STEREO CLUB TOKYO

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コスモス通信

応答せよ。応答せよ。
こちらコスモス7598。我々は貴殿の来訪を待っている・・・。
日ごとに日差しが短くなってゆく。
もうすぐ冬がやってくる。冷たい風が吹き抜ける。
そんなある日、庭の片隅に小さなパラボラアンテナが開かれた。
アンテナはもう寒くなりはじめた空に向けられている。
訪れる虫たちは、すでにどこかにいってしまった。
それでも、誰かを待つように精一杯アンテナを広げている。
応答せよ。応答せよ。
こちらコスモス7598。我々は貴殿の来訪を待っている・・・。
通信に必要なエネルギーがもう少ない。あと何日持つだろう。
冷たい風が夕闇を運んできた。
空には氷のように輝く星がはりついている。
こちらコスモス7598。我々は貴殿の来訪を待っている・・・。
もしかしたら、遠くの星に住む住人がこの小さな声を聞いているのかもしれない。

コスモスの花.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月26日 10:00

クリスマスツリー

 もうそろそろ今年も終わり。夜の長い季節がやってきた。街にはイルミネーションがあふれている。クリスマスツリーがいっぱい。キラキラ・キラキラ・きれいだね。夜空の星たちがいっせいに集まったような輝きだ。
 さて、この風景をステレオで撮影してみましょう。撮影は日が暮れてから。ステレオリアリストにISO100のフィルムを入れます。高感度のフィルムじゃなくても大丈夫。小さくてもいいから、かならず三脚を使います。
 三脚にリアリストをセットして、ケーブルレリーズを付けましょう。シャッタースピードを1secにセットして、レンズの絞りは開放にしましょう。状況によって絞りをもう少し絞ったり、シャッターを1/2secにする、バルブにして露出を長くするなどしてみましょう。段階的に露出を変えて撮っておくのも良いでしょう。
 スローシャッターが充実しているカメラを使うのがポイントです。ストロボは使わずに、ツリーの明かりだけで撮ってみましょう。もしケーブルレリーズがなかったら、リアリストならこんな方法でも撮れます。
 まず絞りをF8とか絞り気味にして、シャッターは「T」にします。帽子でレンズの前を隠してシャッターを開けます。帽子をどかして5秒ほど露出をしたら、また帽子でレンズを隠します。もう一回シャッターを押して閉じる。カメラが動かないように、風で被写体がブレないように気をつければいいんです。慣れれば簡単だよ。
 さて、年が変わると僕のリアリストも一つ年齢を重ねる。手にした頃は50年前のカメラだったけど、そろそろ60年前のカメラということになる。このカメラたちと出会えていろいろと楽しみが増えた。ほんの小さなきっかけだったけど、これはもしかしてサンタクロースの贈り物だったのかも。あなたのところにもサンタクロースが訪れますように。

クリスマスツリー.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月22日 10:00

星を撮る

 カメラってすごいなあ、と思った子どもの頃の記憶を辿ると、図鑑で見た天体写真だったことを思い出した。目では見えない、望遠鏡を使っても目ではぼんやりとしか見えない天体が、カメラを使って長時間の露出をすることで鮮明に記録することができる。目ではあまり感じない領域の波長を記録することもできる。目では見えないものがカメラを使えば捉えることができる。これはとてもすごいことだと感じた。僕もカメラが欲しいと思ったきっかけだ。天体写真を撮りたい。そのための長時間露出のできるカメラが欲しい。オートマチックのカメラじゃダメなんだ。
 そんなことで、初めて手にした一眼レフは夜空に向けられた。明るい標準レンズを付けて三脚に固定し、5分ほどシャッターを開けておくと、星が日周運動で移動してゆくので円弧状の線になって写る。こういった撮影方法を固定撮影という。驚くのは、目では見えないような暗い星まで線になって写っている。もっと驚いたのは、カラーで撮るとどの星も個別の色を持っているのがわかる。さすがに緑や紫は無いが、青白から白、黄色、橙色、赤とあり、その中間の色も記録されていて美しい。日周運動に合わせてモーター駆動し星を点に写す装置もあるが、星の色を捕らえるなら固定撮影のほうがいい。
 レンズがちょっと暗いけど、ステレオリアリストで撮影したらどうだろう。わざわざ遠くにある星をステレオで撮っても立体に見えるわけじゃない。林の向こうに輝く星をステレオで撮ったら面白いだろうとやってみた。場所はアフリカ、ボツワナにあるサファリの中のホテル。ホテルの外に出ると野生動物の餌食になりかねないので、ホテルの庭で撮影だ。白熱灯が灯っているので林が照らされている。出来上がりを見ると、サバンナで焚き火をしながら夜空を望むような雰囲気で仕上がったではないか。デジタルに変換すると細かな星が見えなくなってしまうのが残念。

