと専用フィルターが販売されていたのだ。レンズ先端にはフィルター取付のネジがないので、レンズにかぶせる方式になっている。リアリストには色々なレンズバージョンがあるが、レンズ枠のサイズは同じだからどのモデルにも使える。ただし、当時のフィルターの用途はちょっと限定されたものになっている。これら専用フィルターは、レンズ保護用透明ガラス、フラッシュ用色調変換フィルター、タングステンフィルム用色温度変換フィルターの3種しかない。これらが革製のかっこいいケースにペアで計6枚入ったセットが、たまに中古マーケットに出ることがある。革製品なのに、昨日店先に出ていたかのような真新しい状態のものがあることに驚く。こんな時、アメリカ人というのは物を大切にする人たちだなぁ、と妙に感心したりもする。
 残念ながらリアリスト専用のサイズで、作画に凝るために微妙に色温度をかえたり、色調をコントロールするフィルターはない。でも、この古いフィルターから枠だけ使って、新しい現代のマルチコートフィルターを組み入れる、ということもできないわけじゃない。でもそんなめんどくさいこと、僕はしませんけどね。

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投稿者 sekiguchi : 2004年12月26日 01:33

1050/Realist MATCHED 35mmF2.8

 1042モデルの後継として発売されたモデルで、CUSTOMと呼ばれる。ブルーコーティングのレンズはレアアースレンズと呼ばれ、高い解像度を誇っていたとされる。レアアースとは希土類元素のことで、硝材の光学特性を改善するために添加された。当時はこれに限らずさまざまな添加元素が試されていて、放射性の物質が使われたりもした。現代では環境に配慮して使われない特殊硝材がこの時代に多く登場している。
 さて、CUSTOMのレンズ構成は、テッサータイプの前後が逆転した形になっている。困ったことに、解像度は高いが逆光に弱く、場合によっては画面全体が眠い感じになり、せっかくの解像度が発揮できない。フードを活用したいところだが、リアリストの専用フードが取り付けられない(フードについては別の機会にお話しします)。ボケに関しては二線ボケが生じてしまう。
 メカ構造は1042とほぼ同じだが、いくつものマイナーチェンジがされている。革張りは山羊革からカンガルー革に、フォーカスダイヤルにはクリックが付き、フィルムカウンターは減算式になっている。トップカバーとレンズボードはニッケルメッキのヘアライン処理だ。巻き上げ、巻き戻しノブが大型化され、絞りリングにはつまみが付き、絞り値はリングの外周に刻まれた。全体的に高級感を高めたデザインだ。レンズカバーはフラットになり、CUSTOMと刻印されたプレートが付いている。
 製造台数が少ないことと、レアアースレンズの噂が手伝って、マーケットでは高値で取引されている。しかし、僕としては、実用機としてのコストパフォーマンスの点では辛い評価をせねばならないと思っている。

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投稿者 sekiguchi : 2004年12月19日 12:12

1042/DAVID WHITE ANASTIGMAT 35mmF2.8

 Ektarレンズの後継に、自社名を冠したF2.8レンズを採用したモデル。ボディは巻き上げのラッチ機構の変更、二重露出防止機構・解除機構の追加がされている。シャッターボタンの手前、裏蓋のすぐ上の引きノブが解除機構で、多重露光をするときにシャッターのロックを外すためにある。因みに、初期の1041やEktarの多くはこれがない。これらはロックが解除できないのではなく、ロックが付いていないのだ。だからシャッターボタンのそばにある窓に赤い印が出ていても、重ねてシャッターが切れてしまうので注意がいる。知らないウチに立体心霊写真が撮れちゃうかもしれないからだ。
 F2.8レンズは、F3.5レンズと同じくANASTIGMATの標記であるが、レンズ構成は全く異なり、3群4枚のテッサータイプである。イメージサークルも十分大きく、画面の四隅が減光することもない。琥珀色のコーティングがされ、逆光にも強い。解像度、コントラスト供に高いが、Ektarとは異なりブルー系のカラーコントラストが高い。僕がアフリカで撮影したときには、どこまでも深い青空の色を忠実に再現してくれた。若干硬調の印象を受けるが、メリハリの効いた絵を作るのにイイと思う。このレンズもEktar同様、ボケ方は自然な感じで、芯が残ったり二線ボケが出ないので、立体視で違和感のない作画ができる。
 このモデルは1041に比べると製造数が少なく、手に入れるのは少しだけ難しい。とはいえ、マーケットにもよく登場するので程度と価格のバランスを見極めてチョイスしたい。米国での価格は最近少し下がり傾向で、1041の3倍程度で取引されている

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このレンズには”GERMANY”の刻印がある。文字の天地が変わっていることに注目!

投稿者 sekiguchi : 2004年12月12日 14:17

1042/Kodak Ektar 36mm F2.8

 1042シリーズは、CUSTOMを除くF2.8レンズを装着したモデルを指すが、初期のレンズはコダックから供給を受けた銘玉Ektarレンズが付いている。他のリアリストと異なる焦点距離36mm、フォーカスダイヤルの最短側表示も2と1/2フィートではなく3フィートになっている。ボディは最高速1/200秒のシャッターに換装した1041初期モデルをベースにしているので、二重露出防止機構・解除機構がなく、巻き上げ制御も古い機構を使用している。
 当時のコダック社はフィルムだけでなく、優秀なレンズとカメラの一大供給メーカだった。Ektarの名は大判用のコマーシャル・エクターなどにも見られ、今でも独特の描写をすることで人気がある。リアリストのこのモデルも、その独特の描写をするのだ。解像度、コントラスト供に高いが、硬すぎる描写にならずに中間調をうまく表現してくれる。特に暖色系のディテールの表現がいい。総じてバランスの良い落ち着いた描写とでもいうべきか。レンズ構成は3群4枚のテッサータイプで、マゼンタの美しいコーティングが施されて逆光にも強く、ボケも自然な感じで使いやすい。
 このカメラは珍しいことに、左右の絞りリングに分かれてWHITE社、コダック社の刻印があるダブルネームだ。当時のコダックは硝材の開発も積極的に行い、現在では使われない添加物も使ったらしい。一体このレンズにはどんなひみつがあるのだろう。
 さて、このモデルは生産数が極めて少ないこともあってなかなか市場に現れない。米国では1041モデルの8倍以上の高値で取引されているが、程度のよいものはなかなか少ない。もし程度のよいものが市場にでれば、Ektarコレクターも欲しがるからすぐに売れてしまう。あなたがこれをどうしても欲しいなら、見つけたときに即買うべし。

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投稿者 sekiguchi : 2004年12月04日 18:47