STEREO CLUB TOKYO

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自作マウントの追加情報

 紙のマウントで困ることの一つに、切り口のケバ立ち。紙は細かい繊維を重ねたような構造だから、刃物で切った切り口にはこの繊維がケバとして現れる。鋭利な刃物で切ることが大事なのだが、厚紙だとケバができやすい。
 マウントの開口部にケバが出ていると、ビュアーで鑑賞するときに拡大して見えるのでかなり不快。ここはきっちり処理したい。処理の方法はいくつかあるが、物理的に取り除く方法は結構大変なのだ。指で切り口をなぞるだけで取れてしまうケバもあるが、そうでないものは紙やすりをかけたり、ライターの火であぶって焼いたり。火であぶる方法では細かいケバしか除去できないし、紙やすりは使い方を誤るとケバが増えたり、開口部が変形してしまう。
 そこでお勧めしたいのがマウント接着の糊を塗るときに、この糊でケバを封じ込める方法だ。ヒートシールにするため、ポバール(液状合成糊)を刷毛でマウントに塗るのだが、この時にする。糊が乾かないうちに指でマウント開口部をなぞってやるとケバが糊の中に封じ込められて目立たない。指は糊で汚れるけどね。
 無理に取り除くのではなく、糊でコーティングしちゃうわけである。この方法はほかにも利点がある。先に紹介したマウント用の紙は、板紙の片面に白い塗料を塗ったもの。クラフトロボで加工をしていると、この塗料が削れてできる微粉がたくさん発生する。この微粉がフィルムに取りつくと不快。だからこれも糊でくるんでしまおう。
 このほか、マウント開口部の角がきれいな角になっていない場合もある。これはクラフトロボの刃の動きでできてしまうもの。カット線の工夫である程度解消することもできるけど、ピンセットの柄のところで押さえてやるときれいな角に整形できる。出っ張っているところを押し込めるような感覚でやるとうまくいくはず。ためしてみてね。がってん。

マウント製作2.jpg マウント製作.jpg
マウント工場絶好調 

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月31日 10:00

斬鉄剣参上

 フィルムステレオカメラ愛好家の方々には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、マウント台紙はクラフトロボで切り出しておられると思いますが、これのカッター刃はどの程度の耐久性を持つのでしょう。僕もかれこれ千枚を超えて切り出していると思いますが、一向に切れ味が劣る気配を見せません。あんなにちっさい刃なのにね。
 そんな心配をしていたある日、カットがずれることが続いた。突然の異音。刃先が引っかかって送りのギアが悲鳴をあげているようだ。これはいよいよ刃がダメになったかな、と感じ、実体顕微鏡を持ち出して刃先を見てみた。
 顕微鏡のフォーカスを合わせてゆくと、鋭利な刃先が立体的に浮かび上がる。こういうとき、実体顕微鏡はいい。刃の角度がどのぐらいになっているのかもよくわかる。驚いたのは、刃先に刃こぼれや摩耗がほとんどない。先端の方がわずかに丸みを持っているかなあという程度で、切れ味に影響するような欠陥は見つけられなかった。
 この刃は超硬合金でできている。炭化タングステンとコバルトの粉末を混合し、焼結した素材だろう。ダイヤモンドに次ぐ硬さのはずだ。ためしに砥石をあててみたが、研ぐことができないほどの硬さだ。鋼の刃よりもずっと硬い。
 よく調べると、異音の正体はカッティング台紙から剥がれかけたワークが引っかかって起きていることがわかった。カッティング台紙を新しいものに交換し、さらに用紙1枚からマウント4枚を切り出すデザインに変更し、ワークの引っかかりが起きないように配置を整えた。さらにテストカットをしながら微修正を加えてゆく。
 楽に大量にカットできるようデザインを変更し、約300枚のマウントを1日で切り出した。刃先は少しも鈍っていない。気をつけねばならないのは、超硬合金は硬いが、衝撃を受けると欠ける。無理な力は禁物。ご注意を。

カッター刃.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月24日 10:00

姿なき撮影者

 機械とエレクトロニクスが出会い、メカトロニクスという言葉が生まれた。だが、今やそんな言葉は死語になっている。今の世の中の機械で、電気的な制御がされていないものの方が珍しい。カメラもしかり。
 およそ10年前、まだデジタルカメラに今のような勢いがないころの話。アフリカ皆既日食を撮影するため、急きょ中古で購入したのがキヤノンのEOS 10QDだった。このカメラを購入した理由はただ一つ。セットしておけば多重露光とインターバル撮影が自動でできるからだった。当時にしてみれば電子ロボットと呼ぶにふさわしいモノ。
 日食の途中経過を、5分おきに同一のコマ内に多重露光する。既に持っているカメラでも多重露光はできる。フィルム送りを止めて、5分おきに自分でシャッターを切ればいい。だが、正確な時刻に操作するのは大変なのだ。こんな面倒な操作を、10QDは自動でやってくれる。たった一コマを撮影する、それだけのために購入したカメラ。
 実際10QDは素晴らしい働きをした。三脚に据え、設定を確認して定刻通りにスタート。あとは放置。現地のヒトもビックリ。オゥ・・・オゥトマチックキャメラ・・・。興味深げに近づくのでハラハラした。撮影中だよぅ。
 多重露光モードになっているので、シャッターを切った後に巻き上げ音がしない。だからうっかりその存在を忘れかけることも。多重撮りは10QDに任せて、僕はリアリストでステレオ撮影に専念。ホント、集中できた。
 10QDのおかげでいい一コマが撮れた。ただ、惜しかったのはレンズの性能。キヤノンレンズは持っていなかったので、セットの望遠ズームを購入した。これがいけなかった。レンズ内で乱反射した光がゴーストとなって現れたのだ。幸い、トリミングで処理できる程度だったのが不幸中の幸い。以来、僕にズームレンズは禁忌となった。

