STEREO CLUB TOKYO

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現像用品

 モノクロフィルムの現像なんて、最後にやったのは15年ぐらい前。またやるなんて、ほんとわくわくする。忘れかけていた自家現像。はじめて画像が出たときは感動したもんだ。昔の現像用品は実家の物置の奥深く、どこかわからないところに埋もれている。今さら発掘するなんて。見つからないだろうし、いっそ買ってしまおう。
 そう思って量販店に行ってみたが、ほんの少しの薬品類が置いてあるだけの惨憺たる状況だった。もうだめか。がっかりしていたが、ネット通販ならまだ手に入ることがわかった。マーケットが小っちゃくなっても、ネット販売ならまだ何とか存続できるというわけだ。ほんと、物流も含めて世の中というのはここ数年で大きく変わったよナぁ。
 まずは現像タンク。昔から使い慣れているキングの定番品を使おう。これからどんな薬品を使うかわからないから、プラスチック製の方がいいだろうという理由もある。もちろん、ノーベルト式をチョイスする。暗黒の中でフィルムをセットする作業は、実は僕の得意技なのだ。リール溝にフィルムをセットする感触はまだ手に残っている。
 さて、現像液は増感のできるものがいいかな。フジのパンドール・・・あれ?パンドールがない。スーパープロドールというのに置き換わってしまったのか。次は定着液。フジフィックスの粉末・・・あれ?粉末タイプがない。やれやれ、しばらく離れているうちに、現像用品のラインナップが変わってしまっている。これ、浦島太郎だよなあ。
 作業の流れを思い出しながら、液温計とか計量カップとか。買い物かごの中にいろいろ詰め込んだ。ネット上の仮想「かご」だから重さを感じないが、どんどん膨む合計金額の欄に目が釘付けになる。うはは。これだけの金額ならデジカメが買えるよな。買い物かごの中身を見直して、いくつか削除ボタンで商品棚に戻してあげた。

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投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月26日 10:00

ローライスライドダイレクト

 モノクロ画像のステレオ写真を撮りたい。デジタルなら簡単だろう。普通に撮影した後、画像処理でモノクロに変換すればいい。だけど、フィルムで撮るとなると、これが結構大変なのだ。モノクロのポジフィルムがない。
 かつてアグファからスカーラというフィルムがあった。専用の現像プロセスでモノクロの透過ポジが得られる。これをステレオでビュアー鑑賞するととてもいい。だが今は、フィルム販売と現像は日本国内でされていない。
 フィルムの状態でモノクロポジ像にするのは需要として本当に限られたものになるのだろう。スライドにしてステレオでビュアー鑑賞するなんていうのはごくごく特殊なもの。ポジのモノクロフィルムなんて普通の人は使わないのだ。
 それでもモノクロフィルムを反転現像してポジ像を得る方法は昔からある。陰画として生じた銀を溶解するところがカナメなのだが、強力な酸化剤を使う。昔は薬局で買えたらしい過マンガン酸カリウム、これが厄介なのだ。
 この薬品、近年になって特定麻薬向精神薬原料に指定され、簡単に買えるものではなくなった。そうでなくとも廃液の処理はイイカゲンにはできないし、あまり使いたくないクスリ。昔は消毒液を作るのに使ったらしいけど。
 その他にも比較的安全な酸化剤を使う方法などもあるらしいが、どうにも二の足を踏んでしまう。そんなとき、普通現像でポジ像が得られるフィルムを思い出した。ローライスライドダイレクト。円高進行中だから海外から直接購入したらどうか。ネットで調べると、このフィルムをプロデュースしているドイツ・MACO社の通販サイトがある。・・・ポチッ。
 感度がISO10程度と低く、実用感度はさらにその下と聞くが・・・とりあえず10本分の注文ボタンを押した。1週間ほどで現物が届いたが、はてさて。乞う御期待でございます。

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投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月19日 10:00

