STEREO CLUB TOKYO

フォマパン100使用注意

 チェコのフィルム、フォマパン100は、セピア反転現像処理で手軽に高品質のモノクロポジが得られるフィルムです。このフィルム、ヨドバシで手に入れることができましたが、円高の恩恵が薄れるとともに購入が不可能になってしまいました。為替の影響だけでなく、パトローネに貼られた品名シールの下にC41処理の表記があることも問題視されたようです。ヨドバシのほか、国内の流通はほぼ途絶えてしまいました。
 さて対策。国内販売店に頼らずとも、海外通販で簡単に入手することができます。今回、アメリカの通販業者から100フィート巻きを購入し使用してみました。海外通販ならバルクを取り扱うショップもありますし、送料の安い店を使えば、1ドル100円を越える今でも1本当たりの価格は300円台まで下がります。
 冬場にパトローネに詰め、春先に撮影し、現像するのが今頃になってしまいました。いつもの結果を期待して現像タンクを開けると、なぜか画像が薄い。念のため、同じ処理でヨドバシから購入したフィルムを現像すると良好な画像が得られました。これは何か乳剤の変更があったと考えられます。
 フォマパンのバルクフィルムには、パーフォレーションのところに番号が入っていません。現像の進行程度を判断するためにこの番号の濃さを参考にしますが、その方法が使えません。ですが、ベースの濃度から推察するに、現像が進みすぎて薄くなっている可能性が高い。コントラストに問題はなさそうです。
 同じ処理液で、今度は現像時間を30%短縮してみました。結果、やや画像が濃くなり、コントラストの崩れもなさそうです。もう少し現像を抑える必要があります。以降、データ取得を進めます。

バルク1.jpg

現像1.jpg
▲水洗中。画像が薄い感じ、わかるかな。

【追加情報】
乳剤の変更というより、ロットごとの乳剤厚さのばらつきが原因ではないかと推測しています。

投稿者 J_Sekiguchi : 2014年06月19日 10:00

B&W セピア反転現像(続報)

 フォマパン100の他にも硫化剤でリバーサル現像ができるモノクロフィルム銘柄を見つけました。
一般には入手しにくい銘柄ですが、ローライのレトロ100トナールとレトロ80Sです。
レトロ80Sのほうが赤みが強く出る傾向にあります。どちらもフォマパン100よりも現像を押したほうが良い結果が出ます。
 因みに現像処方は若干変えています。

いずれも表記感度で撮影し、露光の増減はしない条件です。
<現像> 現像液 YJD-13
 温水550ml、メトール0.8g、無水亜硫酸ソーダ38g、アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)4.5g、
 炭酸ナトリウム(一水塩)15g、ブロムカリ2g、ロダンソーダ2g
 23℃12分
<硫化>
 温水550ml、硫化ナトリウム10g
 23℃4分
<漂白>
 セピア調色剤の漂白剤を温水550mlに溶解。
 23℃4分
<定着>
 スーパー富士フィックス
 23℃5分

暑い日が続くので、液温がやや高めになってしまっています。
この条件でも良好なポジが得られます。おためしあれ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年07月08日 10:00

ケチ技・EX

 フィルムの撮影枚数を増やす裏技として、カメラに装てんするときに感光してしまう部分を有効に使う方法をご紹介した。しかしこの方法は、感光しないよう暗闇の中でフィルムを装てんするので面倒だ。ダークバッグの中で汗ばむ手で探りながら、繊細な作業をしなければならない。これは苦行だ。改善しなければ。
 だいたい、ダークバッグを使わねばならないというのがこの技の難点だ。屋外でも、フィルム交換をするたびダークバッグを広げなければならないなんてありえない。明るいところでもできる技にしなければならない。
 えーと。パトローネからフィルムを引き出さずに装てんできるようにすればいいわけだ。それなら、フィルムのベロを延長してやればいいじゃないか。適当な厚紙で短冊を作り、セロテープでつなげればベロの延長になる。紙で作るのもなんだから、いらないクリアファイルを切り裂いてポリプロピレンの短冊を作ってみた。幅はフィルムより細めにし、カメラのスプロケットギアに噛むパフォーレーション列を避けて貼り付けた。
 本来なら、カメラのスプロケットにフィルムがセットされたのを確認してから裏蓋を閉める。だけどこの技はパトローネから極力、フィルムを引き出さないのが重要ポイント。裏蓋を閉めてから、巻き上げノブを慎重に巻いて、カメラの中でスプロケットにフィルムを合致させるのだ。何も難しいことはない。普通に巻き上げればフィルムはちゃんとセットされる。やってみたら意外と簡単なので皆さんも試してみたらいい。
 注意しなければならないのは、セットするときのスプロケットギアの位置によってはフィルムの頭出しがうまく合わずに無駄がでる。このあたりはテスト用のフィルムを使って条件出しをしてください。


