STEREO CLUB TOKYO

赤い紐

 ステレオリアリストの無二の友、スタジオデラックス。僕の持っているのは古いタイプのもので、記憶もおぼろげながら中古で数千円だったはず。セコニックのカタログを見ると、受光素子が変更になっているものの、ほとんど昔のままの姿で今でも販売されているのが嬉しい。でも価格を見て驚いた。けっこうするのね。
 僕のスタジオデラックスはいろいろ手を加えていたり、ダイヤルの隙間に埃が入っていたりで結構くたびれた感じである。それでもしっかり働いてくれている。受光感度を切り替えるスチールの遮光スライド板が一枚付いているけど、これも擦り傷が結構多くなっている。このスライド板が大事。紛失したら一大事だ。
 そんなわけでスライド板は丈夫な紐で本体とつないでいたのだが、これがもう危ない。使い始めてかれこれ10年も経つと紐にほころびがでてくる。耐久性重視で取り付け方も工夫したものだったけど、そろそろ交換だ。
 さて。交換する紐はこの際、ちょっと工夫しようと思う。今まで使っていた紐はナイロンを芯線にして合成皮革のようなもので被覆したもの。芯線が丈夫なので選んだものだが、もう少しかっこよくしたい。
 リアリストのカメラストラップを作った流れで、ここは本革でいってみよう。ストラップ用に買った革は厚すぎて使えないので、ハンズで新しい革を買った。少しだけあればいいので、一番安い、薄手で端切れのようなものを百数十円で購入。いろいろな色があったが、なるべく硬い革を選んだら赤い革になった。
 スライド板は抜き差しをするので、紐はある程度の長さが必要。端切れの革では長さが少し足りなかったのでつなぎ部分を工夫した。紐というか帯になったが、カシメ鋲でつなぎ、いい感じに仕上がった。

 

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年02月07日 10:00

自作本革ストラップ

 ウツキカメラで買ったストラップは本当に重宝している。オリジナル商品だったと思うのだけど、シンプルながら長さの調整ができてとても使い勝手がいい。同じものがもう手に入らないのがとても残念だ。
 では、香港から送られてきた本革紐を使ってこれと同じようなものを作ろう。まずは金具の調達。今はネット通販でも手に入るが、東急ハンズにもあるので最初は実物を手にとって選ぶ。ウツキさんの長さ調節用の金具は、尾錠のピンを取り外して使っていることがわかった。同じ尾錠はなかったが、似たようなものを選び、二つ買う。
 この他、尾錠に革を縫い付けるためのカシメも買う。問題はカメラの吊り環に通した革を留める金具だ。取り外しができるようにしなければならない。これが手に入らない。あれこれ悩んで、シカゴスクリューというものが使えることがわかった。これは通販に頼ることとなったがebayで安価に済ませることができた。
 さて、次は革紐。こういうものは一枚の革から取った複数の紐をどこかで繋いでいる。上手に繋いでいるのだが、革の柔らかさや質感がここから変わってしまっている。繋いでいるあたりから裁断して、同じ質感の紐を二本取る。傷やよくない部分を避けて、長さは自分の使いやすい寸法にして裁断し、切り口を仕上げる。
 あとはパンチで革に穴をあけ、部品を繋いで完成だ。カシメの打ち方がへたくそだけど、これもオリジナルだからこそと誇りに思おう。早速リアリストに通すとよく似合っている。まだ革が硬くて馴染んでいないけど、使っているうちにいい感じに古びてくれると思っている。この他にも調整機構を変えたオリジナルストラップを数本作ったが、素材はまだたくさん残っている。斬新な一本ができないか、更に思いを巡らせているところだ。

 
▲グリーンがシカゴスクリュー、黄色はカシメ              ▲シカゴスクリュー

※香港から来た革紐の話は前の記事をご覧下さい。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年01月10日 10:00

もう一つのめがね

 実はレデュフォーカスを2個持っている。一つはebayでクリスマスの時期に買った。当時はebayでもなかなか出物がない珍しいモノだったが、クリスマス時期にはやはりこういう珍しいものがいくつも並ぶ。
 こういうものは一つあれば十分なのだが、うっかりリアリストを首からぶら下げたまま、有楽町の電気ビルにあるお店に立寄ってしまった。いつもは一通り眺めて満足するのだが、もう一つのそいつがウインドウに鎮座している。ほほう、珍しい。でいつもは終わるのだが、値札を見たのがいけない。安すぎるのだ。
 前の一つがクリスマス価格だったので、もう一つ安く買ったら中和されて・・・なんて考えるのが沼にどっぷり嵌った者の特有の症状なのだ。安い理由はレンズに傷が多いという。でもこのレンズはコーティングが弱く、ここのダメージが傷に見えることがある。手に取らせてもらって案の定。写りには影響がなさそうだ。
 それでも何とか堪えるのがいつもなのだが、首に下げているリアリストに付けさせてもらった。どうやらベースプレートに歪みがあって、取り付けがしっくりこない。じゃあいいや、というのが普通の人。これは直してやらねばならんと思うのが病気の人。結局リアリストに取り付けたまま、外さずに代金を支払い、お持ち帰りとなった。
 レデュフォーカスのレンズユニットをベースプレートから外すのは比較的簡単。だけど気をつけねばならないのは、左右のどちらかはベースに固定されず、ガタが残るようにネジに工夫がされている。ガタがないと、カメラに取り付けるときの僅かな寸法差を逃がすことができないからだ。マネするときはここに気をつけてね。ベースプレートの矯正は簡単。ばっちり組み立て、あとは試写を待つのみ。しばらくは眺めて楽しむことにした。


