STEREO CLUB TOKYO

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「マウント楽ちん大作戦」の補足

全体を通して「どういうしくみ?」とか「どこが工夫?」というところがわかりにくいと思いますので補足いたします。

①自作の紙マウントで糊を扱う作業は「手がべたべた」になりますので、まず先にスティック糊を塗り、乾かしてドライな状態にします。乾いていても、アイロンを使うと糊の樹脂成分が高温で溶けるのでホットボンドと同じ仕組みで接着ができます。フィルムを扱う作業が格段にやりやすくなります。
 このアイロンをラミネーターに替えたらさらに楽、というものです。

②ラミネーターでは、フィルム面にも熱がかかってしまいます。フィルムは僅かに湾曲しているので、フィルムの一部がラミネーターの高温部分に触れます。触れていない部分との大きな温度差のため、乳剤面のゼラチン層に皺ができてしまいます。
 では、フィルム全面に均一に熱がかかればどうか?という実験がうまくいったので、そのような治具を紙で作ったのです。本当はフィルム面に熱が伝わらないようにするのが一番でしょう。これは今後の課題です。

③ラミネーターは手で押さえつけるアイロンよりも、温度、圧力ともに低いようです。そのため、より低温で溶ける樹脂が望ましいのですがなかなか見つかりません。
 一度乾いた糊に水をスプレーして湿らせる方法は、単に接着力を回復させているようにも見えますが、接着力の回復は十分ではありません。
 それよりも、水分があることで熱の伝わりが格段に良くなりますので、接着部分の温度が急激に上昇する効果があると考えています。このため、糊の樹脂成分が効果的に軟化すると推測しています。

④ラミネーターの効果は自動化だけではなく、均一な圧力がかかりますので、マウント仕上がりが平坦になるという効果もあります。

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月29日 08:00 | コメント (2)

スタジオデラックス(改)

 リアリストの無二の友、露出計のスタジオデラックスは頼りになるヤツだ。リアリスト同様、電池を使わずいつでも動作する。この「いつでも」というのがイイ。電池が消耗して撮影できないこともないし、電池が液漏れして接点が腐食することもない。だがあるとき内部から、部品が動く変な音がするのだ。
 このままではまずい。直感的にそう感じた。このままにしておくと動かなくなる。普通ならメーカーに修理に出すのだろう。僕は自分でネジを回し始める。もちろん、専門家に頼んだほうが安心できるに決まっている。本来の性能が出るように修理し、それを保証してもらえるからだ。
 僕は何でも自分でネジを回すわけではないが、品質保証ができないものなら、自分で直したって同じじゃないか、なんて思っている。中古のボロいスタジオデラックスは自分でネジを回した。でも、ボロでもセコニックは修理後に品質保証をしてくれるかもしれない。それを確認せずにネジを回したのは、やっぱり中身を見たかったんだな。
 昔の機械は手順どおりネジを回せば素直に分解できる。最近のヤツは、ネジを回しただけじゃだめで、プラスチックの爪を無理やり外さなければ分解できない。そんなことを考えながら、いくつかのネジを回すと、露出計の心臓部があらわになった。結構単純な構造なんだなあ、と感心する。変な音がする原因は内部のネジが緩んでいた。
 修理は簡単。でも、どうせ分解したのだからと、ちょっと手を加えたくなった。常用のフィルムとシャッタースピードで絞り値が直読できるように、新しい数値を付け加えた。プリンターで小さく数字を印刷し、糊で貼り付ける。たったこれだけで、快適に測定ができるようになった。マネしてもいいけど、セコニックの保証は得られない。