実際にこれで撮影しています。


見やすいように青い紙でサンプルを作ってみました。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月23日 10:00

ケチ技

 カメラにフィルムを装てんする。言葉にすると短いけれど、その手順は人それぞれに特徴がある。フィルムのベロを先にスプールに差し込む人、パトローネをはじめに所定の位置にセットするのがおきまりの人。どちらが正しいというのでもないけどね。リアリストはスプロケット歯車に押さえの金具があるから、もうひと手間かかる。
 フィルムの装てんは慣れてしまえばどうということはないのだけれど、昔から失敗につながる鬼門だった。撮影を終えたと思ったら、フィルムがスプールから外れていた、なんてね。こんな失敗は本当にイヤだ。
 ちゃんとフィルムが送られているかは、巻き上げノブの動きでわかるのだけどね。カメラメーカーも装てんしやすいスプールにしたり、送りのインジケーターを付けたりと工夫をしていた。最後にはモーター駆動になり、ベロを所定のところにセットすれば、あとは機械が全部やってくれるようになった。ありがたいことです。
 便利なのは大歓迎ではありますが、機械まかせだとちょっとした工夫ができない。新しいフィルムはパトローネの中に入っている部分は感光していない。これを装てんのために引き出すから感光してしまうので、蓋を閉めたら2回、空送りをしなければならない。もったいない。暗闇の中で装てんし、ここも使ってしまおう。現像所では規定枚数以上のコマは保障しないとしているが実際にはこうして撮影枚数をかせぐことができる。
 フルオートのカメラではないから使える技。押入れとか、ダークバッグを使って手探りでフィルムをセットする。ただでさえ失敗しやすいのに手探り作業。危うい技だが、僕はこれが苦にならない。めんどくさいからあまりやりませんけどね。はじめてやるときは、じっとカメラの内部を見つめ、構造と寸法を記憶に焼き付けてからにしよう。


ダークバッグの中で手探り・・・めんどくさい・・・

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月16日 10:00 | コメント (2)

2013年の挑戦

 ウチの冷蔵庫に長年保管しているフィルムがある。アグファから発売されていたモノクロポジ専用のフィルムでスカーラ200xという。現像処理がスカーラ専用で、特定のラボに送って処理するものだった。現像に時間もお金もかかったけど面白かった。モノクロで見るポジスライドはとても新鮮な印象があったのだ。
 スライドビュアーで立体写真を鑑賞する方法で、モノクロのスライドが作れるフィルムはとても都合が良い。しかし楽しんでいたのもつかの間、突然販売が終了し、専用の現像処理も受付を終了してしまった。このフィルムは5本組みで販売されていたので、使いかけの4本が行き場のないまま冷蔵庫に取り残された。
 元の箱を処分していたので有効期限がわからない。だが、最後に撮影したものから推定すると購入から既に8年が経過している。さて、8年も前のフィルムが使用に耐えられるだろうか。興味深いところだ。
 硫化剤を使って画像反転し、ポジ像を得る自家現像でこのフィルムが使えるかもしれない。今までフォマパン100でよい結果が出ている処方をスカーラ200xで試してみよう。4本しか残っていない貴重なフィルムから1本をステレオリアリストに装てんする。感度低下があるかもしれないが、ISO200に設定して撮影した。
 現像条件はいつも良好な結果がでているフォマパン100の処理と同じにしてみた。定着終了後にタンクをあけると、フィルムが黒く沈んでいるように見えた。やはりダメか・・・だが。光にかざしてみると、アンダーながらポジ像が出ているではないか。コマ番号が薄い・・・もう少し現像を押せば使える。
 思いがけない結果が出て、残りの3本をどう使おうか悩んでいる。本当にフィルムの世界は面白い。

反転現像したフィルムはスキャナーでうまく読み取れない状態でしたので・・・あしからず。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月09日 10:00

