STEREO CLUB TOKYO

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①ドイツへの旅

 カメラ王国といえばどの国か。それはドイツ。アンケートをとったら、日本を抜いてダントツの一位だった、そんな結果が出そうである。もっとも、それはアンケート対象がライカ大好き、ツアイス大好きなフィルム派の人々だった、ということかもしれない。今の時代、カメラ王国はどこか。本当に王様がいるわけではないのだが。
 ヨーロッパ統一を目指しながらも、大戦終結時に東西に分離し、カメラメーカも東西に分割されてしまったという悲しい歴史を持つドイツ。勤勉な国民、頑固な職人気質と言われるドイツ。さて、どんな国なんだろう。
 一度は行ってみたいと思っていた折、とある用事でドイツの首都、ベルリンを訪れた。当然、用事の合間にリアリストで撮影だ。カメラセットを持って、ドイツの翼ルフトハンザに乗った。ちなみに、ルフトハンザが日本の空港に乗り入れを開始したのが昭和36年。東西ドイツの間に、ベルリンの壁が建築され始めたのもこの年である。
 今回は、郊外の空港からハンブルグを経由する列車で首都に向かう。車窓には広大な農場がどこまでも広がっている。ところどころ、風力発電のタワーが林立している。リアリストのシャッタースピードを上げ、この風景を撮る。
 列車がベルリンに近づいてゆくと、広大な農場の風景は住宅が並ぶ風景に変わって行き、大きな都市が眼下に広がる。駅に降り立つと、街のにおいがする。しかしそれは、東京のあちこちで見られる風景とはずいぶんと違うようだ。
 僕の世代だと「ドイツの首都はどこ?」というクイズがあったことを思い出す。ベルリンと答えるとバツ。当時、西ドイツの首都はボンであり、間違えやすいということでクイズになったのだ。統一後の今は、ベルリンが首都である。
 さて、リアリストをお供に、この街を散歩しよう。ちなみにお供のリアリストのレンズはドイツ生まれである。(つづく)

ドイツ車窓.jpg

ベルリン駅.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月26日 10:00

ひとりぼっちのフィルム人

 デジタル・ステレオカメラが世の中に登場したと同時期に、フィルム・ステレオカメラの世界ではマウント台紙の供給がストップした。チェスで言うなら、チェック・メイト。王手詰みである。もはやステレオ界でもデジタルが主流。
 それでもebayのステレオカメラカテゴリを監視すると、まだまだフィルムカメラが出品されている。過去に比べて、これはと思うようなものは少なくなってきた。だが値段はだいぶ安くなってきた。それでも珍しいものが出ると、そこそこの入札があって賑わっている。かの有名なDr.T氏も、相変わらず売り手としてご活躍のようである。
 Dr.T氏は、ギリシャ系の米国人で、ステレオリアリストの本を書いたり、各地のステレオイベントに登場したりと、ステレオ写真の世界ではカリスマ的な存在だ。彼とは何度も、ebayで取引をさせてもらった。
 そんな彼と最近になってまたebayで取引をした時のこと。メールで「僕はまだフィルムカメラを使っている。アナタから購入したものは実用に供するだろう。ありがとう」と彼に送ると、「ワタシは既にデジタルに移行した。フィルムの物品を処分している」との返事。なんとまあ。Dr.Tもフィルムをやめてしまったのか。さびすぃい~。
 処分するならもっと安くせんかい。とも思ったけどね。カリスマはまだまだフィルム派のはずという期待は崩れた。まあ、そんなわけで、フィルムのステレオカメラ「だけ」を使い続けることにこだわっているのは、世界広しといえども僕だけのような気がしてきました。えっ?そうでもない?あなたも・・・もしや・・・ああ、そうですか。デジタルですか。
 僕の中では、王手はされてもまだ詰んではいない。だが、逃げ回っているのでもない。いつか、フィルムにしかできない大技を編み出して、デジタル界に大手を突きつけたい。そんなことを・・・思ってはおりません。ホントに。

