STEREO CLUB TOKYO

スタジオデラックス(改)

 リアリストの無二の友、露出計のスタジオデラックスは頼りになるヤツだ。リアリスト同様、電池を使わずいつでも動作する。この「いつでも」というのがイイ。電池が消耗して撮影できないこともないし、電池が液漏れして接点が腐食することもない。だがあるとき内部から、部品が動く変な音がするのだ。
 このままではまずい。直感的にそう感じた。このままにしておくと動かなくなる。普通ならメーカーに修理に出すのだろう。僕は自分でネジを回し始める。もちろん、専門家に頼んだほうが安心できるに決まっている。本来の性能が出るように修理し、それを保証してもらえるからだ。
 僕は何でも自分でネジを回すわけではないが、品質保証ができないものなら、自分で直したって同じじゃないか、なんて思っている。中古のボロいスタジオデラックスは自分でネジを回した。でも、ボロでもセコニックは修理後に品質保証をしてくれるかもしれない。それを確認せずにネジを回したのは、やっぱり中身を見たかったんだな。
 昔の機械は手順どおりネジを回せば素直に分解できる。最近のヤツは、ネジを回しただけじゃだめで、プラスチックの爪を無理やり外さなければ分解できない。そんなことを考えながら、いくつかのネジを回すと、露出計の心臓部があらわになった。結構単純な構造なんだなあ、と感心する。変な音がする原因は内部のネジが緩んでいた。
 修理は簡単。でも、どうせ分解したのだからと、ちょっと手を加えたくなった。常用のフィルムとシャッタースピードで絞り値が直読できるように、新しい数値を付け加えた。プリンターで小さく数字を印刷し、糊で貼り付ける。たったこれだけで、快適に測定ができるようになった。マネしてもいいけど、セコニックの保証は得られない。

スタジオDX.jpg

四角枠の数字はISO100でH測光1/100sec、丸枠の数字は同じくL測光1/50secのときの絞り値

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月27日 10:00

もう一つの窓

 リアリストをヨーロピアンフォーマットに改造したときのこと。画面の横幅を広げたのだから、ファインダーもそれに合わせて広げた。だが、マスクを切り広げて視野を広げても、視野の四隅が欠けてしまう。それなら、外付けのファインダーを取り付けてみようと考えた。リアリストのホットシューにぴったり合うファインダーだ。
 ところでこのホットシュー、真ん中にシンクロ接点が飛び出している。邪魔に思う人もいるだろうが、この方は理にかなっている。もともとシューというのはフラッシュ用ではなく、ファインダーや距離計を取り付けるためのものだ。ここにフラッシュも付くようにして電気接点を設けるとき、カメラ側は平坦にしてフラッシュ側を出っ張らせた。これだと、フラッシュを取り付けるときに、間違ってフラッシュ側の接点が短絡してしまうことがある。取り外すときも同じ。
 リアリストのシューはフラッシュ専用として設計され、短絡しにくいオリジナル接点を用意したのだと僕は推理している。熱を発する閃光電球を使うのだから、安全面では出べそシューの方が優れている。
 さて話はファインダーに戻り、この出べそが邪魔しない外付けファインダーをebeyで探した。欲しいときにはあるものだ。どういうわけか、横幅が寸詰まりに作られたファインダーを見つけた。何かのカメラ専用のものだろう。パララックス補正機構もある。画角もちょうどよく、ヨーロピアンフォーマットにぴったりと思われる。ドイツ製。
 早速落札し、ヨーロピアンに改造したリアリストに取り付けた。覗いてみると、んん??こんどはリアリストのレンズカバーが視野を邪魔するではないか。取り付けた感じはとてもいいだけに残念。レンズカバーの跳ね上げ角度を制限するようにすればだいぶ改善するのだが。やっぱり出っ張るファインダーが邪魔なので、結局外して使っている。

ファインダーON.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月13日 10:00

フラッシュガンの改造(おまけ編)

