STEREO CLUB TOKYO

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不死身のスタデラ

 ステレオリアリストの無二の友、スタジオデラックスが壊れてしまった。カバンの中に入れておいたら、受光部の丸いドームが無くなっている。丸いドームは外れるので、ここだけが取れたのなら問題ないのだが。なんと、カバンから取り出したらヘッドの形が変わってしまっている。部品がバラバラ。これは困った。どうしよう。
 カバンの中から外れた部品を拾い出す。カバンの中だから良かったようなものの、部品を紛失したら元には戻らない。よく見ると、受光部の丸いドームとスライド板を挟むプラスチック部品が、本体に取り付けるナット部品ごと取れてしまっている。このナット部品は金属製で、プラスチックを成形するときに金型にセットして埋め込み成形されている。パイプのように高さがあるので応力に堪えきれず、埋め込みから外れてしまうのだ。
 まあ、こんなものはエポキシ系の接着剤を使えば大丈夫。そう思って部品を見ると、既に接着剤で取り付けた跡がある。ああ、思い出した。以前にもここが壊れ、自分でエポキシ接着剤を使って直したのだった。
 もう一度同じ方法で修理してもいいのだろうか。同じ方法ではまた壊れるかもしれない。接着剤は接合する素材や、接合するときの条件で強度や耐久性が変わってしまうので扱いにくいところがある。それでも、他に方法がないので今回もエポキシ系接着剤で取り付けることにする。今度はもっといい結果になるようにしよう。
接合する部分を徹底的にクリーニングすることにした。ナット部品は真鍮だから紙やすりで参加した表面を落とす。プラスチック部品は実体顕微鏡で観察すると、前の接着剤が接していた部分は変質している。ここを丁寧にそぎ落とす。以前より接着剤を肉盛にし、その分、組立で干渉する相手部品を削る。これで大丈夫なはず。


壊れちゃった・・・

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月30日 10:00 | コメント (2)

ケチ技・EX

 フィルムの撮影枚数を増やす裏技として、カメラに装てんするときに感光してしまう部分を有効に使う方法をご紹介した。しかしこの方法は、感光しないよう暗闇の中でフィルムを装てんするので面倒だ。ダークバッグの中で汗ばむ手で探りながら、繊細な作業をしなければならない。これは苦行だ。改善しなければ。
 だいたい、ダークバッグを使わねばならないというのがこの技の難点だ。屋外でも、フィルム交換をするたびダークバッグを広げなければならないなんてありえない。明るいところでもできる技にしなければならない。
 えーと。パトローネからフィルムを引き出さずに装てんできるようにすればいいわけだ。それなら、フィルムのベロを延長してやればいいじゃないか。適当な厚紙で短冊を作り、セロテープでつなげればベロの延長になる。紙で作るのもなんだから、いらないクリアファイルを切り裂いてポリプロピレンの短冊を作ってみた。幅はフィルムより細めにし、カメラのスプロケットギアに噛むパフォーレーション列を避けて貼り付けた。
 本来なら、カメラのスプロケットにフィルムがセットされたのを確認してから裏蓋を閉める。だけどこの技はパトローネから極力、フィルムを引き出さないのが重要ポイント。裏蓋を閉めてから、巻き上げノブを慎重に巻いて、カメラの中でスプロケットにフィルムを合致させるのだ。何も難しいことはない。普通に巻き上げればフィルムはちゃんとセットされる。やってみたら意外と簡単なので皆さんも試してみたらいい。
 注意しなければならないのは、セットするときのスプロケットギアの位置によってはフィルムの頭出しがうまく合わずに無駄がでる。このあたりはテスト用のフィルムを使って条件出しをしてください。


実際にこれで撮影しています。


見やすいように青い紙でサンプルを作ってみました。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月23日 10:00

