STEREO CLUB TOKYO

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ミツバチを撮る

 マクロステレオカメラを自作して、初めて撮影した昆虫がミツバチだった。ミツバチはご存知の通り毒針を持っている。刺されるのではないかと恐れる人も多いが、蜜を吸っている蜂が何もしない人間をいきなり襲うことは少ないようだ。花に集まるミツバチは忙しそうに花の蜜を集めている。カメラを構えて近づく。刺されないように、なんにもしませんよーと、そーっと近づく。ストロボを発光させても驚くふうも無い。
 初めのうちの撮影は花に留まって蜜を吸っているところを撮る。だんだん、飛んでいるところを撮りたくなってくる。だが、すばやく飛翔するミツバチをファインダーで追いかけるのは至難の業だ。とてもうまくいくものではない。そこで、夢中に蜜を吸っているところを近づいて、フォーカスを合わせて待つ。そのうち次の花に向かって飛び立つので、その瞬間にシャッターを押すのだ。こうすると飛翔している姿を撮影することができる。ミツバチというのは、一つの花を仲良く一緒に吸うということは無いらしい。他のハチが近づくと飛び立つ。この瞬間を狙うと、2匹のハチを一緒に写すことができる。
 そんな感じで撮影を楽しんでいたが、あるとき偶然にもある養蜂家のご好意で巣箱の中のハチを撮影させていただいた。いわゆる網付きの帽子とかの防具も無く、丸腰の状態で撮影に望んだのだ。自作のマクロカメラは約30cm先のものに合焦する。煙で燻して刺されないようにしているとはいえ、さすがにこのときは近づくのが怖かった。なんにもしませんよーと念じながら数枚を撮った。その中には女王蜂のショットもあった。なかなかできない体験であった。
 ミツバチというのは社会性の高い昆虫で、その生態は古くから研究されている。フィールドで蜜を吸っているのを見ても感じられないが、巣箱の中でせっせと動き回る彼女ら(働き蜂は全部メス)の社会はとても不思議な魅力に満ちている。
ミツバチの巣.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年09月28日 00:06

下北半島にて

 本州の最北、マサカリ形をした半島が青森県の下北半島である。ここで有名なのが霊山、恐山である。ここにはいろいろと不思議な地形があることが紹介されていて、一度は行ってみたいと思っていた。ここは地質学的にも貴重なものがある火山地帯なのである。リアリストをお供に、一人でレンタカーを借りて訪れた。
 山道を登ってゆくと宇曽利湖にたどり着き視界が開ける。この湖は火山性の成分のため酸性度の高い水質になっていて、湖面の色が普通の湖とは違う。コバルトブルーに輝いて美しいが、普通の生物が棲めない水質なのだ。いわゆる恐山には菩提寺から入るのだが、訪れる人もまばらで、一歩踏み入れると不思議な雰囲気に包まれている。奥に進むと硫化水素臭がたちこめ、火山特有の地形が広がる。あちこちの地面から噴気が出ている様から、昔の人は死後の世界を想像したのだろう。
 菩提寺の境内には入浴のできる温泉があり、この中の古滝の湯に入ってみた。木造の小さな温泉小屋の雰囲気がいい。誰もいないのでこの雰囲気を撮影させていただき、ゆっくりと湯に浸かった。火山性の温泉特有の硫化水素含有泉、強い酸性の湯が心地よい。のんびりしていると、引き戸を開ける音がする。地元の人が入りに来たのだ。さらにのんびり、大地のパワーを身に浴びているうちに、その地元の人は出て行ってしまった。僕はどちらかというと長風呂派なのである。しばらくするとまた入り口の引き戸が開く音がする。また地元の人か?と思ったが誰も入ってこない。脱衣所を覗いても誰もいない。はて、死者の霊か?と思いつつ引き戸をよく調べると、少し傾いている。ちょっとしたことで開き易くなっていたのだ。
・・・はて、引き戸を開いた「ちょっとしたこと」とは何だろう。やはり?まあ、そんなこともあるかもしれない。フィルムを現像して、何か写っているだろうかと期待したんだが。見える人には見えるのだろうか。

古滝の湯.jpg 恐山_古滝の湯.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年09月18日 00:27