北へ還ると

 北海道料理といえばジンギスカン鍋だ。今ではどこでも珍しいものではなくなった感があるが、昔は北海道でしか味わえなかった。それに加え、ヒツジの肉を食す習慣がない地方では、どんな味なのか見当がつかなかった。
 僕が就職して、初めて赴任したのが北海道の某都市。村上春樹氏のノルウェイの森が大ヒットした頃の話である。赴任前にその他の短編集も読みながら北海道に渡ったのを思い出す。小説の中で、北海道が牧羊を中心にして開拓を進めた歴史を知ったのだった。ジンギスカン鍋という食べ物が、牧羊の歴史とも深くつながっている。
 僕が初めてジンギスカン鍋に出会ったのは花見の席だった。北海道の桜の季節は本州よりずっと遅く、散るのも早い。短い期間で花見をセットしなければならないから、週末にそろそろというような悠長なことは言ってられない。
 桜が一気に満開になり、天気の良いある日。年配社員が「今日だな」とつぶやいた日が花見なのだ。午前中に業者に電話をし、夕刻には丘の桜の木の下に宴席が並ぶ。プロパンガスと本格的なコンロ、ジンギスカンの専用鍋と簡単なテーブルが「今日やるから」の一言で揃うのだ。後から肉屋が食材を、酒屋がビールを軽トラで運んできた。
 初めて食べたジンギスカン鍋は旨かった。夜桜を眺めながら、明日も仕事だということを忘れて宴は続いた。それ以来、桜の季節になるとあの宴を思い出す。あんなに楽しい宴はそれまでの経験にはないものだった。
 今でも北海道には仕事で行くことがあるが、客先が一緒だとヒツジ料理を選ぶのを躊躇してしまう。だからジンギスカン鍋を選ぶのは一人のとき。久しぶりだと焼き方を忘れている。焼き方には作法があるのだ。
 一人で鍋をつつきながら、あの満開の桜の姿を思い出す。先輩方はもう定年されている。お元気だろうか。

ジンギスカン.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月12日 10:00

解像度

 骨董市とか、フリーマーケット。ガラクタばっかり、ギリギリごみじゃないかという場合もあるけど、こういうものを見てまわるのも楽しい。たまに掘り出し物もあると聞く。たとえば、壊れたライツミノルタを5百円で買ってきて、電池を入れたら動いた、とか。こんな話を聞くと、お宝があるんじゃないかと期待してしまう。
 でも、実際にはカメラ関係はありふれたジャンクばかり。珍しいものを安く手に入れるチャンスは、砂丘の中からゴマの一粒を探すようなものだ。そんなガラクタの中、学校で使われていたと思われる埃まみれの顕微鏡があった。
 箱はぼろぼろ、埃だらけ。それでもパーツは全部揃っていて、手を入れれば十分使えそう。オリンパスの顕微鏡を千円で買ってきた。珍しいものではないし、汚れていたから5百円でも良かったかもしれない。
 持ち帰ってから箱は捨て、本体とレンズをクリーニングしたら十分使えるものになった。顕微鏡の世界というのも面白い。小学生の時、小さな顕微鏡でめだかの水槽に棲む微生物たちを夢中で観察した日々を思い出す。
 ここでふと、フィルムを観察したら面白いのではないかと思いつく。フィルムをセットし、フォーカスを合わすと粒子が良く見える。倍率をやや下げると、砂で描いたようなザラザラな格子が見えてきた。ビルの窓だ。元の画像を確認して驚いた。そのビルは、遠景の中に埋もれていてかなり小さい。ステレオビュアーで拡大した程度では、そこにビルがあるのかさえわからない。なのに、フィルムには窓の形がちゃんと記録されているのだ。なんという解像度だろう。
 リアリストの解像度は素晴らしい、と言いたいのではない。引き伸ばしに使わず、ビュアーで見るだけならレンズの分解能はそれほど必要ではない。それより、発色とかコントラスト、描写のバランスの方が重要だ、と気づいた。

顕微鏡.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月05日 10:00