アフリカ日食連続写真.jpg EOS10Q.jpg
金環日食では出番が・・・ない予定デス。。。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月17日 10:00

セピア反転現像

 印画紙用のセピア調色剤を使うフィルムの反転現像方法がある。硫化剤と漂白剤の2薬で構成されているセピア調色剤、意外に安価に売られている。今回、これを使って反転現像にチャレンジした。そのレポートをお伝えする。
 さて、仕組み。まず普通に現像した後、印画紙の場合とは薬液の順序を逆に使用する。硫化剤で露光されていないハロゲン銀の部分を黒化させる(ポジ像)。先に現像した銀画像部分は硫化されない(はず)。この銀画像はネガ像なので、漂白剤に浴して銀画像をハロゲン銀に戻す。この後の定着でこれを除去する。
 第1回目はイルフォードPANFを日中屋外で撮影し、スーパープロドールで現像した。硫化浴は5分、漂白浴は10分とし、定着に進んだ。期待してタンクを開けると・・・結果はすべての画面が真っ黒。黒というより非常に濃い茶色。硫化銀特有の色味だ。光にかざしても像が出ていない暗黒の世界。早くも暗礁に乗り上げた。
 よく観察すると濃淡がわずかにみられる。失敗の原因は硫化浴だろうと推測した。ネガ像の銀画像は硫化浴で硫化されないはずとしていたが、実際にはここも硫化されてしまったのだろうか。漬けておいた時間が長すぎたのか。
 第2回目はネオパンSSを日中屋外で撮影し、スーパープロドールで現像。硫化浴は時間を短縮して1分30秒。漂白浴は5分とし、定着に進んだ。漂白浴の途中、明光下で観察すると全面真っ黒で、第1回目の失敗と同じ様相だった。だが、定着が進むにつれポジ像が浮かんできた。これで成功と思いきや、全体に画像が濃い。
 硫化浴でネガの銀画像も相当に硫化が進行するのか?これが全体画面の濃度上昇と、抜けが悪い原因だろうか?この処方でも、工夫次第で実用になるだろうか。いい結果が出たらまたお伝えしようと思う。

調色剤.jpg
調色剤のほかにもイロイロ買いましたよ。。。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月10日 10:00

RSDを使ってみた

 普通に現像をしただけでポジ画像が得られるフィルムがある。ローライスライドダイレクトである。あまり知られていないフィルムで、国内では販売されていない。これを海外からの通販で10本購入した。このテスト報告である。
 まず、このフィルムの感度だが、ISO6相当だという。これがけっこう低い。リアリストに装てんした場合、日中晴天の屋外でも1/100sec、絞り4になる。だが、これでも不十分で、さらに3段から4段プラスで露光しなければならないという情報もある。もし4段プラスにしなければならないとなると1/10sec、絞り解放F2.8だ。
 第1回目のテストは、日中屋外で段階露出をしたフィルムをスーパープロドールで現像した。感度が低いため、増感したらどうなるかという実験。19℃9分の現像、後は普通に定着。結果は、一面薄いグレーの画面ばかりで、一部にわずかに像が出ているのみ。これでは使えない。現像時間を長くしても良い結果は得られにくいようである。
 第2回目のテストは、同様に日中屋外で撮影したフィルムをスーパープロドールで20.5℃5分の処理をした。今度は像が出ている。段階露出をした中で、画像が最も濃く出ているのはなんと1/2sec絞り解放2.8のもの。日中屋外、晴天の下でも三脚とレリーズを使わないと撮影ができないというわけである。屋内での使用はムリ。
 画像が出ているとはいえ、暗部の最大濃度が低い。スライド鑑賞するにはちょっと難しい濃さである。濃度を上げるには別の現像液の方がいいのだろうか。この辺りの薬品に関するテクニカルデータが得られていないので何とも言えないが、実用とするにはどうにも苦労の多そうなフィルムである。自分で薬品を調合して現像実験をするしかないか。
 やれやれ、あと8本残っているフィルムでどんな実験をしてみるか。いい結果が出たらまたお伝えしようと思う。

RSD_P.jpg
 ▲よさそうに見えますけどぜんぜんダメです。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月03日 10:00