お安いフィルム

 135規格のフィルム。お店に行くと36枚撮りばかりになった。枚数の少ないものを見かけなくなった。昔々は12枚、20枚、36枚撮りのラインナップで、何で全部6の倍数じゃないのかな、なんて思っていた。あるときサクラカラーが24枚撮りを発売、「4枚増えても値段は同じ」というコピーが大うけし、他社が追随した記憶がある。
 このコマーシャル、大衆には大きな出来事だった。当時のザ・ドリフターズのTV番組「8時だヨ!全員集合」にもコントになったのを覚えている。五千円札を千円札に両替し、4枚増えても値段は同じ。
 そういう背景を思い出すと、当時フィルムはお安いものではなかった。だから12枚撮りなどの枚数設定の少ないものの需要があるとか、4枚増えたということが大きなインパクトとして受けとめられたのだろう。
 そんな昔。フィルムコストを下げる方法に100フィート巻きバルクフィルムを購入し、これを切り分けて使う技がある。バルクは36枚撮りで20本が取れる。1本あたりのコストを流通品の半分以下に抑えることができるのだ。とはいえ、切り分けは自分でやる。これが結構な手間で、専用の道具または暗室が必要。
 僕は専用の器具であるフィルムローダーを持っていない。今は結構な値段がする道具になってしまった。僕は昔、暗室で適当な長さに切り、パトローネに手で詰めていた。昔のパトローネはカシメがしていないので手で簡単に蓋が開いたのだ。今は事故防止のため、どのパトローネも簡単に開かないようになっている。
 ふと、手元にあったフォマパン100のパトローネを見ると、カシメがなくて再利用ができることを見つけた。フォマパンのバルクを売る店もネットで見つけた。さて、バルクを使おうか。パトローネを前に思案しているところ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年01月17日 10:00

リバーサルフィルム

 コダックが経営危機に陥り、とうとうリバーサルフィルムの生産を断念したという残念なニュースはまだ記憶に新しい。一般向けエリートクロームがまず先に入手できなくなり、エクタクロームも最後の生産分をみんなで取り合うという悲惨な状況になってしまった。後はフジフイルムだけが頼り。しばらく縁遠かったベルビアとかをまた使ってみようか。
 でも待てよ。世界にはまだフィルムメーカーがあるではないか。日本の店頭にはない、外国では普通に流通しているものがあるのでは。そう思ってネット検索するが、カラーリバーサルを生産しているメーカーがない。驚いたね。聞いたことのないブランド名が並んでいたりもするが、モノクロ、カラーネガはあってもカラーリバーサルがない。中国製なら何かあると予想したのだがこれもダメ。そんな中で唯一、ローライブランドのデジベースCR200を見つけた。
 見つけた先はマコダイレクトの通販。先のローライ・スライドダイレクトの購入と同じところ。ドイツの会社で、支払いにpaypalが使える。フィルムは135-36枚撮り2本組で価格もまあまあ。現品が到着して確認すると、なんだかフィルムベースが薄い気がする。さて、どんな写り方をするのだろう。デイライトタイプ、ISO200である。早速使ってみよう。
 ステレオリアリスト・エクタ―に装てんし、感度が高めでもあることから日が暮れた後の祭りの縁日を散策する。こういった場所は白熱電球が多用されていて、ストロボを併用しても発色は黄色に偏る。結果としては最近のフィルムに比べれば発色が地味。だが黄色に偏りすぎず、夜祭の雰囲気をよく再現してくれていると思う。
 次の日、曇天日中の屋外で撮影した。これはなんともカラーバランスが悪い。地味なうえに緑に偏っている。これは使い方を選ぶね。癖をつかめば面白いかもしれない。因みに現像は普通にE-6処理で受け付けてくれた。


地下鉄の車両基地にて。曇天下で撮影。実際にはこれよりも緑に偏っています。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月08日 10:00