マウント職人への道

 たかがマウント。されどマウント。台紙に挟めばとりあえず立体に見える。しかし、二つの画面の位置関係とか、構図の調整で見栄えがまったく変わってしまう。僕が初めてマウントしたものをあらためてみて見ると、ステレオウインドウがめちゃくちゃだったりする。でも、初めのころはそんなの気にならなかった。立体に見えることのインパクトのほうが大きくて、少々の欠陥は見逃しちゃうのだ。
 だけどしばらく自分でやっていると、マウントのときの画面調整で表現自体も変わってくることに気がつく。これは一つの作品作りの一工程であって、他人任せじゃだめなんだ。機械でオートマチックにやったんじゃだめ。だからコダックがマウントサービスをやっていた頃も、値段も理由にあるけど依頼したことはなかった。
 マウント作業で一番厄介なのが、ごく近い距離にある被写体を撮影した場合だ。ステレオウインドウがうまく作れなくなる。解決する方法は、マウントの窓の幅を小さくする。昔は、ハーフサイズ用のマウント台紙を使って解決していた。今はマウントが自作できるからどんなものも作ることができる。
 マウント作成の自由度は広がったけど、作業は面倒な部分も出てきた。より使いやすいマウント、作業がしやすく疲れないマウント、まだまだ改良しなければならない。これが完成形だと思っていても、しばらく使っていると改善しなければならない部分が見えてくる。ヒートシールの紙とか、新しい素材が手に入っても新しいアイデアが生まれるだろう。
 そんなわけで、マウント作業の職人を目指していたつもりが、マウント自体を改良するに至ってしまった。いったい、どこまで突き詰めれば良いのだろう。片方の眉を剃って山篭りでもすれば答えが見つかるのかもしれない。

B09.jpg
△ebeyで手に入れたスチール製マウント
(使い方が今ひとつ不明)

●● これからもさまざまな話題で登場いたします。どうぞヨロシク。 ●●

投稿者 sekiguchi : 2009年09月11日 23:30

新型マウント・大地に立つ

 再び、ここは前線に立つリアリスト部隊である。備蓄のマウントは日々少なくなっている。
伍長:隊長殿、補給部隊から新しいマウントが届きました。輸入品ではなく、新たに作ったそうです。
軍曹:おお!成功したのか。それにしても・・・今度のはずいぶんと変わった形をしているな。
伍長:糊で貼り合わせるマウントですから、作業性を考慮してノリシロを分割したそうです。
軍曹:4辺を内側に折り込むのか。これなら面がフラットになるな。材料は事務用品の個別ホルダーか?
伍長:はい。厚い材料をカットするため、窓のところはカッターを3回走らせて切り抜いています。
軍曹:ということは、当初の設備で加工が成功したんだな。
伍長:設備投資の費用も含めて、1枚あたり9円のコストだそうです。この程度なら気軽に使えます。
軍曹:これで近接用、ヨーロピアン用も含めて自由に作ることができるのは心強い。作戦は成功だ!
 こうしてリアリスト防衛軍は戦略物資を自ら作り出すことに成功した。今回の成功の最大の鍵は、クラフトロボで厚紙を切断する工夫ができたことにある。カット線を往復させると厚い紙もカットできることが研究の結果わかったのである。A4サイズの事務用品は大量に作られているため、探せば安価なものが手に入るし、供給も安定している。糊は試作結果でウレタン系のコクヨ・パワープリットか、PVP系ならトンボ鉛筆のピットハイパワーがよい。近年の糊は、接着剤と呼んだほうが相応しいほど新しい技術が導入されている。このほかにも数々の工夫を盛り込んでマウント加工の体制を確立した。幾多の困難が立ちはだかろうとも、微かに光るインスピレーションを大切にすれば解決することができるのだ。
B08.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年09月06日 13:35

マウント開発

 ここはリアリスト研究所にある特務機関の一室である。マウントを自給できる体制を確立するのだが、次のような大前提のもとに研究を進めている。まず、機材や材料は特別なものではなく、一般に流通しているものから簡便に調達できること。次に、1枚あたりのコストが10円程度になること。コストといっても、販売を目的としないので自分の作業費はタダとしておく。加工機械の償却費も合わせて従来のヒートシール紙マウントと同じぐらいの費用負担になることを目指す。
 まず、加工機械としてグラフテック社のクラフトロボ(CC200-20)を導入した。オープン価格であるが、市場価格は24,000円前後といったところ。5千枚のマウントを加工すれば投資分は1枚当たり5円を切る。材料は1枚20円程度のA4サイズ厚紙を使い、ここから4枚のマウントが取れればトータルで1枚10円以下になる。
 他の高グレードのマシンであれば厚紙でも自由に切れるのだろうが、それではあまりに初期投資が大きすぎる。安価なマシンを選定したのだがその能力はどうか。これが最大の課題である。テストカットの結果、加工のスピードと精度は十分なレベルにあるものの、マウントに最適な厚紙は切り抜けないことが判明した。対策として切断可能なケント紙を分割して加工し、重ね貼りで強度を出すことを試みた。しかし糊付けの手間が増え、作業性が非常に悪い。
 加工が簡単でかつ貼り合わせがやりやすいこと、A4用紙からなるべく多く作れることといった問題が重なり合って解決の糸口が見えない。新しい展開図を作り、切断加工して試作、変更してまた試作をするという行為が続く。この方法では不可能かもしれないと諦めかけたこともある。厚紙を切り抜くことさえできればいいのだが。やはり高グレードの機械を導入しなおすしかないのだろうか。苦悶の日々が続く。さて、実用的なマウントは完成するのだろうか。(つづく)
B07.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年09月03日 23:01