 先のフラッシュガン改造の話を書くときに、手持ちのハネウェル製フラッシュを取り出していじくっていた。このフラッシュは折りたたんだ反射傘を展開するとパラボラアンテナのような姿になってカッコイイ。で、これが上向きに角度を自由に変えることができるのでさらにカッコイイ。アメリカ人のデザイナーもなかなかやるではないかと思っていたら、MADE IN JAPANと表記してある。なーんだ。わが国のデザイナーの手によるものか。パラボラの傘がゴジラの映画に登場するメーサー光線車を思わせるが、その姿はやっぱり日本人が作り出したのだ。
 妙な納得をしながら、閃光電球を差し込んではイジェクトボタンで排出したりと遊んでいた。ストロボ回路を組み込んだらやっぱり面白いかなーなんて、懲りずにまた考え始めていた。電池室をあけると四角い15Vの電池とキャパシタ(いわゆるコンデンサー)が入っている。
 四角い電池をよく見ると、これも国産の日立製。マクセルの古い商標が書かれている。この電池はW10という規格で、この手の積層電池は既に作られていないらしい。製造年月日も使用期限も書かれていないが既に20年は経っているだろう。キャパシタだって機能しているとは思えない。既に死んでいる機械なのだ。
 いじっているうちに、緑色の発光ボタンを押してみたくなって何気に触ったら、セットしていた閃光電球が発光した!まさか起動するとは思っていなかった。左手で電球を押さえていたのでこれには焦った。左手の指先にほんのり熱を感じた。幸いヤケドはしなかったが、閃光電球の表面は熱線で溶けている。ジワリと恐怖が湧き上がってくる。
 あー、やっぱヤメヤメ。この手の改造なんてやっぱり向いていない。それにしても、キャパシタが少しずつ時間をかけて電池からエネルギーを得ていたとは。オラに元気を分けてくれ。ドラゴンボールの孫悟空かコイツは・・・コワイ。

積層電池.JPG

投稿者 sekiguchi : 2009年12月08日 10:00

フラッシュガンの改造

 フラッシュ、つまりは閃光電球。これがもう国内では製造していないらしい。手元にはいくつかの古い閃光電球があるけど、もったいなくて使えない。閃光電球は使い捨てなのだ。でも、このレトロな雰囲気で撮影をしてみたいという欲求がおさまらない。こんなレトロなストロボがあったら面白いのに。
 だいぶ前だが、そう思ってネットで検索したら改造している人を見つけた。ジャンクカメラとか、使い切りカメラのミニストロボをフラッシュガンに移植するという内容だった。これはいい。と思ったものの、僕は電気工作が苦手である。記事をよく読むと、感電に十分注意するように書かれている。ストロボというのは乾電池を使っていても、内部では恐ろしい高電圧を発生させていることぐらいは知っている。ストロボの構造を技術書で読んだことがあるが、その回路を見てもどのような仕組みで発光のトリガーをかけているのかがわからない。電気回路を理解できる人は天才じゃないかと思う。
 まあ、何でもやってみるものさ。早速ジャンクカメラを買ってきた。分解すると電池と回路と発光部、大きなコンデンサーが出てきた。小さな発光管にはキセノンガスが入っていて、この中に高電圧の電流が流れると太陽とほぼ同じスペクトルのビームが発射されるのだ。なんとも不思議な感じだが、小さくても存在感のある発光管に思いを託してみようと思った。
 では、まず安全のためにコンデンサーに残っているかもしれない電気を放出させてやろう。古いカメラだからとっくに放電しきっているだろうけど、万が一感電したらかなわない。死ぬような電気じゃないけど、ビリビリは勘弁だ。
 コンデンサーの両端を電線で短絡させた。その瞬間、バン!!というものすごい音がした。コンデンサーがパンクしたのかと思った。よく見ると接触部分でスパークが起きたのだ。。。やめやめ。電気工作は性に合わない。  (つづく)

フラッシュ.JPG
  ▲これにジャンクカメラのストロボ回路を組み込もうと考えた。

投稿者 sekiguchi : 2009年12月07日 10:00

日付機能

 今では当たり前の、写真に日付を写しこむシステム。世の中に登場したときは新鮮だった。フィルムの場合、初めの頃の写しこみ方法は、フィルムの裏からランプで照射していた。だから日付の色調も黄色もしくは赤に近い文字だった。これがしばらくすると、フィルム巻上げのときに連動してフィルムの表からドットの点滅で照射するものにまでなった。
 一眼レフ用の初期のものはシンクロ接点を利用してランプを発光させ、マスクを通してフィルムの裏から文字を写しこむものだった。レリーズと同時に映し込むことができるので、小さなアナログ時計を組み込んで撮影時の時・分・秒が記録できるものまであった。いずれも裏蓋を交換して使う。
 リアリストのほか、多くのステレオカメラは裏蓋が取り外し式だ。ここをうまく改造したら、フィルムの裏から文字を写しこめるシステムができるんじゃないだろうか。左右の画面の両方に同じように入れるとなると、かなり面倒くさい改造になる。こんなアホなことを考えているが、まだ実行していない。
 デジタルなら何でもありなんだろうけど、制限のあるフィルムだからあれこれ考えるところに面白さがある。だいぶ前になるが、「こち亀」で両津勘吉巡査が「写ルンです」の中に細工をし、文字が写しこめるようにする話があったように思う。この話は面白かった。もう一回読もうと思っても、コミックスの何巻に収録されているのかわからない。「こち亀」ではステレオカメラが出てくる話もあった。これは何巻だったかな。何しろ160巻を越えているから探すのは大変だ。
 次はどんなことができるかなと、工夫するのはとても面白い。なんでも簡単に済ませてしまうのでは面白くない。漫画みたいな自由な発想は、新しいアイデアを創造する方法の一つだ。