投稿者 J_Sekiguchi : 2012年12月27日 10:00

改造めがね

 レデュフォーカスのファインダーをバラバラにしたので、改良の工夫をしてみようと思う。引き出しを漁るとニコンFM・FEシリーズ用の視度補正レンズが出てきた。丸型、マイナス2D。僕はニコンのカメラを持っていないから、これはこういった工作のために買っておいたものだ。ニコンは旧型機用のアクセサリーを継続販売している。視度範囲もプラスからマイナスまで、しかも度数も強いものまで幅広く用意されていて使いやすい。
 この補正レンズをファインダーアイピースの後にあてがって覗くと、ぼけて見えていた景色が一変する。だが、取り付ける方法がない。なんとかカッコいい方法で視度補正レンズを組み込めないだろうか。もしかして、ファインダーの中に補正レンズを入れたらいいかもしれない。ファインダーをバラバラにしたので実験だ。
 ファインダー鏡筒の中に丸型の視度補正レンズを金枠ごと滑り込ませると、すんなり収まるではないか。仮組みして覗くと、金枠で視野が狭くなることもない。でもレンズ越しの風景はいっそうぼやけてしまった。やっぱり、補正レンズはアイピースの後に置かないとだめ。光学の知識なしでは思いつきもうまく行かない。
 結局、ここは簡単に済ませてしまおうという結論となった。正規の向きとは反対になるが、補正レンズをファインダー金枠に接着剤でくっつけた。もちろん、なるべくカッコよくなるようにしたよ。接着剤がはみ出しているようではいけない。ぱっと見、もとからこういう形だったと思わせるような仕上がりを目指した。
 とりあえず一件落着なんだけど、ファインダーの内部に補正レンズを入れることをまだ考えている。今回は凹レンズだったけど、凸レンズだったらどうだろう。どうせ失敗するのだろうけど、試してみたいものである。

手前が改造品、奥がオリジナル。なんで2個あるかはまた次の機会に。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年12月20日 10:00

ストラップぐるぐる

 ステレオリアリストのオリジナルストラップがあるかどうかは知らない。昔のカメラはストラップ金具が特殊だったりする。だけどリアリストの金具は比較的素直なものが付いているから、現代のカメラにも使われている普通のストラップのようなものが使われていたんじゃないかな。もちろん、素材は本革で。
 僕は、新橋のウツキカメラで売っていた本革のストラップを使っている。長さの調整も簡単にでき、シンプルな作りで古いカメラによくマッチした。使い始めの頃は硬い感じもしたけど、使ううちに柔らかくなり、適度に古びてくれるのでこれがまたいい。同じデザインの茶と黒を今でも愛用している。
 さて、モノクロのポジ現像ができるようになってから、使うカメラの台数が多くなった。あのフィルムも、このフィルムも今使いたいとなると、休眠中のカメラを稼動させなければならない。調子の悪くなっているカメラを久しぶりに点検し、楽しみながら分解調整する。でも、困ったことにストラップが足りないのだ。
 ウツキカメラにあったものがもう数本欲しい、と思うのだけど。でもウツキカメラはもう存在しないのだ。黒のストラップを買った新橋店も、茶のストラップを買った銀座店ももうないのである。寂しいね。
 こういうとき、じゃあ自分で作ろうと思うのである。でも、本革素材は結構なお値段がする。そこでebayね。検索すると、香港の業者が幅10mmの本革紐を売っている。送料込みでも、国内ではこうは安く買えまい。しかもストラップにちょうどいい感じ。しかし長さが20mとあるではないか。何かの間違いと思ったが、届いた荷は確かに20mはあろうというシロモノ。苦笑しながら、何台分のストラップができるかな、などとデザイン考案に耽っている。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年12月13日 10:00

レデュフォーカス再び

 ステレオリアリストのレンズ焦点距離は35mm。これを25mmの広角にするアタッチメントがシュタインハイル社製レデュフォーカスだ。常々、変な名前だと思っているのだが、“数を減ずる”という動詞“reduce”から来ているのだろう。つまり、焦点距離を減ずるものですよ、と。それより、画角を拡大します、という意味が良かったんじゃないかと思う。でも、「なんとかエクステンダー」という名前もどうだか、という感じではあるが。
 取り付け方法は前に紹介したのだが、カメラのビューファインダーを塞いでしまうことと、画角を変えねばならないことから、専用のビューファインダーがぶら下がるように設えてある。結構じゃまな位置にあるのが玉にキズ。
 レデュフォーカスを取り付けたリアリストは、ちょっとそこいらのカメラにはないような、クラシカルだけど超高性能な機械といったオーラを強力に放つ。その威圧感はなかなかのものである。
 見かけはともかくとして、持ちづらい形にトランスフォームするので使いづらい。もう一つの不便がぶら下がっているビューファインダー。カメラの底部にあるから置き場所に困る。しかもよく見えないのだ。
 このビューファインダー、友達から眼鏡を借りた風景が見える。焦点が合わなくて、目を凝らしていると頭が痛くなりそうなあの感じ。自分の目が悪いのか、ファインダーが壊れているのか。ファインダーの構造をよく見ても、部品が足りないふうではない。でも覗くと、レンズが一枚入れ忘れられている感じ。
 それなら、補正用のレンズを入れてみたらどうだろう。そんなことを考えてみたのだが、使えそうなレンズが手元にない。使えそうなものが手に入ったら試してみようと思うのだが、なかなかできないでいる。

 

ファインダーを取り外したレデュフォーカス本体と、バラバラになったファインダー

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年12月06日 10:00

置き忘れた!