スタジオDX.jpg

四角枠の数字はISO100でH測光1/100sec、丸枠の数字は同じくL測光1/50secのときの絞り値

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月27日 10:00

マウント作業の新方式

 さて、フィルムへの熱影響がないように治具を作った。今度はラミネーターの温度設定を最高温にしてみよう。被験物は自作のマウント、接着剤はPVPのスティック糊をあらかじめ塗って乾燥させている。さて、結果はどうか。
 一応は接着ができているが、まだ十分に着いていない。フィルムの変形はなく、一安心。ただ、実験の結果わかったのは、フィルム面に接触する治具の紙面には、コート剤が無いほうがいい。白色の面は簡単に言うと白い塗料のようなものをコートしてある。このコート剤が剥がれ、細かいゴミとしてフィルム面に付着する。これがまた、かなり強力にくっついちゃうのだ。くれぐれも気を付けてください。フィルムに接するのは茶色のクラフト面。
 ここで、過去に市販されていたヒートシールマウントを同様に処理してみる。ところが、これが全く接着されない。どうやら、アイロンほど温度が高くないことと、ローラーの圧着力がそれほど大きくないことが原因のようである。
 自作マウントの場合、より低い温度で接着できるように工夫をすれば、フィルム面へのダメージもより小さくなるはずである。そう考えて、PVPより低い温度で接着できるものを探してみた。合成糊に使われているPVALを試してみたが、うまくはいかなかった。どうやら、接着面の密着性も関係している。さて、低温でよくつく接着剤、無いものか。
 あるとき、切手を手にしてひらめいた。乾いた糊なのだからもう一度水分を含ませたらどうか。フィルム部分に覆いをかけ、霧吹きで片側を濡らす。そのまま治具にセットしてラミネーターに投入した。設定温度は一番低くしてある。
 さて、結果はどうか。なんと、完璧に接着され、フィルム面もマウントも素晴らしい平面に仕上がっている。これなら簡単。新しい方法の完成だ。さあ、溜まっていた長巻24本分、約700枚を一気にやってしまおう。(おわり)

H420c.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月22日 10:00

超兵器H420号

 誰でも知っているラミネート加工というのは、ステレオマウントのヒートシールと仕組みがよく似ている。熱で溶ける接着剤を塗布したフィルムで紙をはさみ、加熱したローラーで圧着するのがラミネーターなのだ。だけど、ステレオマウントのような厚い素材を通すことのできる機種は限られている。すでに紹介したアコ・ブランズ・ジャパン社GLMH420型は、1.0mmまでの厚い素材でもラミネートすることができる仕様で、ホビーユースとしては稀有な存在だ。
 それに、この機種はローラーの加熱温度を3段階で調節することもできる。ステレオマウントを作るには高温がいいのか、低温がいいのか。実験してみなければわからないのだが、温度の選択ができるというのはいいことだ。
 さて、さっそく実験をしてみた。マウントをそのまま通すと、露出したフィルム面に加熱されたローラーが直接触れてしまう。熱の伝達の点ではマイナスだが、二つ折りにした厚手の紙で挟んで通すことにした。さすがに初めてのことなので、機械に通すときには緊張する。ほんの十数秒で加工が終わり、機械の後ろから被験物が出てきた。
 なんと、フィルムの乳剤面が熱で変形している。マウントの接着は・・・いまひとつ接着が弱い。機械の温度設定は最低温にしている。温度を上げることはできるが、フィルムはさらにダメージを受けるだろう。はてさて。
 まずは、フィルム面のダメージを回避する方策が先だ。フィルム面が湾曲して高温の部分に直接触れないように、マウントと同じ厚紙で窓の部分を覆うことにした。マウントを自作したときに切りかすとして出た部分を使う。若干サイズを小さく加工している。これを厚紙の台紙に位置合せをして貼り付け、さらにマウントをセットしやすいように位置合せのパーツを貼り付けた。この治具で何とかうまくいって欲しい。というわけで再実験。(つづく)

H420b.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月21日 10:00

マウント楽ちん大作戦

 未だにフィルムでステレオ撮影をしている人は少ないだろう。ステレオ・デジカメが登場してから、フィルム派は激減、絶滅の危機に瀕している。デジカメという脅威が駆逐している、のではない。だいたい、ポジフィルムでステレオ写真を作るということ自体、とってもメンドクサイのだ。メンドクサイことは誰でも嫌い。これが激減の原因だ。
 自分でポジをマウントに仕上げるときに、とっても面倒なのがマウントのシール。アイロンで接着できるとはいえ、一枚ずつ、フィルム面を避けながらアイロンを押さえる作業はくたびれる。時間も力も必要。しかも単調。ツマラナイ。
 こういう、単調でツマラナイ、くたびれる作業というのは機械に任せてしまいたい。いくらフィルムで撮ることが好きだといっても、僕だってこんな作業はとってもイヤなんです。有能なロボットでもいてくれれば、すべてお任せしたい。
 まあ、全てをお任せできなくても、フィルムをセットしたマウント台紙を機械の入り口に入れれば、後は自動で出口からシールされて出てくる、そんなことぐらいはデキルのではないだろうか。そんなことを毎日考えていた。
 マジメに考えると、加熱されたローラーで挟んで、モーターで送ればいいのだ。単純な構造。自作することもできそうだけど、僕は電気モノには弱いのである。特にヒーターは怖い。火傷だけじゃなく、漏電の可能性も高い。
 自作は無理かな~なんて、思考が行ったり来たりする日々が続いていたが、市販でこういった機械があることに気が付いた。ラミネーターである。書類をフィルムでパウチするときに使う機械です。まさにぴったりの機械。
 早速、アコ・ブランズ・ジャパン社GLMH420型を選定し、購入した。ハロゲンヒーター採用のクイックスタートラミネーターA3対応マシンである。作業の詳細は追って紹介しよう。(つづく)