日付機能.JPG
PENTAX MXのダイヤルデータバック。年のダイヤルは’88までしかない。

投稿者 sekiguchi : 2009年10月09日 23:40

カラーバージョン

こんなのがあっても良いかな、と思いつつデザインしてみました。
左上がオリジナル。その右に並んだものはコラムで紹介の通り、作ってみました。
その他はイメージです。木目調なんてのもわりとイケるかもしれません。
COLOR.bmp

投稿者 sekiguchi : 2007年04月08日 15:05

ヨーロピアン改造の実際(2)

 スプロケットギアの軸受位置をシフトする部品をヤスリで仕上げる。もとの軸受穴はハンドドリルなどでこの部品が入るように広げておく。部品を埋め込むには2液硬化型のエポキシ接着剤を使う。充填材の役目も果たすので便利である。硬化する前に軸の代わりの棒材を通し、軸が斜めにならないように微調整をする。これを怠ると組み立てるときに軸がセットできない。もし接着に失敗したら、レールごとお湯で煮れば剥がすことができる。
 次に行わなければならないのが、フィルムレールのマスクを広げる作業だ。レールは鋳造アルミなのでヤスリで削りやすい。あらかじめ広げる寸法を測り、マーキングして削り過ぎないように注意する。フィルム送りとステレオベースの関係で画面横幅を広げられる寸法には限度があるが、マウント時の調整しろを考慮して幅31mm程度にするのがベストだろう。削った面は最後につや消し黒色塗装をして仕上げる。
 今回の改造でもう一つ忘れてはならないポイントがある。巻き上げの制御は撮影者が行わなければならないので、そのインジケーターとなる指標を枚数カウンターに標示しなければならない。1-3-1-3の間隔で印をつければよいだけだ。作例ではボディの全面ブラック化の塗装を施すことにし、カウンター指標をパテ埋めして指標を作り変えている。このようにして視認性を良くしても、3回巻上げをするべきところの途中で撮影してしまう失敗が発生しやすい。これを防止するため、シャッターボタンのロックを巻上げ時に解除するパーツの一部を曲げ加工し、自動解除ができないようにした。撮影者にとっては動作が増えるが、巻き上げて枚数指標を確認し、多重露出ノブを引いてシャッターロックを解除してスタンバイ状態となる。これでほぼ撮影ミスは防止できる。
 リアリストのシャープなレンズをヨーロピアンで使えることの魅力は大きい。
#A22.jpg
※つや消し黒のウレタン塗装とトカゲ革への貼り替えをしている。

投稿者 sekiguchi : 2007年03月18日 11:44

ヨーロピアン改造の実際(1)

 まず改造のベースとなる機体だが、このコラムで紹介したようにF3.5レンズのモデルではイメージサークルが小さいため、画面を拡張した場合にこれをカバーできない。四隅が暗いどころか、両端が円弧状に縮小された画面になってしまう。改造はF2.8レンズのモデルをベースにする。このレンズはイメージサークルが十分大きく、周辺の画質を確保したままヨーロピアンフォーマットに拡張することができる。
 次に、前に紹介した通りスプロケットギアを歯数7のものに交換しなければならない。これを新しく作るのは大変である。ジャンクカメラからスプロケットギアを入手して使うのがやりやすい。しかし歯数7というのは特殊であり、多くの35mm版カメラは歯数8のギアを使っている。1ロールあたりの撮影枚数が減ってしまうが、ここは歯数8で妥協しよう。ジャンクカメラからの入手だからスプロケットの軸径が合わない。小さい場合は軸が入るように穴径を広げ、大きい場合は銅パイプを加工してスペーサーにする。さらにギアの厚さをオリジナルのものと同じにするため切断・研削をする。ここまでの加工は工作機械が無くてもハンドツールで対応できるはずだ。
 もう一つの難関が、歯数を変えたことによりギアの直径が小さくなり、そのままセットしたのではフィルムにかみ合わない。軸位置を手前に3mmほど移動しなければならない。これが実に厄介で、今回の改造のキーになる。加工のしやすい銅合金を使い、偏芯した軸穴を持つ部品を作製した。工作機械があれば簡単だが、ハンドツールでも精度良く作ることができる。銅合金のパイプを組合せ、太いパイプの中に細いパイプを配置してロウ付けする。これをカットして軸受部品にする。オリジナルの軸受穴をハンドドリルで広げ、この軸受部品を埋め込むことで軸位置を移動させることができる。(つづく)
#A21.jpg