 海外に行くときは、必ずステレオ・リアリストがお供でついてくる。それが当たり前になったのだが、たくさんのフィルムを持ってゆくことに工夫が必要であることは、前に紹介したとおり。けっこう苦労する。
 撮影本数が多くなると、撮影順番を記録しておいたほうが後々便利だ。マウントのときには、撮影順に作業をしたほうがやりやすい。そんなわけで、たくさんのフィルムを使うときはフィルムIDユニットを使う。
 それは、以前にリアリストの付属品として紹介した、小さな折りたたみルーペのようなヤツ、ST-523である。飛行機に乗る前日、旅の準備の仕上げとして、あらかじめ番号を書いた紙をセットした。
 このアクセサリー、金属製で折り畳みができ、なかなか良くできている。塗装もなかなか渋い。昔の機械製品によく見られた、微妙な凹凸が施された塗装がしてある。黒い本体には白文字でロゴがプリントされている。
 だが、黒一色という所がいけなかった。照明を落とした長距離飛行の旅客機座席ではよく見えない。鞄から出した後、所在が判らなくなった。それでも、鞄に入れなおしたというおぼろげな記憶で機を降りる。で、紛失。
 仕方がないので、何本目かを記録するのは、はじめのコマに自分の右手を写すことにした。数を数えるように指を折る。手のひら側と、甲側を使って10本目までは何とかなったが、その後はどうすることもできなかった。
 後日、航空会社に忘れ物の届けがないか問い合わせたのだが、どういう品物か伝えるのに苦労した。古いカメラの道具だと言っても理解されるはずもない。小さな黒いルーペと伝えたが、残念なことに結局見つかることはなかった。
 しばらくしてebeyに出品されているのを見つけ、送料込み千円ほどで再入手。こんどは紐でも付けておこうか。

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投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月13日 10:00

いにしえの露出計

 一時、露出計の針の振れる姿が愛おしくて、小さな彼らを買い求めた時期がある。街の中古カメラ店に立ち寄っては、小さな彼らが棚の隅に隠れていないか探す。何かの下に隠れているのではないかと、ジャンクのかごを掘って探す。
 まるで森に入ってカブト虫やらクワガタ虫を探しているようなものだ。見つけると手に取らせてもらって、昆虫の複眼のような形をしている受光部を観察し、触覚のように振れる針を見つめる。ボディは黒光りのするベークライトだったり、コガネムシのように輝く梨地のクロムメッキだったりする。明るい方に向けると、生き物のように針が動き出す。
 50年ほど前に生まれた彼らは、セレン光電池を動力にしている。光が当たると電気が起きるものだ。いまでは百円で買える電卓にも太陽電池が使われているが、セレン光電池は太陽電池の先駆けだ。シリコンの太陽電池が主流になった現代では、セレン光電池はほとんど作られていない。劣化して起電力が弱くなったものを復活させる術は乏しい。
 それでも、弱々しく振れる針であっても、いつか使えるようにできるかもしれないという思いでいくつも買った。もしかしたら、まだ使えるセレン光電池と交換すれば、また元気に動き出すかもしれない。
 でも、フィルムの感度設定も、シャッター速度の表示もいにしえのもの。また動くようになっても、まるで古文書を読み解くようにして使わなければならないのかもしれない。それでも、この小さな奴等がカメラのシューに乗っている、それだけでも楽しいじゃないか。昆虫の複眼のような受光部が光を捕らえている。そんな姿が愛おしいのだ。
 僕の書棚の引き出しには、彼らが春を待つようにかたまりあって冬眠している。まるでテントウムシのように。いつか彼らを日のあたるところで使ってやりたい。せっかく、中古カメラ店の標本箱から出してやったのだから。

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投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月12日 10:00 | コメント (2)

工業規格

 カメラのストロボ接点で、丸型同心円のソケットがある。デジタル時代になってあまり見かけなくなったが、ちゃんと工業規格で仕様が定められている。JISB7102「カメラの同調発光機構のソケット及びプラグ」として、寸法と公差、その他の要求事項が記されている。JISは日本の工業規格だが、このソケットの仕様のもとはドイツだという。
 こんなふうに国家レベルで規格が定められていると、作る工場がまちまちでも互換性が生まれる。使用者には大きなメリット。年代さえも超越して使用できる。広範囲に使われるネジなんかも規格で作られている。
 汎用工業製品の仕様が明確になっていることは、その国の工業力の維持につながる。だからJISは、日本の工業近代化の早い時期に制定された。ストロボ接点のJISの、最後の方を見てごらんなさい。大学の先生とかカメラメーカー各社の、編纂に携わった方々の名前が列挙されている。メーカー各社の技術者達の知恵が集結されている。
 さて、そんな素晴らしい接点であるが、リアリストには備わっていない。当時のアメリカでは一般的な規格ではなかったのがその理由だろう。リアリストのホットシューは公の規格にはならなかった。カメラ筐体を穿孔して新しい接点を付けることもできるが、それではリアリストのオリジナリティが失われてしまう。だからアダプターで対処するのだ。
 リアリストの「でべそ型」ホットシューに取り付けるアダプターについては以前に紹介した。これは米国の一部の熱心なマニアが自作したものを購入したものだった。自作をするなら自分でもできる。いや、もっといいものが作れる。
 というわけで、中古カメラ店のパーツコーナー(素材市場)を漁る。偶然にも見つけたのがPENTAXのホットシューアダプターP2というもの。これをリアリスト用に改造してみよう。きっといいものができあがるはずである。