ケチ技

 カメラにフィルムを装てんする。言葉にすると短いけれど、その手順は人それぞれに特徴がある。フィルムのベロを先にスプールに差し込む人、パトローネをはじめに所定の位置にセットするのがおきまりの人。どちらが正しいというのでもないけどね。リアリストはスプロケット歯車に押さえの金具があるから、もうひと手間かかる。
 フィルムの装てんは慣れてしまえばどうということはないのだけれど、昔から失敗につながる鬼門だった。撮影を終えたと思ったら、フィルムがスプールから外れていた、なんてね。こんな失敗は本当にイヤだ。
 ちゃんとフィルムが送られているかは、巻き上げノブの動きでわかるのだけどね。カメラメーカーも装てんしやすいスプールにしたり、送りのインジケーターを付けたりと工夫をしていた。最後にはモーター駆動になり、ベロを所定のところにセットすれば、あとは機械が全部やってくれるようになった。ありがたいことです。
 便利なのは大歓迎ではありますが、機械まかせだとちょっとした工夫ができない。新しいフィルムはパトローネの中に入っている部分は感光していない。これを装てんのために引き出すから感光してしまうので、蓋を閉めたら2回、空送りをしなければならない。もったいない。暗闇の中で装てんし、ここも使ってしまおう。現像所では規定枚数以上のコマは保障しないとしているが実際にはこうして撮影枚数をかせぐことができる。
 フルオートのカメラではないから使える技。押入れとか、ダークバッグを使って手探りでフィルムをセットする。ただでさえ失敗しやすいのに手探り作業。危うい技だが、僕はこれが苦にならない。めんどくさいからあまりやりませんけどね。はじめてやるときは、じっとカメラの内部を見つめ、構造と寸法を記憶に焼き付けてからにしよう。


ダークバッグの中で手探り・・・めんどくさい・・・

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月16日 10:00 | コメント (2)

2013年の挑戦

 ウチの冷蔵庫に長年保管しているフィルムがある。アグファから発売されていたモノクロポジ専用のフィルムでスカーラ200xという。現像処理がスカーラ専用で、特定のラボに送って処理するものだった。現像に時間もお金もかかったけど面白かった。モノクロで見るポジスライドはとても新鮮な印象があったのだ。
 スライドビュアーで立体写真を鑑賞する方法で、モノクロのスライドが作れるフィルムはとても都合が良い。しかし楽しんでいたのもつかの間、突然販売が終了し、専用の現像処理も受付を終了してしまった。このフィルムは5本組みで販売されていたので、使いかけの4本が行き場のないまま冷蔵庫に取り残された。
 元の箱を処分していたので有効期限がわからない。だが、最後に撮影したものから推定すると購入から既に8年が経過している。さて、8年も前のフィルムが使用に耐えられるだろうか。興味深いところだ。
 硫化剤を使って画像反転し、ポジ像を得る自家現像でこのフィルムが使えるかもしれない。今までフォマパン100でよい結果が出ている処方をスカーラ200xで試してみよう。4本しか残っていない貴重なフィルムから1本をステレオリアリストに装てんする。感度低下があるかもしれないが、ISO200に設定して撮影した。
 現像条件はいつも良好な結果がでているフォマパン100の処理と同じにしてみた。定着終了後にタンクをあけると、フィルムが黒く沈んでいるように見えた。やはりダメか・・・だが。光にかざしてみると、アンダーながらポジ像が出ているではないか。コマ番号が薄い・・・もう少し現像を押せば使える。
 思いがけない結果が出て、残りの3本をどう使おうか悩んでいる。本当にフィルムの世界は面白い。

反転現像したフィルムはスキャナーでうまく読み取れない状態でしたので・・・あしからず。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月09日 10:00

耐久性考察

 ステレオリアリストをはじめ、1950年近辺に製作されたカメラが21世紀の現代においてもなお、十分に実用できるコンディションであることは驚くべきことである。機械構造物が60年近くの間、部品の損耗、劣化などが少なく、使用する上で影響するレベルに達しない、というのは何かヒミツがあるはずだ。
 リアリストを分解し細部を観察するとわかるのだが、機械系部品は全て金属でできている。極僅か、フラッシュの回路の絶縁として樹脂が使用されているのを認めるのみ。これが脅威の耐久性のヒミツだろう。
 金属だって、長期のうち酸化し、錆びが出る。だが、精錬された品質の良い金属を使い、表面を磨いた部品というのは錆びにくい。使い方や保管方法を工夫すれば、さびが原因で作動不良になることは少ない。
 もう一つの弱点は金属疲労だ。破壊に至らない弱い力でも、繰り返し作用すると金属結晶の粒界面に亀裂が入り、これが進展して破壊に至る。これも作用する力の大きさと想定回数から、十分に耐えられる材質を選定と部品寸法を出し、形状を製造図面に反映させる。このあたりが設計にかかわる技術者の腕の見せ所だ。
 耐久性で問題になるのはやはり、樹脂類といった経年変化で劣化するもの。繰り返しの応力だけでなく、酸化や重合した分子の分解、再架橋化により、軟化、ひび割れ、硬化が起きる。昔のカメラでモルトプレーンがベタベタになるのも、樹脂の酸化による劣化現象だ。こうなると交換する以外に機能回復はできない。
 もっと困るのが電子部品。電解コンデンサーなども劣化するし、基盤が錆などで断線し、機能不良につながるケースも多い。こんな素材が無かった‘50年代のカメラは、そのおかげで機能を保てている。皮肉なものである。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月02日 10:00