まさにリアリストの本
一時、ステレオ写真に関する機材の調達をebayでやっていた。とにかく本場の米国のマーケット、日本のお店ではなかなか手に入らないようなものがざくざく手に入る。おもしろかった。
ここで、たびたびebayのステレオカテゴリに登場するのがDr.Tという人物。米国のステレオ愛好家の間では有名人である。僕もebayで彼から何度も機材などを購入していたけど、いつも取引はスムーズで、なにより取引で感じられるのが彼の人柄。ステレオに関して知識豊富なだけでなく、とても紳士なのだ。
その彼がリアリストについて書いた本がある。これもロムニーブックのような家内工業的に作った感じで、一般書籍という体裁じゃない。だけど内容はとても多岐に渡っていて、タイトルにあるように使い方とメンテナンスがこれ一冊でわかるというもの。全部英語で書かれているので読み解くのに苦労はいるが、図や写真も丁寧に入れられているのでわかりやすい。
この本のおかげでリアリストの距離計調整が自分でできるようになったし、曇ったミラーを新しいものに換えたりもした。距離計だけでなく、ほかにもメンテナンスに必要な内部の構造や調整の仕方が詳細に解説してある。さすがマニアの中の頂点に立つ人だ。リアリストについてはこの本の中に必要なことがほぼ全部入っている。
読み進んでいくと、リアリストをヨーロピアンフォーマットに改造した人がいる、という驚きの記事が載っている。どのように改造したのかの詳細は記されていないものの、改造カメラの一部写真が載っていたりしてこれには刺激された。フィルムの送り機構をどう改造するかがポイントになるのだが、これがわからない。不思議のなぞは解かねばならぬ。いつか自分もやってみようと思い、そしてついに作ってしまった(過去ログをご覧下さい)。
僕がこの本を買ったのは2000年ぐらいだったかな。あれからだいぶ経ちますが、まだebayで購入できるようです。おすすめです。
投稿者 J_Sekiguchi : 2018年01月11日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
ステレオアダプター
日本のステレオ事情ということで、昔からあるのがペンタックスのステレオアダプター。これの取扱説明書が発掘されました。
ステレオアダプターを購入した当時は、ペンタックスの一押し商品がLXだったのでこれが表紙写真のほか、説明書のあちこちで使われています。だけどこのアダプターはKM、K2の時代からあったので、これより古い取扱い説明書ではK2あたりが使われていたのではないかと思います。
ペンタックスは標準レンズのフィルターサイズを52mmとしていましたが、ME、MXあたりからレンズも含めたコンパクト化を進め、標準レンズのフィルターサイズの主流を49mmに変更しました。アダプターのフィルターサイズの設定が2種類あるのはこのへんが理由になっています。
説明書の冒頭に原理を説明したページがありますが、せっかく丁寧な図があるのに説明になっていませんね。ま、ご愛嬌。使い方のページには作例のような写真が載っていますが、実際には片側画面はもっと縦長に写ります。
僕はビュアーは購入せず、ネガで撮ってプリントし、裸眼立体視で楽しんでいました。縦長の画面はトリミングを前提に構図を決めていました。いっそトリミング前提のスクエア画面にして、それ専用のフォーカシングスクリーンがあればいいのに。なんて思ったりも。
昔のペンタックスの取扱説明書の雰囲気って独特で、特にステレオアダプターについてはその雰囲気が全開だよな、と思う次第。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年12月28日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
Reel 3-Dカタログ(続きの続き)
ステレオスライドの鑑賞方法は、プロジェクターでスクリーンに投影する方法もある。プロジェクターはステレオ専用のものが必要で、TDC116などの中古品を手に入れる必要がある。Reel 3-Dは基本的に中古品は扱わないので、プロジェクターはebayで手に入れたが、スクリーンはここのカタログにあるものを購入した。
ステレオ写真のプロジェクター鑑賞に使うスクリーンは特殊なものが必要で、偏光を正しく反射するシルバースクリーンが必要。一般的な白色のスクリーンじゃだめなのだ。ところが、このスクリーンが日本ではなかなか手に入らない。カタログには4種類あって、一番小さなものなら100ドルほどと驚きの安さ。僕はこれを送料の安い船便で送ってもらった。もちろん、鑑賞に必要なポラロイド(偏光フィルター)めがねも一緒に。
もう一つ、プロジェクター鑑賞で心配なのが、プロジェクター電球のスペア。昔の映写機なので、現代では使っていない規格。もちろん、ハロゲン電球じゃない。いまどきどうやって手に入れるのかとも思ったが、ちゃんとカタログに載っている。注文したらなんと、日本製の富士電球のものが届いた。では日本でも買えるのかなと思って秋葉原を探索したら、送料込みでもReel 3-Dの方が安かった。
