STEREO CLUB TOKYO

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鉄塔

 世の中には、少数派の趣味というのが結構ある。まあ、一口に何々が趣味といっても「その中の特にこれが」なんていうのがあるので、人の数だけ趣味がある。写真やカメラの趣味の中でも、特にステレオが好きなんていうのも少数派に入るのだろう。そんな少数派の趣味がネットで紹介されるので、驚いたり、納得したりする。
 ああ、やっぱり。と思ったのが鉄塔マニア。まあ、少数派の趣味に対して何でも「マニア」を付けて呼称するのもどうかと思うのだけど。でも、やっぱりいるんだなぁ、鉄塔が好きな人。僕も、鉄塔がずらっと並んでいる姿を見るのはちょっと面白いかななんて思ったりする。大電力を運んでいるという、我々の文明を支えている根幹の一つだと思うと、もっと敬うべきかな、と思ったりもする。大きさから来る迫力と、科学のにおいがなんとなく僕の感覚を揺さぶるのだ。
 とはいっても、わざわざ珍しい鉄塔を見に行ったり、機能や構造を調べるわけでもない。たまたま何かのきっかけで、鉄塔の近くに行ったときには見上げてしまう、という程度の好きさ加減だ。電線を支えている構造なんかを観察したりする。特に、いくつも重ねた絶縁用の碍子が、なんだか昔のSF映画に出てくる装置のようでオモシロイのだ。
 近所の山に登り、何か面白いものはないかとリアリストを片手に散策していた時のこと。開けた場所に鉄塔が現る。山の尾根に鉄塔が並んでいて、遠くから電力を運んでいる。遠くに見える鉄塔と電線でつながっている様子がオモシロイ。早速、ステレオ撮影。しばらくすると、遠くからヘリコプターが飛んできて、なぜだか僕の方に近づいてくる。
 まさか、鉄塔にいたずらする者を見張っているのか。しばらくしてどこかに飛んでいった。過去には鉄塔のボルトが外された事件もあった。鉄塔にいたずらなどしてはいけない。私たちの生活を支える電力を運んでいるのだから。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月29日 10:00

日本最古の湯

 僕は温泉が好きだ。日本に住んでいてよかったと思うことの一つが、日本各地に様々な泉質の温泉があるということだ。どこかに旅行に行くときも、地図を広げて近くに温泉マークがないかと探す。温泉があるというだけで、入浴ができないという状況もあるのだが。やはり、古くから温泉街として栄えてきた場所というのが歴史もあって面白いものだ。
 有名な温泉街は、ネットでも書籍でも、ちょっと調べればいろいろ知ることができる。以前から気になっていたのが、四国・松山市にある道後温泉だ。道後温泉本館という入浴施設は歴史のある建物で、ガイドブックで見る写真からも趣のある雰囲気が伝わってくる。過去には皇族の方々が入浴されたとも聞く。これは一度、行ってみるべきだろう。
 とある夏の終わり。松山市へ広島港からフェリーに乗る。車で橋を渡って行くこともできるが、やっぱり船は楽である。昼寝をしながらのんびり。海を眺めてのんびり。波の少ない瀬戸内海は、大きく船が揺れることもなく、快適。
 道後温泉には市内から路面電車に乗り、終点で降りる。道後温泉本館はすぐ近く。中に入ると、あちこちのつくりの古い感じがたまらない。湯船は石造りで、癖のない単純泉が溢れている。ここの湯は沸かさずとも熱い湯が地中から出ているのだ。大地のエネルギーが湯を介して体に染み渡る。そんなイメージを膨らませながらゆっくりと浸かる。
 すっかり温まった後、上の階に行き、広い座敷でくつろいだ。お茶とお菓子をもらい、至福のときを過ごす。外は夕立だろう、遠雷が聞こえてくる。雨があがるまで、この趣のある建物を楽しませてもらう。あたりを見渡すだけで面白い。皇族の方々が使われた部屋や湯船も見学させてもらった。階段を上ったり降りたり、家屋の作り自体も面白い。古いけど、手入れのされた温かみのある空間がここにはある。日本に住んでいてよかったと思う、もう一つのことである。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月22日 10:00