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ホットシューアダプター改造の顛末は後々ご紹介いたしましょう。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月28日 10:00

セルフタイマー

 自分の姿も一緒に写真に写りたい、そんなときに使うのがセルフタイマーだが、リアリストをはじめとしてセルフタイマー機構が備わったステレオカメラは皆無だ。いや、たぶん皆無だと思う。どうだったかなー。見たことがない。
 では、そういう目的でステレオ撮影ができないかというとそんなことはない。後付のセルフタイマーというのがある。これは子供の頃にウチにもあった。セルフ機構のないカメラにレリーズネジを使って取り付けるもので、ぜんまい仕掛けで動く。セットレバーを回してスタートボタンをスライドさせると、内部でガバナー機構がジーっという音を放ちながら作動する。セットレバーが定位置にくると、シャッターを押す棒が繰り出されてシャッターが切れるという仕組だ。
 レリーズの取り付け部分が二重のネジになっていて、押し棒の繰り出し量をカメラに合わせて調節できるようになっている。注意するのは、この押し棒はぜんまいの力で無理やり押すので、よく調整しておかないとカメラのシャッター機構を壊しそうな勢いで押しまくる。また、用心しすぎて繰り出し量が少ないとシャッターが切れない。
 子供の頃はおもちゃにして、歯車の音を楽しんでいたが、その時のものはもうない。こんなもの、昔のものを中古で丹念に探さねばならないのかなぁと、姿かたちを思い出していると、まだ現役で作られて販売されている。早速購入してみると、形もほとんど一緒。おもちゃにして遊んでいた頃の記憶がよみがえる。こういうものは一つあると便利だ。
 しかし、タイマーだとなかなかシャッターのタイミングが合わないというご意見もあろう。こういう場合はエアレリーズがお勧めだ。5mほど離れて、自分でシャッターを操作することができる。チューブを継ぎ足せばさらに離れて撮影もできる。それにしてもこのエアレリーズのポンプ、空気圧でぴょんぴょん動くゴムのかえるちゃんに付いているヤツに似ている。

セルフタイマー.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年05月21日 10:00

露出計の話・再び

 露出計は大きく分類して2種類ある。反射光式、つまり被写体の明るさを直接計測する方式は今やどのオートマチック・カメラも採用している。この方式に慣れてしまってから全く方式の異なる入射光式の露出計を使うと、こんな大雑把でいいのかな?という感じで戸惑うだろう。もっとも、デジカメをフルオートで使っている限りは知る由もない世界なんだが。
 一眼レフで採用されているTTL露出計は反射光式を発展させたものだ。レンズを向ける方向によって数値がめまぐるしく変化する。数値を追いかけながら、光を読んでいる気分になる。被写体の明るさを分析している気分になる。
 一方、入射光式露出計が示してくれる数値はそんなにめまぐるしく数値が変わらない。被写体に降り注ぐ光の強さを教えてくれるからだ。だから同じ季節、同じ時刻の同じ方角を向いた屋外の露出というのは大体同じ。
 感覚的に、細かく数値を教えてくれる反射光式のほうがいいンじゃないかと感じても、使い比べると入射光式を使ったほうがきれいに撮れている。白いものは白く、黒いものは黒く写る。ステレオではこちらのほうが合っている。見た感じそのままを写そうと思えば、入射光式の方が性に合っているのだ。一眼レフの多くは、画面の平均の明るさがある基準のグレーと同じ明るさになるように数値を示している。露出計の方式で、使い方は全く異なるのである。
 僕は、日中屋外でのリアリストの相棒にはスタジオデラックスが一番だと思っている。この露出計にはオプションで直読式スライドという測光部のマスクがあって、フィルム感度とシャッタースピードを決めておけば絞りの値を針が指してくれる。でも、リアリストの国際系列のシャッターに合うようには作られたものがない。そこで黒ケント紙を使い、光の通る穴の大きさを調整して自作してみた。ISO・100、1/200secで絞りが直読できるスライドだ。なかなか便利です。

スタデラ.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年05月18日 10:00 | コメント (2)

New・NDフィルター

 以前、リアリスト専用フィルターの枠だけ使って新しいフィルターを作ることは面倒だと書いた。実際、ガラス製のフィルターを小さく円形に切り取ることは難しいし、請け負ってくれる業者があるかどうか。あったとしても、値段の相談やら心配なことも多い。こんな面倒なこと、やっぱりできない。でも、このサイズのNDフィルターがあれば夏場の屋外で絞りすぎないで撮れるし、なによりフィルターを付けたままでレンズカバーを閉じることができる。こんな便利なものならやっぱり欲しいなぁ。
 というわけで思案の結果、樹脂製のフィルムフィルターをハサミで切って組み入れる方法を使うことにした。さて、元のフィルターの枠が使えるかどうか。今回のために新たに中古のリアリスト・フィルターを入手し、分解を試みた。その結果次のことが判明した。
・作られた年代で、フィルターガラスの固定方法が異なる。
・大きな枠のもの(おそらく初期型)は前側からリングをはめ込んでいる。分解しやすい。
・小さな枠のもの(最も多く流通)は、裏からかしめているので切削して分解する。
新しいフィルターとして使うなら、マーケットの流通量が少ないが初期型の「大きな枠」のものをお勧めする。分かりづらいかもしれないが、右側写真の右列のペアがこれ。大きさを合わせて厚紙で作った円盤でフィルムフィルターを挟み、切り抜く。分解した枠にはめ込んで、固定用のリングを再セットすれば出来上がり。作例では露出倍数が4倍になるように作ってある。
 小さな枠の場合、元のガラスフィルターを取り除くのがすごく難しい。ガラスを割ってから枠を削らねばならない。後付フィルターは、両面テープでモルトプレーンの小片を3カ所ほど貼り付けて固定している。作例では露出倍数が6倍になるように作ってある。
 こんなふうにして露出倍数の異なるセットを3組作り、ケースに入れて携帯している。カラーバランスも崩れず、とても使いやすいフィルターセットが完成した。

NDフィルタ.JPG
                小さな枠・露出倍数6倍 ▲
                          大きな枠・露出倍数4倍 ▲

投稿者 sekiguchi : 2008年02月23日 23:01

クリップオン露出計 マジ~ン・ゴー!

