STEREO CLUB TOKYO

« 2012年05月 | メイン | 2012年07月 »

工業規格

 カメラのストロボ接点で、丸型同心円のソケットがある。デジタル時代になってあまり見かけなくなったが、ちゃんと工業規格で仕様が定められている。JISB7102「カメラの同調発光機構のソケット及びプラグ」として、寸法と公差、その他の要求事項が記されている。JISは日本の工業規格だが、このソケットの仕様のもとはドイツだという。
 こんなふうに国家レベルで規格が定められていると、作る工場がまちまちでも互換性が生まれる。使用者には大きなメリット。年代さえも超越して使用できる。広範囲に使われるネジなんかも規格で作られている。
 汎用工業製品の仕様が明確になっていることは、その国の工業力の維持につながる。だからJISは、日本の工業近代化の早い時期に制定された。ストロボ接点のJISの、最後の方を見てごらんなさい。大学の先生とかカメラメーカー各社の、編纂に携わった方々の名前が列挙されている。メーカー各社の技術者達の知恵が集結されている。
 さて、そんな素晴らしい接点であるが、リアリストには備わっていない。当時のアメリカでは一般的な規格ではなかったのがその理由だろう。リアリストのホットシューは公の規格にはならなかった。カメラ筐体を穿孔して新しい接点を付けることもできるが、それではリアリストのオリジナリティが失われてしまう。だからアダプターで対処するのだ。
 リアリストの「でべそ型」ホットシューに取り付けるアダプターについては以前に紹介した。これは米国の一部の熱心なマニアが自作したものを購入したものだった。自作をするなら自分でもできる。いや、もっといいものが作れる。
 というわけで、中古カメラ店のパーツコーナー(素材市場)を漁る。偶然にも見つけたのがPENTAXのホットシューアダプターP2というもの。これをリアリスト用に改造してみよう。きっといいものができあがるはずである。

シンクロc.jpg
ホットシューアダプター改造の顛末は後々ご紹介いたしましょう。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月28日 10:00

プラネタリウム

 西東京市に大きな電波塔がある。東京タワーとかスカイツリーとは異なり、鉄の骨組みだけの構造だ。あやしい科学のにおいがするようなこの塔は、鉄塔マニアからしたらたまらないものがあるのではないか。遠くからも見えるこの電波塔のすぐ近くには多摩六都科学館があり、世界最大級のプラネタリウムが併設されている。
 東京に引っ越してから、このプラネタリウムを何度か観覧させてもらっている。昔のように解説員が機械を操作しながら説明してくれる。全天周映画も上映プログラムに組み込まれており、なかなか面白かった。
 「面白かった」とういのは、リニューアルオープンのためプラネタリウムと全天周映画がいったん幕を下ろしたのだ。その最後の上映の日に僕は立ち会うことができたのだが。新しく生まれ変わるのはいいことなんだけど、哀愁が漂うのである。なんでかって?それはやはり、デジタル化に伴うフィルムの衰退と無関係ではなかったのだ。
 ここのドームは世界的にも大きな部類に入る。そこに全天周映画を映していたのがウルトラ70という70mmフィルム映写機だ。この映写機は観客席外の部屋の中にあり、ガラス張りで中の様子を見ることができた。超幅広の、超長尺といった感じのフィルムが巨大な水平ターンテーブルに巻き取られてゆく。これはすごい迫力。
 超大画面の映画は観客の視野角を超えて投影され、画面の中に自分がいるという感覚が得られる。かつて、大画面投影には面積の大きい70mmフィルムを使うことが多かった。だが、世界的にデジタルに置き換えられている。
 もうじき、プラネタリウムも全天周映写機も新しくなってオープンするという。リニューアルオープンは7月7日の七夕の日。最新のデジタル技術は僕たちの夢を広げてくれるだろう。さて、星空を眺めに出かけてみますか。

プラネタリウム.jpg

映写室.jpg
まいど、低照度下で撮影したフィルムを取り込むと画面がざらつきます。ご勘弁。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月21日 10:00

