STEREO CLUB TOKYO

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⑥ノーベル

 スウェーデンの有名人といえば誰か?・・・やはり、アルフレッド・ノーベルだろう。ダイナマイトの発明とそれに関係する事業創成で巨万の富を築き上げた人、ノーベル賞の提唱者である。伝記に登場する偉人の一人だ。
 もちろん、スウェーデン国内でも、ノーベルは偉大な人物として広く認識されている。王宮の近くにはノーベル博物館があり、彼の偉大な業績を称えている。博物館のミュージアムショップでは、ノーベル賞のメダルを模ったチョコレートが売られ、ノーベルの横顔が描かれている。ありがちなみやげ物のようだが、味の点でも結構評判なのだという。
 ストックホルムにある博物館のほうは結構有名だが、彼が研究に費やした建物は郊外にあり、今ではノーベル記念館として保存されている。特に観光地として紹介されている訳ではなく、訪れる邦人は少ないのではないだろうか。
 手入がされた庭には、かつて実験で使用されたであろうものが展示されている。 偶然にも、訪問した日が休館日にあたっており、興味深い資料が並ぶであろう記念館の内部は、残念ながら見ることができなかった。
 ここを訪れるのは、もともと予定に入れていなかった。時間の都合で立寄ったとはいえ、休館だったのは残念。でもまあ、こういうときは「また来れるのだから、また来なさい」というメッセージなのだろうと、前向きに考えることにしている。
 木造の記念館の前には庭が広がっていて、周囲の木々もよく手入がされている。いつも思うのだが、ヨーロッパの人々は庭の手入をきちんとしているということ。特にゲストを迎える庭など、凝らした工夫がされていて、粋である。
 庭の真ん中には花壇がしつらえてあり、ノーベルの銅像が建っている。もし、彼がダイナマイトの発明をしなかったか、あるいは遅れていたら。世の歴史はちょっと違うルートをたどったことだろう。(つづく)

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▲ノーベルの家
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▲奥の建物は実験室の一部
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▲ノーベルチョコ

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年08月25日 10:00

⑤郊外へ

 首都ストックホルムから列車に乗って郊外に出ると、周りの風景が一変する。北欧の水の都とも称されるように、ストックホルムはたくさんの島からなるが、北の方に行くにしたがい、針葉樹の深い森に囲まれてゆく。この風景、北海道の原野に似ている。地平線の先まで、どこまで行っても森が広がっている。これが北欧の風景か。
 列車は森の中を、風を切り裂くように突進する。客車はガタゴトと大きく揺れながら機関車に引かれてゆく。北国の大地を進むには、これぐらいの力強さが必要なのかもしれない。いくつかの小さな町を通り過ぎ、目的地に着く。
 ここに来たのは観光ではなく、仕事の用事で来たのだ。大きな工場が立ち並ぶ街にやって来たのだが、日本の工業地帯とはだいぶ趣が違う。針葉樹の森の中に、手入のされた庭が広がって、この中に工場がある。そんな雰囲気なのだ。
 工場の内部というのは、被写体としてはとても魅力的だ。だが、多くの工場は、写真撮影はおろか、カメラの持込さえも制限されている。それが常識なのだ。物作りのノウハウは工場のいろいろなところにちりばめられている。ライバルであれば、どんな工夫がされているか、写真を見るだけで察知してしまうだろう。だから、写真を撮ることは絶対ダメ。
 それでもいつか許されるならば。モノクロームのフィルムで工場の写真集など作ってみたい。そう思うほど、物作りの現場は魅力にあふれているのだ。働く人の真剣なまなざしはいい絵になるはずだ。・・・まあ、かなわぬ夢だろう。
 工場の近くに設けられたゲストハウスに宿泊したのだが、ここから見る景色が素晴らしい。会社の敷地には緑があふれ、よく手入がされている。休日には散歩を楽しむ人も多いと聞く。ようやく夕日が空を染めだした頃は夜の8時をまわろうかというころ。遅い散歩を楽しんでいると、藪の中からのウサギがこちらを覗いていた。(つづく)

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▲電気機関車に引かれてゆく
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▲北欧の森