 リアリストには露出計が付いていない。だから単体露出計で計るか、勘に頼って露出を決めなければならない。勘ねぇ・・・リアリストにはよく見ると、シャッターダイヤル、絞りリング、フォーカスダイヤルに赤い点が付けられている。これは「このあかい点に合わせておけば、露出も大体合うし、ピントも大体大丈夫ですよ」という意味である。でもそれは昔のフィルム事情に合わせてあるから、現代の高感度フィルムではまったく意味を為さない。だけど、その要領で大体こんなもんだろうで撮っても何とかなるものではある。今はどうか知らないけど、ちょっと前なんかはリバーサルだってフィルムの箱に露出ガイドが書いてあった。お天気だったら1/250のF16ですよ、なんて風に。まあ、露出計なんかなくたって自由な感覚で撮ることも楽しい。アンダーに撮れちゃっても、アンダー狙いで撮った作風です、と言い切ってしまえばよい。それがあなたの適正露出。とはいえ、人間の目は順応というしくみのため、明るさを計るには向いていない。
 やっぱり露出計があるといいなぁ。というわけで、僕はスタジオデラックスをお供にしているんだけど、昔のクリップオン型の露出計もかわいい。反射光式の露出計の受光部には、トンボの目玉のようにレンズが並んでいる。針がのんびり動いて「あー、明るさはこんなもんかねー」的に示してくれる。これは雰囲気があってとてもイイ。リアリストのシューにバッチリ合うものはなかなか少ないけれど、うまく乗るとカッコよかったりする。測定の精度はあまり期待できないこともあるけどね。
 新しいところでは、フォクトレンダーのVCメーターがカッコイイ。リアリストに載せるため、出っぱりよけに台座をトンネル型のものに取り替えてみた。でも、シャッターの系列が違うし、デジタルはいまいちしっくりこない。やっぱりリアリストは’50sスタイルが合うのかなぁ、なんて考えたりするのである。

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投稿者 sekiguchi : 2005年05月07日 00:20

チョット不安なレリーズソケット

 リアリストには他のステレオカメラとは違い、スローシャッターが充実している上にバルブとタイムの両方があるから、三脚に据えて夜景撮影に使うと便利だ。意外に知られていないが、スローシャッターが充実しているステレオカメラは少ない。スローシャッターではブレ防止のためにケーブルレリーズは必需品になる。レリーズはシャッターボタンのそばにあるソケットを使うのだが、よく見るとネジがストレートに切ってある。市販されているレリーズのネジはタケノコ型になったテーパーネジだからちょっと合わないように見える。でも、実際に取りつけてみるとネジの最大径が同じだからなんとかなっちゃうのだ。でもムリは禁物。力一杯ねじ込むと、カメラ側のネジ山をつぶしてしまう恐れがある。もし、つぶれちゃったら?・・・知らない。
 まあ、あんまり怖がることもないのだけれど、どうしても心配な人は昔のレリーズを手に入れるのも一つの方法だ。ネジ部分がストレートに切ってあるレリーズが中古マーケットにたまに出ることがある。それもどうかと思う人には、レリーズを使わないで撮影する方法もある。比較的長時間の露出になるけど、シャッターをタイムにして黒い帽子か何かでレンズを覆っておいてシャッターを切る。帽子の開閉で露出をして、再びレンズを帽子で覆っている間にもう一回シャッターボタンを押してシャッターを閉じる。レリーズを忘れた時にも使える方法です。
 さて、リアリストにはセルフタイマーがないから、自分が写った記念写真なんかを撮る時には後付けのレリーズタイマーを付ける必要がある。これは今でも現行品が発売されている。でも、やっぱりネジはタケノコ。取り付ける時にはシャッターストロークをよく調整しておかないと、ネジの部分に強い力がかかるから注意してね。

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投稿者 sekiguchi : 2005年04月24日 23:40

カメラの鎧

 リアリストには専用の革製ケースが用意されている。丈夫に作られていて、今でも十分に使えるものが中古マーケットに流通している。このケース、年代によって大きく3種類ほどのバージョンがある。どれも本革製だけれど、最後期近くになるとコードバンのケースが登場する。コードバンというのは一般的には馬の尻の革のことを指す。このケースが他のものに比べると軽くて断然使いやすい。仕上げも革の風合いを活かした上品なものになっている。尻のカワを取られた馬には大変気の毒だ。大事に使わせていただく。
 さて、どのケースもボディを下から包んで三脚座で止める部分と、レンズからトップ部分にかけて包む部分に分割することができる。下側のケースは付けたままでもファインダーが覗けるように窓が付いている。昔の一眼レフにもカバーの一部を外して撮影できる「速写ケース」があったけれど、これと同じしくみ。
 ケースの上下をつなぐのは金属製のホックで、これがとんでもないイタズラをする。上側のケースを閉じたり開けたりする時に、このホックがカメラのトップカバーをこする。困ったことに実にこすりやすい位置にホックがある。リアリストのトップにおかしな擦り跡が付いていることがよくあるが、位置を調べると“ホックのしわざ”ということが判明する。一回や二回ではどうということはないが、50年も使われれば擦り跡も付くか・・・。
 ケース以外では、リアリストのロゴの入った本革製カメラバックもある。凝った作りのバッグで、中古マーケットでたまに売られていることがある。バッグのポケットに思いがけないレアアイテムが入っていたということもあるらしい。まるでドラクエの宝箱だ。形もチョット似ている。誰かが先に宝箱を開けていたらカラなんだけど、まさかミミックだったなんてことはあるまい。まあ、念のためインパスの呪文でもとなえてくれたまえ。