イエロージャック式モノクロ反転現像処方

 フィルム衰退の危機感から、ステレオカメラを長く楽しむための選択肢拡大というわけでモノクロフィルムのポジ現像実験を進めてきました。ポジ化の手法はいろいろありますが、比較的やりやすい手法としてセピア調色剤を使うものが昔から知られています。しかし、具体的処方は公開されておらず、やってみたけどうまくいかないというのが前回のレポートです。あれから試行錯誤を繰り返し、実用に供する処方を発見しましたので謹んで報告いたします。
 処方の詳細は末尾に記しますが、今回の報告は詳細の条件出しが済んでいないところでまとめていますので、試される方はこれを念頭に実施ください。また、前回のレポートで銀画像(ネガ像)が硫化される可能性を記しておりますが、これは誤りであったことが今回の実験で判明しております。最適条件であればセピア化したポジ像が得られます。
※※注意点を記します※※
今回、ISO100クラスの各銘柄フィルムで実験しています。撮影の時にはいずれも感度設定を1段下げています。
1)最も良好な結果となったのはフォマパン100。チェコのフォマ・ボヘミア社の製品。量販店で入手が可能です。
2)イルフォードFP4、ケントメア100もポジ像が得られます。フォマパンよりやわらかい描写が得られます。
3)ネオパンSSもポジ化しますが、ハイライト部分にフィルムベースの青色が強く出て不自然になります。
4)コダックTMax100、ネオパンアクロス、イルフォードデルタ100はいずれもうまくいきません。これらは乳剤に特別な工夫がされているらしく、今回の処方では漂白が進行しません。ゆえに画面が真っ黒になります。
今後も実験を重ねます。新たな発見を目指して楽しんでまいりましょう。

 
作例は上からフォマパン100、イルフォードFP4、ネオパンSS
FP4はブルーがかって見えますが、これはスキャナーの調整不足によるものです。
FP4はもう少し現像時間を短縮したほうがいいかもしれません。

【イエロージャック式反転現像処方】
<現像> 現像液 YJD-11
 温水500ml、メトール0.5g、無水亜硫酸ソーダ38g、アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)5g、
 炭酸ナトリウム(一水塩)15g、ブロムカリ2g、ロダンソーダ2g
(ロダンカリと記述したのはロダンソーダの間違いでした。訂正いたします。)
この処方はコダック硬調現像液D-11を参考にした、独自の配合としています。
フォマパン100(撮影時ISO50)の場合、24℃9分15秒、のち流水で停止。 
温度・時間条件は検証中です。(以下工程も同様)
<硫化>NNCセピア調色剤の調色液(硫化ナトリウム溶液)を使用。適宜撹拌し6分間。のち、流水で洗浄。
 ※硫化液は劣化しやすく、劣化した液を使用すると反転しません。使用前に未現像フィルム片を明光下で
   投入し、すみやかに黒化することを確認して使用してください。
<漂白>NCCセピア調色剤の漂白液に赤血塩を2g追加。適宜撹拌し8分間。のち、流水で洗浄。
<定着>スーパーフジフィックスを使用。適宜撹拌し5分間。以降、通常の現像処理と同様に水洗。

(追記)
フォマパン100を使い、撮影感度をISO100に設定しても良い結果が得られます。
ISO100で撮影し、現像液温度が20℃のときは11分あたりが良いようです。
硫化、漂白は5分程度でも充分処理されるようです。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年10月18日 10:00 | コメント (4)

みえないもの

 見えないものが、見える。いや、あなたの後ろに御先祖様が立っていらっしゃる、という話じゃない。写真にすると、見えない光を捉えることができるという話。目に見えない赤外線や紫外線も、フィルムは感じることができる。
 いまから30年位前は、天体写真の撮影にはリバーサルフィルムを使うのが当たり前だった。ところが、カラーネガフィルムを使うと星雲がよく写るという記事が天文雑誌に掲載された。サクラカラーのASA400フィルムが最適と紹介されたのだ。実際使ってみるとよく写る。「天体写真にはサクラカラー」という大ブームが起きた。
 ガス星雲は望遠鏡を使っても、目ではほとんど見えない。おもに水素で構成されるガス星雲からは、水素が励起して発光する赤外線に近い光が強く出ている。この波長は目では見えにくい。だが、フィルムはこの光も感じ、サクラカラーはこの波長の感度が他のフィルムより高かったのでよく写ったのだ。
 自分が撮った写真にガス星雲が赤く写ったときは感動した。何もないように見える夜空の一角なのに、写真ではたくさんの小さな星たちと一緒に星雲の姿を捉えることができたのだから。感光材料の工夫で見えない光を捉え、超音波の周波数を下げて聞こえるようにしたり、科学の力は人間の世界観を確実に変えてきたはずである。
 一方で、感じないということも大事。どうも、僕は高音域の音が他人より聞こえやすいらしい。ブラウン管のテレビから高い音が出ているのを、隣の部屋からでも感じる。煩わしいのだが、家族の誰もそんな音は聞こえないという。
 猫は、もっと高い波長も聞き取るという。彼にとって家の中はさぞうるさいことだろう。そんな彼は、僕にはちっとも匂わないマタタビの実に夢中だ。匂いにも人間が感じない、猫にはわかる領域というのがあるのだろうか。ふしぎ。