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年08月18日 10:00

④王宮から下町へ

 スウェーデンの王宮を訪ねた日、偶然にも建国記念日で、王宮の広場では儀仗兵のパレードがあるという。朝には観光客もまばらであったのが、パレードが始まるころになると広場は見学客で埋め尽くされた。各国の駐在武官も正装で出席している。広場の中心を空けるように立ち入り制限のロープが張られると、身動きができなくなってしまった。
 パレードに参加する儀仗隊は、各地方の部隊からそれぞれ集まっているようで、制服も、披露する内容も、特色があってなかなか面白い。要人を歓待するために訓練された兵士たちの動きは、からくり仕掛けの人形のようにさえ見える。
 次々に披露されるパレードを見ているうち、だんだんと人が増えてきて、このままでは出られなくなってしまう。そう感じて早々に引き上げ、ちょっと早めに昼食を取る。昼間からビール。この国では常識である・・・のかな。
 王宮から目抜き通りを抜け、ストックホルム中央駅まで歩く。この通り、みやげ物などの商店も多く、多くの人でにぎわっている。この雰囲気、何かで見たことがあるような気がする。ヨーロッパ風の架空の街を舞台にした映画で、ここに似たような通りが出てくる。たとえば、あれとかあの映画とか。具体的なタイトルは言いませんけど。
 こういった風景を撮影するとき、たまたまそこに居合わせた人たちも風景の一部である。なるべく風景に合った感じで取り入れる。このとき、自然な感じで取り込むのがとっても難しい。撮っていると悟られないように撮るのだ。
 じっとカメラを構えて、構図を練っていたりするとうまくいかない。すばやく、直感を働かせ、構図を決める。周囲の風景に溶け込むようにして雰囲気を消して、撮る。だから、ぎらぎらと目立つ最新式のカメラではなく、リアリストのような古臭いほうがいいのだ。おまけに、変な形でカメラには見えないこともある。・・・なんだか、忍者のようでござる。(つづく)

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▲王宮広場でのパレード
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▲ガムラ・スタンから市街地へ抜ける大通り

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年08月11日 10:00

③ガムラ・スタン

 スウェーデンの地図を見ると判るとおり、たくさんの湖が点在している。また、ストックホルムは海に近く、上空から見ると、島々や中洲がモザイクのようにちりばめられている。まさに水の国、水の都だ。
 今度はストックホルム中央駅近くのホテルから歩いて船着場に行き、小さな船に乗って対岸に渡った。船を使わず、歩いて行くこともできるが、船風を浴びるというのもいい。青い空に海鳥が群れている。
 船を降りると、王宮に続く長い登り坂があり、丘の周りを古い町並みが囲んでいる。このあたりはガムラ・スタンと呼ばれていて、石畳の細い路地と、昔からの建物が、長い歴史を語るかのように保存されている。
 細い路地は、縦横にさらに小さな路地につながっていて、奥のほうには大聖堂の時計台がこちらを見ている。こういった風景をステレオで撮るのは楽しい。リアリストで撮っていると、自分が風景の一部になったような気がしてくる。
 天気が良いので、日のあたる部分と、陰になった部分のコントラストが大きい。こういう被写体は、露出をどこに合わせるのか悩むところだが・・・。でも、ステレオの場合、暗い影に埋もれた風景もうまく表現してくれる。僕はこのような時、日の当たっているところを優先させ、シャドー部分はやや落ち込むようにして撮っている。そのほうが自然に見えるようだ。
 さて、仕上りが楽しみだ。もし、デジタルだったら、うまく撮れたかその場で確認したくなるだろう。フィルムではそれができないから、どんな仕上りになるのか想像を大きく膨らませながら撮る。それが楽しいのかもしれない。
 スタジオデラックスを使って、日の当たるところと、陰になっているところを計る。針の触れた範囲で、シャッターと絞りの組み合わせをどの程度にしようか考える。頼れる露出計は、イメージを膨らませる助けをしてくれる。(つづく)

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▲王宮の丘から港を臨む
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▲ガムラ・スタンの小路

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年08月04日 10:00