投稿者 sekiguchi : 2007年03月18日 11:41

ヨーロピアン改造の問題点

 ヨーロピアンフォーマットはリアリストよりも横に2パーフォレーション長い。このため、7-Pとか、P-7とも呼ばれる。フォーマットの違いによるカメラ機構の決定的な違いはフィルム送りの制御である。リアリストでは左右の画面の間に2コマ分のスペースを開けているため、巻き上げは常に10パーフォレーション分で制御すればよい。歯数10のスプロケットが1回転することで1サイクルの巻き上げ制御をすればよいので、機構を単純化することができる。これを14パーフォレーション制御にすれば同じ機構でヨーロピアンが作れるが、左右コマ間隔が広すぎ、ステレオベースが長大化する。これを回避するためにフィルムの送りをΩ型にすればコマ間隔を縮小できる。TDC・Vividはヨーロピアンフォーマットを前提に設計され、途中でリアリストフォーマットに変更されたという説がある。そうであればΩ型に近いフィルム送りはこのなごりかもしれない。
 さて、ヨーロピアンカメラは左右のコマ間に1コマ分のスペースしか取れないため、フィルム送り制御は7-14-7パーフォレーションを繰り返す複雑な機構を内蔵せねばならない。リアリストを改造する業者は、この機構を追加しているようだ。これを個人レベルで行うには設計・部品調達も含め非常に困難なものになる。しかし、見方を変えてこの面倒な制御を撮影者が手動で行えば機構は非常に単純なものになる。セルフコッキングではないから、歯数7のスプロケットギアに交換して1回-3回-1回の巻上げ操作を行えばいいだけだ。撮影者がフィルム送りカウンターの刻印を見ながら巻き上げのコントロールをする。リアリストをヨーロピアンに改造するための技術的ハードルは、これだけで個人レベルの改造を実現できるまでに低くすることができる。では、次回は実際に改造した要領について紹介しよう。
#A20.jpg

投稿者 sekiguchi : 2007年03月18日 11:38

ヨーロピアンVSリアリスト

 アメリカを中心に広まったリアリストフォーマットカメラは中古マーケットでの入手性もよく、観賞に必須のビュアーも種類が多く、とても使いやすいシステムである。リアリストのほぼスクエアに近い画面は、幅広い被写体にマッチするフォーマットでもある。一方で、ヨーロッパを中心に広まったヨーロピアンフォーマットカメラは、数は少ないものの、横長の画面が風景などの作画に向いている、より臨場感を得るのに向いている、などの理由で人気が高い。ただ、このフォーマットのカメラは入手性が悪いばかりでなく、リアリストに比べて次のような制約もある。
・FED-STEREOもしくはFED-BOY
 オートマチックカメラであり、絞り、シャッタースピードの自由な選択は不可能。
・初期型イロカステレオ、ベルプラスカ
 距離計がなく、目測でフォーカシングをしなければならない。
・べラスコープf40
筐体内の内面反射処理が悪く、フレアを生じやすい。また、シンクロ接点が特殊であり、ストロボ撮影が難しい。
 これらのカメラにはリアリストにはない機能や、独特の素晴らしい描写をするレンズであるなど、決して優劣を比較するべきものではない。しかしリアリストと同じ撮影設定の自由度を持つヨーロピアンフォーマットカメラが存在しないのも事実である。であるならば、リアリストをベースにヨーロピアンフォーマットへの改造ができないかと考えた。海外では委託改造として引き受ける業者もあるらしい。世の中にあるのならできるはず、という意気込みで、個人ベースで改造する工夫をしてみた。十分実用に耐えるものができたので次回に詳細を紹介しよう。