ヘールボップ彗星.jpg ねこくん.jpg
かのヘールボップ彗星もネガフィルムで撮影しました。&ウチのねこくんたち。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月20日 10:00

ひとりぼっちのフィルム人

 デジタル・ステレオカメラが世の中に登場したと同時期に、フィルム・ステレオカメラの世界ではマウント台紙の供給がストップした。チェスで言うなら、チェック・メイト。王手詰みである。もはやステレオ界でもデジタルが主流。
 それでもebayのステレオカメラカテゴリを監視すると、まだまだフィルムカメラが出品されている。過去に比べて、これはと思うようなものは少なくなってきた。だが値段はだいぶ安くなってきた。それでも珍しいものが出ると、そこそこの入札があって賑わっている。かの有名なDr.T氏も、相変わらず売り手としてご活躍のようである。
 Dr.T氏は、ギリシャ系の米国人で、ステレオリアリストの本を書いたり、各地のステレオイベントに登場したりと、ステレオ写真の世界ではカリスマ的な存在だ。彼とは何度も、ebayで取引をさせてもらった。
 そんな彼と最近になってまたebayで取引をした時のこと。メールで「僕はまだフィルムカメラを使っている。アナタから購入したものは実用に供するだろう。ありがとう」と彼に送ると、「ワタシは既にデジタルに移行した。フィルムの物品を処分している」との返事。なんとまあ。Dr.Tもフィルムをやめてしまったのか。さびすぃい~。
 処分するならもっと安くせんかい。とも思ったけどね。カリスマはまだまだフィルム派のはずという期待は崩れた。まあ、そんなわけで、フィルムのステレオカメラ「だけ」を使い続けることにこだわっているのは、世界広しといえども僕だけのような気がしてきました。えっ?そうでもない?あなたも・・・もしや・・・ああ、そうですか。デジタルですか。
 僕の中では、王手はされてもまだ詰んではいない。だが、逃げ回っているのでもない。いつか、フィルムにしかできない大技を編み出して、デジタル界に大手を突きつけたい。そんなことを・・・思ってはおりません。ホントに。

DrT.jpg
Dr.Tのリアリストガイドブック。1999年初版本でございます。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月19日 10:00 | コメント (2)

プラネタリウム

 西東京市に大きな電波塔がある。東京タワーとかスカイツリーとは異なり、鉄の骨組みだけの構造だ。あやしい科学のにおいがするようなこの塔は、鉄塔マニアからしたらたまらないものがあるのではないか。遠くからも見えるこの電波塔のすぐ近くには多摩六都科学館があり、世界最大級のプラネタリウムが併設されている。
 東京に引っ越してから、このプラネタリウムを何度か観覧させてもらっている。昔のように解説員が機械を操作しながら説明してくれる。全天周映画も上映プログラムに組み込まれており、なかなか面白かった。
 「面白かった」とういのは、リニューアルオープンのためプラネタリウムと全天周映画がいったん幕を下ろしたのだ。その最後の上映の日に僕は立ち会うことができたのだが。新しく生まれ変わるのはいいことなんだけど、哀愁が漂うのである。なんでかって?それはやはり、デジタル化に伴うフィルムの衰退と無関係ではなかったのだ。
 ここのドームは世界的にも大きな部類に入る。そこに全天周映画を映していたのがウルトラ70という70mmフィルム映写機だ。この映写機は観客席外の部屋の中にあり、ガラス張りで中の様子を見ることができた。超幅広の、超長尺といった感じのフィルムが巨大な水平ターンテーブルに巻き取られてゆく。これはすごい迫力。
 超大画面の映画は観客の視野角を超えて投影され、画面の中に自分がいるという感覚が得られる。かつて、大画面投影には面積の大きい70mmフィルムを使うことが多かった。だが、世界的にデジタルに置き換えられている。
 もうじき、プラネタリウムも全天周映写機も新しくなってオープンするという。リニューアルオープンは7月7日の七夕の日。最新のデジタル技術は僕たちの夢を広げてくれるだろう。さて、星空を眺めに出かけてみますか。