Reel 3-Dが閉店となった今ではステレオカメラを楽しむための機材を調達するのが簡単ではなくなってしまった。それでも、ebayなどのマーケットを使うなど、工夫次第でまだ何とかなっている。それというのも過去に作られた大量の製品が、まだたくさん米国の家庭に眠っているということ。もしもステレオが日本発信で流行ったものだったら、今でも楽しむという環境は・・・なかっただろうなぁ、なんて考えてみたりする。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年12月14日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
Reel 3-Dカタログ(続き)
Reel 3-Dで販売していたのはステレオ用品だけでなく、カメラの取扱説明書のコピーも販売していた。中古カメラの購入で困るのが、取扱説明書が付いてこないこと。まあ、たいていのカメラは説明がなくても使えるのだけれど、説明を見てなるほどと思うものもある。Reel 3-Dの凄いところは、ステレオカメラや付属品類の取扱説明書まで豊富に取り揃えている、ということ。本来の目的でなくても、この取扱説明書をコレクションするだけでステレオカメラの歴史を語ることができそうである。
こういったものも含め、Reel 3-Dのカタログには、ステレオ写真を楽しむために必要なものはほぼそろっていたという驚きの事実。見落としがちな、ストロボを使った撮影のための機材。日本のストロボメーカーニッシンのグリップ型ストロボがカタログに載っている。ニッシンは米国でも信頼のブランドとして浸透している。面白いのは、リアリストは左手シャッターなので、グリップの取り付けを切り替えて右側に配置すればもっと使いやすいだろうに、と。僕はニッシン製ではないが、グリップの位置を切り替えたストロボを使っている。どのストロボを使うにも必要な、ホットシューに出っ張りのあるカメラのためのアダプターも用意されていた。これがないとリアリストはもちろん、リベアなどでもストロボを使うのが難しくなる。必需品です。
さて、このほかのアイテムについては次回紹介。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年11月30日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
Reel 3-Dカタログ
ステレオカメラとビュアーを手に入れると、いろいろ必要になってくるものがある。たとえばステレオマウント。今では販売してくれるところもなくなってしまったが、かつてはネット通販をしていた米国のショップReel 3-D Enterprises,Inc. があった。既に惜しまれながら閉店となった。ここの2000年のカタログがある。
ステレオマウントだけでも数種類あり、フレームのサイズ、方式などさまざま。いつも使っていたのが、アイロンで接着する紙マウント。カタログによると、100枚で$7.95(安い!)、これに送料がかかる。たびたび買い足すのも面倒なので、たくさん撮影するようになってからは、1250枚入り$69.95を一番送料の安い船便で送ってもらうようにしていた。とても便利だった。
ステレオスライドを保管するためのクリアホルダーも便利だ。日本の規格にはない3穴のファイルが必要だけど、ファイリングされたステレオスライドはビュアーを使って鑑賞するときにとても重宝する。旅行に行ったときのスライドを順番に並べてファイルしておくと、旅程を思い出しながらファイルをめくり、気が向くままにその時に立っていた場所の風景を再生してくれる。
ビュアーも簡易なものならReel 3-Dで購入することができた。カタログにあるSV1ビュアーはなんとひとつ$3.25である。カタログの同じページにあるLife-Likeビュアーも買ったけど、僕はSV1ビュアーの方が好きだったな。これもずいぶんたくさん買いました。
このカタログには他にもいろいろ面白いものがあるので、次にそれらを紹介しましょう。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年11月16日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
リアリスト・リペアマニュアル
ステレオリアリストを修理したい。こんなときどうしよう。昔のカメラだから、修理してくれるところなんてないだろう。初めてカメラを手にしたときにそう思った。それぐらい昔のものに思えたからね。
実際にはこの手のカメラを修理してくれる専門のショップはあるので、お金はかかるけどどうにかなる。その辺りに気が付いた時にはもうこのリペアマニュアルを購入していた。エド・ロムニーの「stereo-REALIST CAMERA REPAIR」である。全文英語。
この本はアメリカのEdward H Romney氏が書いたもの。彼はカメラの専門家のようで、リアリストに限らず各種カメラについてこのような本を出している。僕がこの本を購入したコスモシステム研究所の説明によれば、これらの本はロムニーブックといい、ロムニー氏がタイプライターで作成した原稿をもとにCanon 6600 Copierというコピー機を使って家内工業的に作っているもの、だそうだ。日本国内ではカメラ修理の資料が皆無という状況にあり、ロムニーブックを輸入し販売しているということだった。
内容は修理マニュアルというよりは、リアリストとはどのようなカメラなのかということを紹介しており、なかなか興味深いものだった。修理に関する情報としては、内部の構造がわかる写真数点と、これを解説した記述があるが、これを見れば素人でも修理ができるというものではない。だけど、内部の構造について丁寧に紹介されており、実際にカメラを分解しながら読み進めると、リアリストの設計コンセプトのようなものまで読み取れるような気がして面白い。