#A19.jpg
※写真のベルプラスカは、距離計を取り付けて使いやすくした状態

投稿者 sekiguchi : 2007年03月17日 15:39

模様替えをする

 過去にはPENTAXがLXボディの革張りを購入者が事前に選べるサービスをしていた。このLXの革張りにトカゲ革なんかがあってとてもカッコよかったのだ。メーカー純正でなくても、カメラの革張りを特別なものに替えるサービスというのは世の中にある。ということは個人でもできるのでは。今は趣味で皮革工芸品を作る人が増えていると見え、東急ハンズなどでいろいろな皮革素材が売られている。もちろんトカゲ革だってある。魚類のエイの革なんていうのもあった。自分で気に入った革に自由に貼り替えることができたらさぞかし気分がいいことだろう。というわけで革の貼り替えに挑戦だ。
 被験者は前のブラック・リアリストと同じ。前のオーナーがどんな使い方をしたのか革が破れている。まずはこれを剥がさなくてはならない。今回はオリジナルの革は再生しないので少々乱暴に剥がす。しかし、修理が目的で剥がすときには革を破かないように注意すること。革とボディの間にナイフを入れ、固まった接着剤を切るようにして作業をするとやりやすい。交換用の革は、オレンジ色に着色された豚革を使用した。革の厚さに注意し、革の目などに注意して良い部位から切り取る。剥がしたオリジナルの革を型紙代わりにするとやりやすい。少し大きめに切り、カメラ本体にあてがいながらハサミやカッターで修正をしてゆく。きれいな切り口を作ることが仕上がりの完成度に効いてくる。
 ボディの古い接着剤は除去して滑らかにしておく。仕上げのポイントだ。さて、革貼りには皮革用のボンドを推奨している修理ガイドの本があるが、僕はあえて両面テープで張ることを推奨したい。ボンドは接着強度が出るものの、革に浸透しすぎたり、固まった後の修正が難しい。接着強度と剥離性のバランスがよいペーパー用両面テープが使いやすい。
 張り替えが完了すると、醜い機体がオリジナルカラーで甦った。カッコいいだろ。

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コンチュラを意識したカラー。ブラックというよりパンダ。

投稿者 sekiguchi : 2005年09月17日 13:08

ブラック・リアリスト

 昔のカメラは銀梨地が多かった。なんで銀梨地なんだろう?まあ、それはともかく昔の日本の一眼レフで、突然ブラックボディが大流行した時期がある。これが結構カッコよくて、値段も高かったりした。ブラックは樹脂塗装である。塗料というのはホームセンターでも売っているが、実は金属面に強い塗装を施すというのはとても難しいことなのだ。そのへんで売っているラッカーなんかを塗っても、簡単に剥がれたり、爪で傷がついてしまうほど弱い。
でも、市販品だけどそのへんでは売っていないマニアックな塗料が夢をかなえてくれる。
 リアリストにブラックボディはないが、あったらさぞカッコいいことだろう。というわけで、ブラック・リアリストへの改造に挑戦だ。とはいえ、わざわざ美しい銀梨地のボディを塗りなおすのはもったいない。被験者は、機能的に問題ないものの、醜い傷と錆の生じた機体を選定した。まず分解し、塗装するパーツに付いている部品を全て外す。サンドペーパーと溶剤で徹底的に洗浄し、傷の部分はパテ埋めをする。塗料は硬化した後の塗膜が固い二液硬化型のウレタンスプレーを使う。今回はブラックだが、お好みでどんな色にしてもいい。これを吹く前にパーツにマスキングをし、プライマーで下地処理することを忘れないように。プライマーはメッキ面にも使える強力なものが市販されている。
 ウレタンスプレーを均一に吹き付け、硬化した後は、表面に多少の気泡やゴミの付着もあるので研磨剤で塗装面を研ぐ。軍幹部の指標は再現が難しいので、今回はあらかじめパテ埋めし、白文字入れでデザインし直すことにした。この上に、更につや消しクリアーの塗料を薄く吹けば塗装完了。組上げると美しいマット・ブラックのリアリストが誕生した。
と、まあ簡単に書いてみたけどやってみると結構大変だった。かなり根気が要る作業だから、チャレンジする人は覚悟を決めて臨んでくれたまえ。

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トップカバーのみ塗装

投稿者 sekiguchi : 2005年08月27日 18:16