プラネタリウム.jpg

映写室.jpg
まいど、低照度下で撮影したフィルムを取り込むと画面がざらつきます。ご勘弁。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月21日 10:00

セピア反転現像

 印画紙用のセピア調色剤を使うフィルムの反転現像方法がある。硫化剤と漂白剤の2薬で構成されているセピア調色剤、意外に安価に売られている。今回、これを使って反転現像にチャレンジした。そのレポートをお伝えする。
 さて、仕組み。まず普通に現像した後、印画紙の場合とは薬液の順序を逆に使用する。硫化剤で露光されていないハロゲン銀の部分を黒化させる(ポジ像)。先に現像した銀画像部分は硫化されない(はず)。この銀画像はネガ像なので、漂白剤に浴して銀画像をハロゲン銀に戻す。この後の定着でこれを除去する。
 第1回目はイルフォードPANFを日中屋外で撮影し、スーパープロドールで現像した。硫化浴は5分、漂白浴は10分とし、定着に進んだ。期待してタンクを開けると・・・結果はすべての画面が真っ黒。黒というより非常に濃い茶色。硫化銀特有の色味だ。光にかざしても像が出ていない暗黒の世界。早くも暗礁に乗り上げた。
 よく観察すると濃淡がわずかにみられる。失敗の原因は硫化浴だろうと推測した。ネガ像の銀画像は硫化浴で硫化されないはずとしていたが、実際にはここも硫化されてしまったのだろうか。漬けておいた時間が長すぎたのか。
 第2回目はネオパンSSを日中屋外で撮影し、スーパープロドールで現像。硫化浴は時間を短縮して1分30秒。漂白浴は5分とし、定着に進んだ。漂白浴の途中、明光下で観察すると全面真っ黒で、第1回目の失敗と同じ様相だった。だが、定着が進むにつれポジ像が浮かんできた。これで成功と思いきや、全体に画像が濃い。
 硫化浴でネガの銀画像も相当に硫化が進行するのか?これが全体画面の濃度上昇と、抜けが悪い原因だろうか?この処方でも、工夫次第で実用になるだろうか。いい結果が出たらまたお伝えしようと思う。

調色剤.jpg
調色剤のほかにもイロイロ買いましたよ。。。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月10日 10:00

RSDを使ってみた

 普通に現像をしただけでポジ画像が得られるフィルムがある。ローライスライドダイレクトである。あまり知られていないフィルムで、国内では販売されていない。これを海外からの通販で10本購入した。このテスト報告である。
 まず、このフィルムの感度だが、ISO6相当だという。これがけっこう低い。リアリストに装てんした場合、日中晴天の屋外でも1/100sec、絞り4になる。だが、これでも不十分で、さらに3段から4段プラスで露光しなければならないという情報もある。もし4段プラスにしなければならないとなると1/10sec、絞り解放F2.8だ。
 第1回目のテストは、日中屋外で段階露出をしたフィルムをスーパープロドールで現像した。感度が低いため、増感したらどうなるかという実験。19℃9分の現像、後は普通に定着。結果は、一面薄いグレーの画面ばかりで、一部にわずかに像が出ているのみ。これでは使えない。現像時間を長くしても良い結果は得られにくいようである。
 第2回目のテストは、同様に日中屋外で撮影したフィルムをスーパープロドールで20.5℃5分の処理をした。今度は像が出ている。段階露出をした中で、画像が最も濃く出ているのはなんと1/2sec絞り解放2.8のもの。日中屋外、晴天の下でも三脚とレリーズを使わないと撮影ができないというわけである。屋内での使用はムリ。
 画像が出ているとはいえ、暗部の最大濃度が低い。スライド鑑賞するにはちょっと難しい濃さである。濃度を上げるには別の現像液の方がいいのだろうか。この辺りの薬品に関するテクニカルデータが得られていないので何とも言えないが、実用とするにはどうにも苦労の多そうなフィルムである。自分で薬品を調合して現像実験をするしかないか。
 やれやれ、あと8本残っているフィルムでどんな実験をしてみるか。いい結果が出たらまたお伝えしようと思う。

RSD_P.jpg
 ▲よさそうに見えますけどぜんぜんダメです。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月03日 10:00