H420.jpg H420a.jpg
▲導入した最新鋭機w                ▲怪しく光るハロゲンヒーター

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月20日 10:00 | コメント (2)

もう一つの窓

 リアリストをヨーロピアンフォーマットに改造したときのこと。画面の横幅を広げたのだから、ファインダーもそれに合わせて広げた。だが、マスクを切り広げて視野を広げても、視野の四隅が欠けてしまう。それなら、外付けのファインダーを取り付けてみようと考えた。リアリストのホットシューにぴったり合うファインダーだ。
 ところでこのホットシュー、真ん中にシンクロ接点が飛び出している。邪魔に思う人もいるだろうが、この方は理にかなっている。もともとシューというのはフラッシュ用ではなく、ファインダーや距離計を取り付けるためのものだ。ここにフラッシュも付くようにして電気接点を設けるとき、カメラ側は平坦にしてフラッシュ側を出っ張らせた。これだと、フラッシュを取り付けるときに、間違ってフラッシュ側の接点が短絡してしまうことがある。取り外すときも同じ。
 リアリストのシューはフラッシュ専用として設計され、短絡しにくいオリジナル接点を用意したのだと僕は推理している。熱を発する閃光電球を使うのだから、安全面では出べそシューの方が優れている。
 さて話はファインダーに戻り、この出べそが邪魔しない外付けファインダーをebeyで探した。欲しいときにはあるものだ。どういうわけか、横幅が寸詰まりに作られたファインダーを見つけた。何かのカメラ専用のものだろう。パララックス補正機構もある。画角もちょうどよく、ヨーロピアンフォーマットにぴったりと思われる。ドイツ製。
 早速落札し、ヨーロピアンに改造したリアリストに取り付けた。覗いてみると、んん??こんどはリアリストのレンズカバーが視野を邪魔するではないか。取り付けた感じはとてもいいだけに残念。レンズカバーの跳ね上げ角度を制限するようにすればだいぶ改善するのだが。やっぱり出っ張るファインダーが邪魔なので、結局外して使っている。

ファインダーON.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月13日 10:00

冷蔵庫を探そう

 フィルム派の人々で、なくてはならない大型設備がある。冷蔵庫である。とはいえ、いまどきの家庭で冷蔵庫がないというほうが珍しいだろう。僕も、フィルム達を小さなトレイに入れて、邪魔にならない場所にそっと置いている。
 常温で保管できるフィルムもあるけど、それでもやっぱり冷蔵庫に入れておきたい。トレイに入れておくのは行方不明にならないようにするためだ。昔はシートフィルムなんかも置いていたから、けっこう邪魔者扱いだったけど、ロールフィルムだけならそれほど大きな場所は占拠しない。たまにトレイの中に缶ビールがまぎれたりするけどね。
 というわけで、普通は不自由しない大型設備なんだが、例えば家から離れて生活をしなければならない場合、けっこう悩むものだ。新しい冷蔵庫、どうしよう。僕にもそんなときがあった。
 仕事の都合でやや長期間、家族と離れて住むことになった。食う寝るところに住むところ、には困らないのだが、冷蔵庫がない。新しく買おうにも、どうせ後で無用の長物になる。テレビは余分にあっても何とか工夫して使うけど、冷蔵庫は二つもいらない。小さい冷蔵庫でも、一抱えもあるようなのはやはり邪魔だ。
 生活する上で冷蔵庫が基本的に必要ではなかったが、フィルムの保管にはどうしても必要だ。何か良いものはないか。探しているうち、どうせ買うならちょっと洒落たものが欲しい、なんて欲が出てきてしまった。
 商店などで見かける、清涼飲料水のブランドロゴが入った、ガラスケースのような冷蔵庫。タワー型でそれなりに大きいが、中身がよく見えるというのはなんだかいい。中古でもいいから、デザインのいい物はないものか。ずいぶん探した末、このタイプは断熱材を使っていないから消費電力が馬鹿にならない、と聞いた。で、あっさり断念した。

冷蔵庫.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月06日 10:00