DrT.jpg
Dr.Tのリアリストガイドブック。1999年初版本でございます。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月19日 10:00 | コメント (2)

いにしえの露出計

 一時、露出計の針の振れる姿が愛おしくて、小さな彼らを買い求めた時期がある。街の中古カメラ店に立ち寄っては、小さな彼らが棚の隅に隠れていないか探す。何かの下に隠れているのではないかと、ジャンクのかごを掘って探す。
 まるで森に入ってカブト虫やらクワガタ虫を探しているようなものだ。見つけると手に取らせてもらって、昆虫の複眼のような形をしている受光部を観察し、触覚のように振れる針を見つめる。ボディは黒光りのするベークライトだったり、コガネムシのように輝く梨地のクロムメッキだったりする。明るい方に向けると、生き物のように針が動き出す。
 50年ほど前に生まれた彼らは、セレン光電池を動力にしている。光が当たると電気が起きるものだ。いまでは百円で買える電卓にも太陽電池が使われているが、セレン光電池は太陽電池の先駆けだ。シリコンの太陽電池が主流になった現代では、セレン光電池はほとんど作られていない。劣化して起電力が弱くなったものを復活させる術は乏しい。
 それでも、弱々しく振れる針であっても、いつか使えるようにできるかもしれないという思いでいくつも買った。もしかしたら、まだ使えるセレン光電池と交換すれば、また元気に動き出すかもしれない。
 でも、フィルムの感度設定も、シャッター速度の表示もいにしえのもの。また動くようになっても、まるで古文書を読み解くようにして使わなければならないのかもしれない。それでも、この小さな奴等がカメラのシューに乗っている、それだけでも楽しいじゃないか。昆虫の複眼のような受光部が光を捕らえている。そんな姿が愛おしいのだ。
 僕の書棚の引き出しには、彼らが春を待つようにかたまりあって冬眠している。まるでテントウムシのように。いつか彼らを日のあたるところで使ってやりたい。せっかく、中古カメラ店の標本箱から出してやったのだから。

露出計.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月12日 10:00 | コメント (2)

ストロボが発光しない!

 リアリストにストロボを付けて撮影していたある日。ストロボが発光しなくなった。ストロボの故障や、電池が消耗したのでもない。こういうときは大体において、カメラとストロボをつなぐコードの接触が悪くなっている。電気というのは目に見えないところが厄介だ。繋がっているようで繋がっていない。そんな状況を眼で見て分かるならどんなに楽なことか。コードを抜いたり挿したり。何回やってもストロボが発光しない。どこを見てもおかしなところがない。
 こういうときはカメラの内部を疑ってみる。リアリストのトリガー回路は簡単だ。レンズボードを外せばシンクロ接点とコードが見えるから異常のチェックは簡単。コードが外れているのかもしれない、ということでネジを回す。
 あけてビックリ。なんと、コンタクト部分にあるはずの接点部品が取れてなくなっているではないか。銅合金の板バネの先端に、小さなでっぱりが付いているはずなのに。これがない。丸い穴だけになっている。これではストロボが発光しないわけだ。この部品、銀でできているらしい。接点の導通不良を防ぐため、あえてコストのかかる部品を採用していたらしいのだ。さすがは部品の手抜きをしないモノづくり。立派である。だが、なくなったものをどうやって補おうか。
 途方にくれていたが、もしかしたらまだカメラの内部に転がっているんじゃないか。そう思って丹念に探したら出てきた。銀の小さなヤツが、コロリと。よかった。新しく銀で作るなんてとてもできそうになかったからね。だが、これを再び取り付けるのにどうやるかかなり悩んだ。オリジナルはカシメで取り付けているらしいが、うまい具合に再カシメできるとは思えない。絶縁体である接着剤を使ったのでは意味がない。導電性のある接着剤なんてあるのか。ハンダでくっつくのか。。。
 悩んだ末、絶縁しないように、エポキシ接着剤で部品の周囲を囲むようにして接着した。完全復活。よかったよかった。

コンタクト.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月05日 10:00