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投稿者 sekiguchi : 2005年04月10日 23:54

ワイド・リアリスト

 前回紹介したレデュフォーカスのつづきだよ。
これをリアリストにセットすると35mmレンズが25mmに変身する。明るさは変らないので露出補正はいらない。ただし、フォーカスはズレるので補正がいる。レンジファインダーで普通にピントを合わせたら、距離表示を二倍して合わせなおすルールになっている。手順としてはこれだけでいい。まあ、フォーカスを合せなおさなくても被写界深度が相当に深くなるから、ある程度絞っておけばいつでもパンフォーカスで使うことができる。
 レデュフォーカスは、取り付けるだけならばどのモデルにも付けることができる。ただし、レンズとの相性があるのだ。これは知っておかねばならない。F3.5モデルに使うと画質が極端に悪化し、ソフトフォーカスにしたような感じになってしまう。おまけに、イメージサークルが小さくなって画面の四隅までカバーできない。
 一方、F2.8モデルのイメージサークルはヨーロピアンサイズをカバーできるほどだから、レデュフォーカスを取り付けてイメージサークルが多少縮小しても大丈夫。レデュフォーカスを使うときはF2.8モデルを使おう。もちろん、EktarでもCUSTOMでもいい。ただし、F2.8モデルでもやはり画質の悪化は免れない。絞り開放からF5.6までは画面周辺のコマ収差が増大して見苦しくなってしまい、実用的ではない。コマ収差は絞ることで大きく改善するから、ぜひ絞って使ってほしい。F8以上に絞り込むと画質は飛躍的に向上し、画面周辺までシャープになる。これを忘れずに。
 アイテムとしてはややレアな部類に入るが、せっかく手に入れてもレンズのコバ塗りが剥がれ落ちているものが多い。そのままでもそれほど悪影響はないだろうけど。僕は自分で分解して再塗装し、ベストコンディションで使っている。

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投稿者 sekiguchi : 2005年03月26日 13:52

交換レンズがほしい

 ‘50sのステレオカメラはなぜかレンズの焦点距離がどれも35mm近辺のものしかない。ステレオ効果の関係でこの焦点距離が一番いいのかな?でも、望遠や広角のバージョンもあったらいい。現実にはRBTなど一部の特殊なカメラを除いてレンズ交換のできるものはない。レンジファインダーでステレオともなると、交換レンズのシステムを作るには機械が複雑になりすぎるのだ。残念。でも、後からコンバージョンレンズを付ける方法なら簡単だ。’50sにもそう考える人がいて、ステレオカメラ用の望遠や広角のコンバージョンレンズが発売されていたらしい。
 リアリスト用としては広角用のシュタインハイル社製”レデュフォーカス”が有名だ。ときおり中古マーケットにも登場する。大口径の前玉が印象的である。2群4枚構成で、カメラの三脚座を利用したブラケットと、レンズ鏡筒へのチャッキング機構でセットする。専用の広角ファインダーが下に付いていて”おでこホールド”が継承されている。焦点距離は25mmになり、明るさ(F値)は変らない。
 リアリストブランドでの発売ではなかったが、リアリストのレンズはもともとシュタインハイル製である、という説もある。それならリアリスト専用のレンズ設計かと思ったら、アタッチメントを変えてコダックステレオ用やリアリスト45用の他、その他のカメラ用にも供給していたらしい。広角があるなら望遠も、と思うが、Vivid用のよくわからないブランドのものが中古マーケットにたまに登場するだけで、リアリスト用のものは見たことがない。作られてはいたらしいが、存在自体が謎である。
 さて、レデュフォーカスは使ってみるとなかなかイイ。リアリストでワイド・ステレオが撮れる。でも、知っておかなければならないことも多いのだ。詳しいことは次回にしよう。

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投稿者 sekiguchi : 2005年03月12日 02:50

巻き戻しの助っ人参上

 ステレオカメラ達が作られた年代のカメラは巻き戻しがノブ式になっているものが多い。コダックステレオなどが数少ないクランク式だが、リアリストは例に漏れずノブ式だ。ノブでの巻き戻し、これがけっこう指が痛くなる。ノブが小さいからだが、リアリストも後期型になるとノブを大きくして巻き戻しが楽になるよう配慮されている。それでもクランク式に比べると操作性が悪い。
 そうなると、何とか改善しようと考える人は少なくないもので、巻き戻しノブに後付けでクランクをネジ付けしたり、ハンドルを接着するものが出てくる。でも、こうするとリアリストのフラットデザインが崩れてしまい、邪魔になったりカッコ悪くなったりする。この手の改造は一歩間違うと逆戻りできない後悔を味わうことになる。
 じゃあ、脱着式のアダプターにすれば?というわけで、過去にもKenTecブランドの脱着式アダプターが売られていた。これはノブのギザギザに合わせてかぶせるハンドル方式だ。金属製で丈夫そうだし、とても使いやすそうに見える。見える、というのは写真でしか見たことが無く、実際に使ったことがないから。欲しくてもマーケットに出ることはほとんどない、幻に近いオールドアイテムだ。
 ライカでも脱着式の巻き戻しクランクが後から作られたように、リアリストも多くのファンがいるから最近になって新しい巻き戻しアダプターが発売されている。これは樹脂を削って作られていて、大きなディスクに金属製のつまみが付けられている。ノブにかぶせて使うのだが、感心するのは取外しやすいようにセンターに押しノブが付けられている。使い勝手も良く、これがあればオールドアイテムは要らない。海外通販になるが、買って損はないアイテムである。