南十字星L.jpg 南十字星R.jpg
右下に南十字星が見える

投稿者 sekiguchi : 2009年12月18日 10:00

海底GO!GO!GO!

 水中カメラというのは憧れの存在だった。海中というのは宇宙と同じぐらい神秘の世界である。そんな世界に機械を持ってゆくというのはどんなに難しいことか。水圧と浸水、塩水による錆の問題など、カメラにとって克服しなければならないハードルがいくつもある。カリプソとか、ニコノスとか、水中ハウジングを使わなくても海中に潜ることのできるカメラの登場は最先端技術の結晶でもあったのだ。ニコノスは登場当初に、共産圏への輸出規制がかけられていたこともあるのだ。
 さて、カメラがデジタル化したことで水中撮影の環境は激変したらしい。とっても簡単に撮影できるようになってきたのだ。水中専用に設計されたカメラではなくても、マリンハウジングを使うことで撮影が可能だ。分厚いアクリルのケースに水圧に耐えられるようにシールしたダイヤルを設け、カメラを操作する。でも、このダイヤル操作の部分の設計と製造が大変なのだ。
 水圧というのはほんの数m潜っただけで大きく加わる。可動部から海水は簡単に浸入してくるのだ。だけど、操作がボタンになったデジタルカメラではこの操作部分をより簡単な構造にすることができる。これは革命だ。
 とはいえ、僕はカナヅチなので水中撮影にはいままでトンと縁が無かったし、カメラのデジタル化で水中撮影がより身近になった現代でもたぶん縁がないんだろう。でも、この神秘の海中世界をステレオで撮影してみたいという思いはある。かつてはステレオリアリスト用のマリンハウジングも存在していたらしいし。。。ぢゃあ、この際カナヅチというハンデを克服してステレオ海中撮影にチャレンジしてみっか、ということになった。これはね、大変なことです。
 う゛ぁあ!!薄暗い海中で、目の前を何かがよぎった。なんと、イカの大群であった。ステレオリアリストでイカの撮影に成功したっ!・・・タネを明かしますと、とある水族館での撮影でございます。ストロボなし、スローシャッターが成功の秘訣です。

海底.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月15日 10:00

大阪という街

 僕はあちこちの知らない土地に行ってあちこち見るのが好きであるし、好きではなくとも引越しもずいぶんした。だけどなぜか大阪にはあまり縁がない。何かの用事で行くことがあっても日帰りで帰るばかりでゆっくりとしたことがなかった。大阪の串カツは名古屋の味噌カツと共に一度は味わってみたいと切望していたのだが、味噌カツを堪能するチャンスに恵まれても、串カツにはなかなか出会うチャンスがなかった。
 そんな折、家族そろって行ってみようかという事になった。やっぱり通天閣周辺がベストであろうということで、事前に評判の店をネットで調査する。何件かめぼしを付けて行ってみた。
 さて、どんな都市にも繁華街というものがあり、夜の風景というのは大体において酷似している。だが、大阪は違う。やっぱりここは大阪なのだ。どう違うのといわれても表現するのが難しい。ステレオ写真が空気感まで切り取るとはいえ、このコテコテ感まで取り込むことができるかどうか(笑)。なんだか、いるだけで楽しくなるような空間なのだ。このワクワク感は、昔の繁華街を再現した遊園地のアトラクションに行ったときに似ている。
 お目当ての串カツ屋さんに到着すると、入り口が開放されていて半ばオープンスペースのような感じ。とてもイイ。だけど超満員。だけどちょっと待つだけで座れる。さっそくメニューにあるものを上から順番に手当たり次第に頼む。どんどん出てくる串カツ。これが旨い。ビールも進む。撮影?・・・それは後で。というわけで食べるのに専念してしまった。
 だいぶ食べたので予定外の金額になってしまった。だけど別のところも行ってみたくなり、今度は座敷席のある店でまったり。ここの串カツも旨かった。窓の外には通天閣が見える。なんだか不思議な街だなぁ。串カツの写真は?・・・撮るのを忘れてしまった(笑)。他にも面白そうなところがタクサンありそうだ。またそのうち行ってみよう。