南の海岸

 景勝地と呼ばれる場所に行くと、日常にはない不思議な風景、感動的な風景に出会えるのだが、立体写真として面白い写真にするのは難しかったりする。それは大体が遠景で、普通のステレオベースのステレオカメラで撮ったのでは立体感が出ないのだ。高台から見るパノラマ的な風景なんていうのは、リアリストが最も不得意とする被写体だ。
 それでも、なるべく立体写真として面白いように構図を考えるわけである。例えば、被写体が遠景だったとする。ステレオカメラで普通に撮っても平面的な仕上がりになる。かといってステレオベースを大きくするにも限度があるし、なによりスナップとして撮るには無理がある。そんなわけで、近くにある雑草を視野に取り込んでみたりとかするわけ。でも、安易な工夫というのはダメだよねぇ。仕上がりを見てがっかりする。当たり前だ。手を抜いたのだから。さて。
 九州の東側、宮崎県の日南海岸はきれいな海で知られている。とある夏の日。海岸沿いを車で走ると、切り立った断崖の下に澄んだ海が広がっている。その青さといったら、濁りのない青なのである。陽の光りを反射させ、海岸の深さに応じて色合いが変化して美しい。それに、ここの海岸は普通の海岸ではないのだ。鬼の洗濯岩と呼ばれている。
 太古の地層が浸食され、隆起したことで巨大な洗濯板のような形になっている。見渡す限りの海岸一面がこのような風景だ。子供向けの百科事典では、地層や地面の沈降、隆起を説明する事例としてよく紹介される。僕も子供のころに図鑑で見た「鬼の洗濯岩」は深く記憶に残っていた。でも、宮崎県にあるというのは忘れていたけどね。
 車の窓から見える風景だけでは満足できない。青島を散歩しながら潮の引いた海岸を散歩する。日差しは強いが気持ちのよい日だった。波の音を聞きながら、この不思議な地形を歩く。潮溜まりには小さな魚が泳いでいた。

撮影には画面サイズを拡張改造したステレオ・リアリストを使っています。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月15日 10:00

リバーサルフィルム

 コダックが経営危機に陥り、とうとうリバーサルフィルムの生産を断念したという残念なニュースはまだ記憶に新しい。一般向けエリートクロームがまず先に入手できなくなり、エクタクロームも最後の生産分をみんなで取り合うという悲惨な状況になってしまった。後はフジフイルムだけが頼り。しばらく縁遠かったベルビアとかをまた使ってみようか。
 でも待てよ。世界にはまだフィルムメーカーがあるではないか。日本の店頭にはない、外国では普通に流通しているものがあるのでは。そう思ってネット検索するが、カラーリバーサルを生産しているメーカーがない。驚いたね。聞いたことのないブランド名が並んでいたりもするが、モノクロ、カラーネガはあってもカラーリバーサルがない。中国製なら何かあると予想したのだがこれもダメ。そんな中で唯一、ローライブランドのデジベースCR200を見つけた。
 見つけた先はマコダイレクトの通販。先のローライ・スライドダイレクトの購入と同じところ。ドイツの会社で、支払いにpaypalが使える。フィルムは135-36枚撮り2本組で価格もまあまあ。現品が到着して確認すると、なんだかフィルムベースが薄い気がする。さて、どんな写り方をするのだろう。デイライトタイプ、ISO200である。早速使ってみよう。
 ステレオリアリスト・エクタ―に装てんし、感度が高めでもあることから日が暮れた後の祭りの縁日を散策する。こういった場所は白熱電球が多用されていて、ストロボを併用しても発色は黄色に偏る。結果としては最近のフィルムに比べれば発色が地味。だが黄色に偏りすぎず、夜祭の雰囲気をよく再現してくれていると思う。
 次の日、曇天日中の屋外で撮影した。これはなんともカラーバランスが悪い。地味なうえに緑に偏っている。これは使い方を選ぶね。癖をつかめば面白いかもしれない。因みに現像は普通にE-6処理で受け付けてくれた。


地下鉄の車両基地にて。曇天下で撮影。実際にはこれよりも緑に偏っています。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月08日 10:00

落款

 ステレオマウントに是非してほしいこと。それはオモテ面へのスタンプなのだ。なんでかっていうと、これがないとウラオモテ・ウエシタがわかりにくいから。何か目印があるとイイ。そんなわけで、僕はオリジナルのスタンプを作って押している。スタンプを自作するのって結構おもしろい。だが、世の中の自作スタンプ事情は昔とは変わってきている。
 僕が愛用しているのは三菱鉛筆の「すたんぷりん」というキット。文字だけでなく図案も正確に転写できる。スタンプを自在に作ることができるのだ。残念なのは自作スタンプというのはブームに乗らなかったんだな。数年前にこのキットは販売終了になっている。以来、この手のスタンプキットは新しいものが出ておらず、三葉虫のように絶滅した。
 「すたんぷりん」のいいところはどんな図案もスタンプ化できるとこ。欠点は浸透インクを使った孔版印なので、インクの充填に手間がかかる。もっと簡単なスタンプはないかなと探すと、ゴム活字をつかう凸版キットがあった。数字記号とアルファベットの文字だけしか使えないが、ゴム印と同じように使えるというのは魅力だ。価格は約2千円。
 早速使ってみると、コレ、いいではないか。”STEREO Realist”の文字を並べるだけでもサマになる。このキットを製造しているのは台湾の三勝文具という会社。シャイニースタンプで検索すれば見つかるはず。いわゆるはんこ方式は単純だけど面倒さがない。インクの色を変えるのも簡単だ。版面をよく拭いて別色のインクパッドを使えばいい。
 もう一つ。よく撮れたカットには落款を併せて押すことにした。落款印は市販もされているが、僕はろう石のような印材を買ってきて自分で彫ることにした。実体顕微鏡を覗きながら精密ドライバーの先で削る。そんなのでも仕上がりには満足している。朱肉は乾きにくいので色味を似せたインクを使うことにした。こういう遊びが撮るのを楽しくする。


投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月01日 10:00