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投稿者 sekiguchi : 2005年02月26日 23:20

でべそアダプター

 ホットシューには”でべそ”がついているので、今の時代のストロボはそのままでは使えない。かと言って昔のフラッシュガンを常用で使うのはちょっと無理がある。なんとかして便利なストロボを取付けたいものだ。”そう思うひと濃度”は日本よりアメリカの方が高い。
 アメリカのステレオファン人口は日本の比ではない。さすが本家本元。元祖の国だ。要求する人口が多ければ、それだけ需要がある。なんと、アメリカではリアリスト用のホットシュー・アダプターの新品が売られているのである。早速取り寄せてみると、初めから専用に作られているのではなく、市販のシューアダプターに”でべそ”よけの彫り込みをしただけのシロモノだった。カメラの接点をシンクロソケットに変換するもので、ストロボとはシンクロコードでつなぐ。使ってみると、これがなんと非常に優秀で、今までの悩みが万事解決という優れた商品だった。今でもリアリスト用に色々なパーツを考案し、新しく売り出している業者があるけど、これを考えた人にはリアリスト同盟勲章を授けたい。
 ストロボを取付けるのに別の方法はないかな?と考えてみると、ブラケットを使う方法もある。ホームセンターでL字型のアングルを買って工作するも良し、写真店で適当なブラケットを購入しても良し。ただ、シンクロ接点はカメラのホットシューしかないからやっぱりアダプターは要る。このアダプターの他にも工夫次第で使いやすいものができるはずだ。そう、世の中にはツワモノがいるもので、トップカバーに穴をあけ、シンクロソケットを取り付けてしまう者までいる。さすがに、ここまでするかなぁ、とも思うけど。

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投稿者 sekiguchi : 2005年02月12日 01:42

人工太陽装置を取り付けよ!

 リアリストの時代、ストロボは既に実用化になっていたのだけど、まだまだ閃光電球を使うフラッシュガンが一般的だった。閃光電球というのは、電球状のケースの中にマグネシウムフィラメントが入っていて、これに電流を流して燃焼させ、発光するしくみになっている。大きさの割には大光量が得られ、そのパワーはストロボを凌ぐ。リアリストには専用のフラッシュガンが二種類用意されていて、そのうちの片方は中古マーケットにもよく登場するST52だ。何といっても、大きな金属製リフレクターが目立っている。もう少し時代が後になると折り畳み式のリフレクターが一般的になるのだけど、リアリストブランドのフラッシュガンは畳めない。まるで大きなお椀が付いているみたいに見える。ホントに飯が食えそうなお椀である。
 フラッシュガンは大電流を流すために大容量のコンデンサーを一緒に使うこともあるが、ST52は単三乾電池を三本だけ使って発光させるようになっている。当然、リアリスト用に作られているから、ホットシューには”でべそ”を気にせず取付けることができる。これを取付けるとホントにまあ・・・大仰だなぁ。
 閃光電球は以前はどこの写真店でも買えたけど、今では見かけることもほとんどない。もう作っていないのかな。つい最近まで作っていたようなんだけど。このフラッシュを取付けて”ボン”とやったらすごいだろうな。でも、閃光電球は一回ごとに交換する使い捨てだから、これで撮影するのはとてもとても金がかかる。昔はそういう時代だったのだ。僕は昔のGEブランドの電球を幾つか持っているけど、もったいなくてまだ使ったことがない。

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投稿者 sekiguchi : 2005年02月05日 00:01

モデルナンバーST523

 なんとも不思議な装置がある。ハンマーストーン塗装にリアリストのロゴが入っていてかっこいい。折り畳みのできるルーペのような格好をしていて、カメラレンズの先端に取付けると思われる側には凸レンズがついている。反対側にはメモホルダーのようなものがついている。折りたためばポケットサイズになるのだけど、何のために使うのだろう?
 実はこれ、フィルムを装てんして撮影を始める時に、フィルムにメモを写し込む装置なのである。リアリストを使った人ならわかりやすいだろうけど、撮影のはじめには2回分の巻き上げでフィルムを送る。これは、フィルムの先端が既に感光しているからやるのだけれど、この2回目の空送りで左側レンズにブランクのコマができる。右側のコマは既に感光しているので、ステレオペアにならないコマが生じるのだ。もちろん、これを普通の2D写真用としてムダ無く使うのもいい。でも、メモ用として使うのなら便利な方がいいだろうということで、このアタッチメントが考えられた。
 アタッチメントには強い度の凸レンズが入っていて、強烈なクローズアップレンズと同じ働きをする。マーケットでは当然中古品を購入するわけだが、中にはこのレンズが紛失しているのもあるから注意したい。実際に使ってみると、思いのほか鮮明にメモを写し取ることができる。旅行などで撮影本数が多いと、現像した後に順番を並べ替えるのに苦労する。メモがあると楽である。使ってみるとほんとうに便利なんだけど、どうしても必要かというと、どうでもいい気もちょっとする。