大阪.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月11日 10:00

フラッシュガンの改造(おまけ編)

 先のフラッシュガン改造の話を書くときに、手持ちのハネウェル製フラッシュを取り出していじくっていた。このフラッシュは折りたたんだ反射傘を展開するとパラボラアンテナのような姿になってカッコイイ。で、これが上向きに角度を自由に変えることができるのでさらにカッコイイ。アメリカ人のデザイナーもなかなかやるではないかと思っていたら、MADE IN JAPANと表記してある。なーんだ。わが国のデザイナーの手によるものか。パラボラの傘がゴジラの映画に登場するメーサー光線車を思わせるが、その姿はやっぱり日本人が作り出したのだ。
 妙な納得をしながら、閃光電球を差し込んではイジェクトボタンで排出したりと遊んでいた。ストロボ回路を組み込んだらやっぱり面白いかなーなんて、懲りずにまた考え始めていた。電池室をあけると四角い15Vの電池とキャパシタ(いわゆるコンデンサー)が入っている。
 四角い電池をよく見ると、これも国産の日立製。マクセルの古い商標が書かれている。この電池はW10という規格で、この手の積層電池は既に作られていないらしい。製造年月日も使用期限も書かれていないが既に20年は経っているだろう。キャパシタだって機能しているとは思えない。既に死んでいる機械なのだ。
 いじっているうちに、緑色の発光ボタンを押してみたくなって何気に触ったら、セットしていた閃光電球が発光した!まさか起動するとは思っていなかった。左手で電球を押さえていたのでこれには焦った。左手の指先にほんのり熱を感じた。幸いヤケドはしなかったが、閃光電球の表面は熱線で溶けている。ジワリと恐怖が湧き上がってくる。
 あー、やっぱヤメヤメ。この手の改造なんてやっぱり向いていない。それにしても、キャパシタが少しずつ時間をかけて電池からエネルギーを得ていたとは。オラに元気を分けてくれ。ドラゴンボールの孫悟空かコイツは・・・コワイ。

積層電池.JPG

投稿者 sekiguchi : 2009年12月08日 10:00

フラッシュガンの改造

 フラッシュ、つまりは閃光電球。これがもう国内では製造していないらしい。手元にはいくつかの古い閃光電球があるけど、もったいなくて使えない。閃光電球は使い捨てなのだ。でも、このレトロな雰囲気で撮影をしてみたいという欲求がおさまらない。こんなレトロなストロボがあったら面白いのに。
 だいぶ前だが、そう思ってネットで検索したら改造している人を見つけた。ジャンクカメラとか、使い切りカメラのミニストロボをフラッシュガンに移植するという内容だった。これはいい。と思ったものの、僕は電気工作が苦手である。記事をよく読むと、感電に十分注意するように書かれている。ストロボというのは乾電池を使っていても、内部では恐ろしい高電圧を発生させていることぐらいは知っている。ストロボの構造を技術書で読んだことがあるが、その回路を見てもどのような仕組みで発光のトリガーをかけているのかがわからない。電気回路を理解できる人は天才じゃないかと思う。
 まあ、何でもやってみるものさ。早速ジャンクカメラを買ってきた。分解すると電池と回路と発光部、大きなコンデンサーが出てきた。小さな発光管にはキセノンガスが入っていて、この中に高電圧の電流が流れると太陽とほぼ同じスペクトルのビームが発射されるのだ。なんとも不思議な感じだが、小さくても存在感のある発光管に思いを託してみようと思った。
 では、まず安全のためにコンデンサーに残っているかもしれない電気を放出させてやろう。古いカメラだからとっくに放電しきっているだろうけど、万が一感電したらかなわない。死ぬような電気じゃないけど、ビリビリは勘弁だ。
 コンデンサーの両端を電線で短絡させた。その瞬間、バン!!というものすごい音がした。コンデンサーがパンクしたのかと思った。よく見ると接触部分でスパークが起きたのだ。。。やめやめ。電気工作は性に合わない。  (つづく)