驚くべきは、この本でもビュアーや付属品に関する記述があり、単純なカメラメカの解説本にとどまることなく「ステレオ写真の楽しみ方」というような視点で書かれていることだろう。フィルム時代の立体写真については、日本より欧米の方がずっと進んでいたし、立体写真を心底愛好している人達がたくさんいたということが改めてわかる。そういう意味でも貴重な資料だと思う。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年11月02日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
ステレオカメラ・カタログ
ステレオカメラを網羅したカタログというものがあったらいいのに。今でも、ネット情報を検索して得られる、フィルムを使うステレオカメラの情報は限られている。リアリストのような量産されたカメラの情報はある程度手に入るものの、その他のものになるとぐっと情報が少なくなる。
僕がリアリストを手に入れた1998年頃、ステレオカメラの情報を探っていると、日本より海外の方がステレオカメラの愛好家が多く、またマニアック度が高い人達がいるという事がわかってきた。その中でも有名な一人がドイツのWerner Weiser氏。彼は自分でステレオカメラのカタログを作っている。「STEREO CAMERAS SINCE1930」この本には各種ステレオカメラのどこよりも詳しいスペック、製造年、おおよその製造数など充実した情報が載っている。
ページをめくっていくとDrimonというカメラが載っている。日本製。はて?・・・よく見ればドラえもん。バンダイがドラえもんの秘密道具の一つというコンセプトで販売した、110フィルムを使うステレオカメラだ。こういうものまで収録されているとは。
ドラえもんはともかく、使ってみたい気になるカメラが、表紙を飾っているキルフィット・ステレオ。ビューファインダーが大きくて使いやすそう。下側の窓は距離計かな。パーツの配置から想像すると、他のカメラとは全く異なるコンセプトでデザインされているに違いない。この辺りは実物を触ってみなければわからない。あるいは分解して内部を・・・。
なんと残念なことに、この本によるとおおよその製造数は6だそうである。単位は台。6台。これでは手に入れるのはまず無理だ。現物さえお目にかかれるかどうか。きっとどこかの博物館にでもあるのだろう。そう、海外の。
珍しいカメラは諦めるとしても、Werner Weiser氏の本は改定もされていて、今でもebayで手に入れることができる。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年10月19日 10:00 | コメント (0) | トラックバック
ステレオカメラの資料
僕がステレオカメラを手にしたきっかけとなったのが、「カメラレビュー クラシックカメラ専科 No.27」(朝日ソノラマ)だ。カメラレビュー誌は特集としてその時々のテーマを深く掘り下げているのでなかなか面白い。ステレオ特集となるNo.27はステレオワールドと題して1993年12月に発行された。ステレオ以外の記事も載っているが、約70ページに立体写真撮影と鑑賞に関わる情報が凝縮されている。
この本の凄いところは、単なるメカの紹介としてカメラ情報を載せているのではなく、立体写真の原理から各種撮影方法、鑑賞のしかたまで詳細に記述されていること。これ一冊あれば、立体写真をどのように楽しむか、という自分なりのスタイルをデザインすることができる。
僕はこの本を熟読して、まずはリアリストフォーマットのカメラとビュアーを買って、ステレオスライドで鑑賞、ゆくゆくはマクロ撮影にも挑戦、6×6フォーマットは余裕ができてからかな、なんて考えた。この本をカバンに忍ばせて、新橋、銀座界隈の中古カメラ店を巡った頃を思い出す。
中古カメラ店で手に入るステレオカメラはこの本に網羅されていて、基本的なスペックも紹介されているから、どれを買うかはこの本の情報でおおよそ絞り込んでおいた。シャッタースピードの範囲が充実していて、距離計連動で、リアリストフォーマット。こうして絞り込むと、リアリスト、リベア、ウォーレンサック、ビビッド、カラリストⅡ、エディクサⅢA、キンダー、アルペンの8種類。あれ?、後から気付いたけど、この本にはラピッドが載ってないですね。
それはともかく、国内の中古カメラ店で手に入るものといえば、リアリスト、リベア、ウォーレンサック、ビビッド、カラリストⅡぐらいになる。さらにレンズはF3.5より明るく、という贅沢な絞込みをするとリアリストかウォーレンサックのどちらかになり、価格的にも手に入りやすい方ということでリアリストに行き着く、というわけです。
僕がステレオ沼にはまったのは、この本の中で数々のステレオカメラを紹介するだけでなく、ステレオ撮影から鑑賞に至るまでのプロセスを書かれた島和也氏のおかげと感謝しています。この本の中にはその他の方々が色々なアプローチで立体写真について語られています。資料価値として第一級と思われる一冊、古本でも手に入る環境の今、一読されてはいかがだろう。
投稿者 J_Sekiguchi : 2017年10月05日 10:00 | コメント (0) | トラックバック