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投稿者 sekiguchi : 2005年01月29日 00:05

幻の偏光フィルターユニット

 フィルターの話がでたのでその続き。水面の反射をカットしたり、カラーコントラストを増すために使われるのが偏光フィルターだけど、二つ目玉のステレオカメラに使うのはかなり大変なことになる。フィルターには向きがあり、回転させて最適なポジションで撮影しなきゃならない。左右で位置をピッタリ揃えるのはめんどくさい事この上ない。ファインダーでフィルター効果を確認しようと思えば三枚要る。三枚のフィルターを同時に手で動かす・・・こりゃたいへんだ。前に紹介したフィルターホルダーではまずやりようがない。
 それではというのでリアリストの生みの親、Seton氏がD.W.社を退社した後にプロデュースした偏光フィルターセットがある。レンズカバー部分を交換して取り付けるこのセットは、左右レンズとファインダー用の計三枚が連動して動くようになっている。フィルターなしの撮影時にはカバーと同様に全体を上に跳ね上げられるし、撮影しない時にはフタができるようにカバーもついている。こんないいものならぜひ欲しいと思うが、総生産数が千数百個と極めて少ない超レア・アイテムだ。市場に出ても高値でとても手が出ないし、古いものだからフィルターの劣化で効果が弱くなっている可能性も高い。
 それではというので、僕も同じようなアイテムを考案してみた。市販の小径フィルター三枚を、銀ロウ付けで組み立てたフレーム(部品はDIY店で購入)にセットしている。ブラケットもDIY店で買ったアングルを利用している。各フィルターはワイヤーで連動して動き、ファインダーで効果を確認しながら使うことができる。フィルターを使わないときはフレームごと動かすこともできるのだ。Seton氏のデザインより携帯に不便だけど、実用面では互角だ。どうだー。

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投稿者 sekiguchi : 2005年01月16日 23:36 | コメント (2)

レンズフードのひみつ

 リアリストの付属品類にもそれぞれ番号がついている。ST○○というのがそれ。今回紹介するのはST54、レンズフードです。海外ではサンシェードと呼ばれるこのアイテム、逆光に強いリアリストにはなくても特に困らない。だから無理をして手に入れる必要はないんだけど、本来の日除けの役割のほかにもうひとつ特技があるのを知っているかな。それはフィルターホルダーとしての機能だ。前に紹介した小径のフィルター枠を使って新しいフィルターを作ろう、なんて苦労はしなくていい。よかったね。
 カメラ取り付けの部分には櫛歯が刻まれていて、レンズの絞りリングにはめ込んで使う。金属製の本体はネジで前後に2分割でき、分割のところにはシリーズⅤのフィルターが入るように工夫されている。シリーズⅤは昔の規格で、ネジのない金枠にガラスフィルターがセットされている。ちょっと入手が難しいが、特注で新品を作ってもらうことができる。もちろん、中古マーケットでも根気よく探せば実用的なものが見つかるはずだ。特にNDフィルターは屋外撮影で絞りの余裕ができるので便利だよ。シリーズⅤが手に入らなくても、市販のゼラチンフィルターを丸く切って使うことができる。種類も多いしかさばらないので、思いのままのフィルターワークを楽しめるというわけだ。どうだー。
 さて、欲しくなった人のためのガイド。ST54にはアルミ製と、真鍮+ニッケルメッキ製の2種類がある。アルミの方が軽量で実用的。真鍮製はズシリと重いが見た目はイイ。マーケット価格は最近ぐっと下がって共に$40程度かな。取り付け固さは、櫛歯を僅かに曲げて調節してね。リアリストカスタムには絞りリングのノブに櫛歯が当たるから、櫛歯の一枚を削るなどして工夫して取り付けてみてねー。

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△左がアルミ、右が真鍮+ニッケルメッキ。中央の写真はNDフィルターを入れたところ

投稿者 sekiguchi : 2005年01月08日 05:43

コインケース?

 作画に凝ってくると手を出したくなるのがフィルターだ。今普通に売っている、レンズの先端にねじ込む方式のフィルターは規格化されているから、イマドキのカメラに使うのなら迷うことはない。でも、リアリストにはレンズの先端にネジはないし、径も小さい。これに合う現代のフィルターは無い。いくら探しても、ない。こういうコトはクラシックカメラではよくあることだ。だからしょうがない、とあきらめましょう。
 そう言っちゃうと話が終わっちゃうのだが、リアリストにはちゃんと専用フィルターが販売されていたのだ。レンズ先端にはフィルター取付のネジがないので、レンズにかぶせる方式になっている。リアリストには色々なレンズバージョンがあるが、レンズ枠のサイズは同じだからどのモデルにも使える。ただし、当時のフィルターの用途はちょっと限定されたものになっている。これら専用フィルターは、レンズ保護用透明ガラス、フラッシュ用色調変換フィルター、タングステンフィルム用色温度変換フィルターの3種しかない。これらが革製のかっこいいケースにペアで計6枚入ったセットが、たまに中古マーケットに出ることがある。革製品なのに、昨日店先に出ていたかのような真新しい状態のものがあることに驚く。こんな時、アメリカ人というのは物を大切にする人たちだなぁ、と妙に感心したりもする。
 残念ながらリアリスト専用のサイズで、作画に凝るために微妙に色温度をかえたり、色調をコントロールするフィルターはない。でも、この古いフィルターから枠だけ使って、新しい現代のマルチコートフィルターを組み入れる、ということもできないわけじゃない。でもそんなめんどくさいこと、僕はしませんけどね。

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投稿者 sekiguchi : 2004年12月26日 01:33