フラッシュ.JPG
  ▲これにジャンクカメラのストロボ回路を組み込もうと考えた。

投稿者 sekiguchi : 2009年12月07日 10:00

鉱山都市

 日本ではもう大きな炭鉱や金属資源を採掘する鉱山はなくなってしまった。坑道を掘り進んで、真っ暗な洞穴から鉱石を採掘する、そんな鉱山はほとんど閉山となっている。これらの鉱山は、今から50年ぐらい前はとても栄えていた。
 鉱山で働く人、採掘のための機械を用立てる会社、掘り出した鉱石を運搬する鉄道、そんな鉱山に関係する会社や人々が集まり、大きな町が形成されたのだ。学校や病院など、働く人々と家族を含めた生活の基盤がどんどん整備され、大きな都市へと発展していった。海外との交流も鉱山技術を軸にして活発になり、当時の東京よりアカデミックであったとも聞く。
 だが、鉱山に支えられているからこそ、操業が滞りだすと衰退の一途を辿る。鉱石を掘り尽さないまでも、採算が合わない状態になると操業を落とさざるを得ない。金属価格の変動、海外からの資源流入、需要の変化など様々な要因が影響し、最盛期から短期間のうちに消滅した都市もいくつかある。そのまま置き忘れたような廃墟が残ってしまっている。
 神岡鉱山がそんな鉱山都市のひとつだ。今では廃坑を利用したカミオカンデなど、学術研究への活用が盛んだが、栃洞坑の周りに広がっていた町全体は巨大な廃墟となっている。廃墟マニアと呼ばれる人達にはたまらないものがあるらしい。だが、朽ち果てた構造物は少しずつ崩れている。危険な場所もあるだろう。探検はせず、見える範囲で様子を窺った。
 この場所がどのような経緯で廃墟と化したのか想像もつかない。もうすでに機能していないそれらを見るに、規模の大きさに驚く一方、悲しみが伝わってくる。価値を生み出すものであったはずなのに、今では忘れ去られた存在になっている。そんな思いが伝わってくるようである。一部をステレオで撮影したが、立体写真はその場所の悲しさをストレートに伝えてしまう。せめて、モノクロームでデフォルメしよう。彼らは忘れられた時間のはざ間で、じっとこちらを見ているのだ。

鉱山都市BW.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月05日 10:00

登別温泉郷

 北海道の南側に有名な登別温泉がある。ここはいろいろな泉質の温泉があり、湯量が豊富だ。温泉街より山側の一帯は地獄谷と呼ばれている。草木の生えない、蒸気が吹き出している様はまさに地獄。とはいいながら、遊歩道が整備されていて安全に散策することができる。観光客も多く、エサをねだるキタキツネの姿もよく見られる。
 温泉街から細い道を山伝いに車で登ると、大湯沼という温泉が噴出している湖にたどり着く。この景色もまさに地獄。湖面を這う湯気の向こうで、ボコボコと音を立てて湯が沸いているのが見える。入ってはいけないと書いてあるが、誰が入るものか。一歩でも足を踏み入れようものなら、引きずり込まれそうである。だが、こういうところでカメラを持っていると、近づいて撮影をしてみたいという欲が出てくる。あのボコボコを立体で撮ってみたい、と。
 でもやめておいたほうがいい。もし、足を踏み外そうものなら生きては帰れない。足を踏み外さなくとも、強烈な硫化水素ガスで意識を失うかもしれないのだ。そんなコトを考えながらタバコを一服していると、地元観光タクシーの運転手さんが、休憩で一服しながら話しかけてきた。今日の噴煙はおとなしいなー。だそうである。で、昔はたまーにこのボコボコに身を投じる人もいた、と(ホントウだろうか??)。で、熱泉で溶けて何も残らないのだ、と。何も残らないのに何でわかるのかといえば、髪の毛だけは溶けずに残るんだそうだ。こっちからは何も聞いていないのに、そんな気味の悪い話を次々に披露してくれる(笑)。
 大湯沼を後にし、来た道をそのまま進むとクッタラ湖という丸い形をしたカルデラ湖にたどり着く。透明度が非常に高い。日本国内では摩周湖に次いで2番目に透明度の高い湖だそうだ。湖畔にレストハウスがあり、手漕ぎボートを借りられる。あたりは静寂で、先ほどの地獄の風景とは一変した神秘の世界を体験することができる。

大湯沼.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年12月02日 10:00