菓子の箱

 ステレオスライドマウントは一般的な規格ではなく、ちょうどいい収納箱がない。だから僕は自分で箱を作っている。同じ形、同じ大きさの箱を作り、ラベルを貼って収納している。本棚に敷き詰めてゆくと、ライブラリができあがってゆく。きちんと整理すればアルバムと同じように閲覧できて楽しい。だが最近、これが崩壊し始めている。
 理由は、この箱を作るのがメンドクサイのと、溜まった現像済みフィルムを片っ端からマウントしているので箱に入っていない状態で放置され始めたのだ。これが溜まってくると、だんだん撮った順番が不明瞭になってゆく。
 このままではマズイ。せっかく撮影したものがゴミになってしまう。整理整頓は面倒でもやらねばならぬ。原因は収納箱にある。簡単に作れる箱をデザインし直さねばならない。それに、今まで作っていた箱はマウントが40枚入るように作っていた。リアリスト版なら1ロール29枚になるから半端な大きさだ。これも使いにくい原因である。
 新しい箱は1ロール分だけ入るようにして、折り畳みができるデザインにしよう。箱の作り方というのは調べてみるといろいろな方法がある。厚紙から切り抜くのはクラフトロボを使って機械任せでできるが、糊付けは面倒だから最小限にしたい。だが、折り畳みができる箱というのは複雑な形になったりで、ちょうどいいものがない。
 悩みながらタバコを一服。タバコの箱もすごい工夫が盛り込まれている。お菓子の箱も最近のものは凝っている。昔のキャラメル箱はもっと単純だったよなあ、なんて思い出していたら、それを作ればいいじゃないかとひらめいた。
 そんなわけで、昔食べたグリコキャラメルの箱を思い出しながら専用箱を作ってみた。作りやすさ、使用感ともに上々。マウントサイズに合わせて作ったので、姿形はキャラメルの箱というより羊羹に酷似する、という結果になった。

菓子箱.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月14日 10:00

白ボールマウント

 マウント製造に適した厚紙として、今村紙工で作っているA4サイズ用個別ホルダーが適していると以前に紹介した。それ以降、この他にもいいものがないか継続して調べている。安くて加工しやすく、マウントに適した紙だ。
 ボール紙は手に入りやすいが、これにも種類がある。パルプの叩解が低いものが黄ボール。今村紙工のものはこれに近い。叩解程度が高くなると白ボールになり、6号が厚さ0.4mm近辺になる。白ボールは塗料のコートがなく、表層は漂白パルプを使っている。規格化されたものであり、手に入りやすい。マウントに使えるだろうか。
 クラフトロボで切ると、カッターの入り方が深い。紙の密度が低いためだろう。カット線の重ねを減らしても切り残しが出にくい。切り口のケバ立ちも少なくていい。難点を上げれば紙のコシが若干低い。マウントとして使える程度のコシはあるから、加工のしやすさを考えると十分に選択肢に入る。ではテスト貼り付け。
 PVA糊(ポバール)を刷毛で塗る。すると今までと様子が違う。糊が紙にどんどん吸い込まれてゆくのだ。乾いた表面は艶がなく、糊が表面に露出していない感じだ。ここに霧吹きで水をかけ、折ってラミネーターに通す。出てきたものは接着面に隙間があり、封止されていない。やはり、PVAが紙に吸い込まれて表面に残らなかったのだ。
 何とかヒートシールができるように工夫しなければ紙の束が全て無駄になる。PVAが吸い込まれないようにするには。いろいろ考えて、微粒子を糊に混ぜればいいと考えた。粒子が紙の目に吸い込まれず、糊も留まる。市販墨汁は微細なグラファイトを使っている。PVAに混ぜて実験してみると、バッチリ。いつも通りに封止できた。
 墨汁は黒くて使いにくいから、白い絵具でもいけそう。やってみたらこれもバッチリだった。お試しあれ。

改良糊.jpg
いろいろ試しておりまする。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月07日 10:00