現像用品

 モノクロフィルムの現像なんて、最後にやったのは15年ぐらい前。またやるなんて、ほんとわくわくする。忘れかけていた自家現像。はじめて画像が出たときは感動したもんだ。昔の現像用品は実家の物置の奥深く、どこかわからないところに埋もれている。今さら発掘するなんて。見つからないだろうし、いっそ買ってしまおう。
 そう思って量販店に行ってみたが、ほんの少しの薬品類が置いてあるだけの惨憺たる状況だった。もうだめか。がっかりしていたが、ネット通販ならまだ手に入ることがわかった。マーケットが小っちゃくなっても、ネット販売ならまだ何とか存続できるというわけだ。ほんと、物流も含めて世の中というのはここ数年で大きく変わったよナぁ。
 まずは現像タンク。昔から使い慣れているキングの定番品を使おう。これからどんな薬品を使うかわからないから、プラスチック製の方がいいだろうという理由もある。もちろん、ノーベルト式をチョイスする。暗黒の中でフィルムをセットする作業は、実は僕の得意技なのだ。リール溝にフィルムをセットする感触はまだ手に残っている。
 さて、現像液は増感のできるものがいいかな。フジのパンドール・・・あれ?パンドールがない。スーパープロドールというのに置き換わってしまったのか。次は定着液。フジフィックスの粉末・・・あれ?粉末タイプがない。やれやれ、しばらく離れているうちに、現像用品のラインナップが変わってしまっている。これ、浦島太郎だよなあ。
 作業の流れを思い出しながら、液温計とか計量カップとか。買い物かごの中にいろいろ詰め込んだ。ネット上の仮想「かご」だから重さを感じないが、どんどん膨む合計金額の欄に目が釘付けになる。うはは。これだけの金額ならデジカメが買えるよな。買い物かごの中身を見直して、いくつか削除ボタンで商品棚に戻してあげた。

現像.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月26日 10:00

ローライスライドダイレクト

 モノクロ画像のステレオ写真を撮りたい。デジタルなら簡単だろう。普通に撮影した後、画像処理でモノクロに変換すればいい。だけど、フィルムで撮るとなると、これが結構大変なのだ。モノクロのポジフィルムがない。
 かつてアグファからスカーラというフィルムがあった。専用の現像プロセスでモノクロの透過ポジが得られる。これをステレオでビュアー鑑賞するととてもいい。だが今は、フィルム販売と現像は日本国内でされていない。
 フィルムの状態でモノクロポジ像にするのは需要として本当に限られたものになるのだろう。スライドにしてステレオでビュアー鑑賞するなんていうのはごくごく特殊なもの。ポジのモノクロフィルムなんて普通の人は使わないのだ。
 それでもモノクロフィルムを反転現像してポジ像を得る方法は昔からある。陰画として生じた銀を溶解するところがカナメなのだが、強力な酸化剤を使う。昔は薬局で買えたらしい過マンガン酸カリウム、これが厄介なのだ。
 この薬品、近年になって特定麻薬向精神薬原料に指定され、簡単に買えるものではなくなった。そうでなくとも廃液の処理はイイカゲンにはできないし、あまり使いたくないクスリ。昔は消毒液を作るのに使ったらしいけど。
 その他にも比較的安全な酸化剤を使う方法などもあるらしいが、どうにも二の足を踏んでしまう。そんなとき、普通現像でポジ像が得られるフィルムを思い出した。ローライスライドダイレクト。円高進行中だから海外から直接購入したらどうか。ネットで調べると、このフィルムをプロデュースしているドイツ・MACO社の通販サイトがある。・・・ポチッ。
 感度がISO10程度と低く、実用感度はさらにその下と聞くが・・・とりあえず10本分の注文ボタンを押した。1週間ほどで現物が届いたが、はてさて。乞う御期待でございます。

RSD.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年04月19日 10:00

冷蔵庫を探そう

 フィルム派の人々で、なくてはならない大型設備がある。冷蔵庫である。とはいえ、いまどきの家庭で冷蔵庫がないというほうが珍しいだろう。僕も、フィルム達を小さなトレイに入れて、邪魔にならない場所にそっと置いている。
 常温で保管できるフィルムもあるけど、それでもやっぱり冷蔵庫に入れておきたい。トレイに入れておくのは行方不明にならないようにするためだ。昔はシートフィルムなんかも置いていたから、けっこう邪魔者扱いだったけど、ロールフィルムだけならそれほど大きな場所は占拠しない。たまにトレイの中に缶ビールがまぎれたりするけどね。
 というわけで、普通は不自由しない大型設備なんだが、例えば家から離れて生活をしなければならない場合、けっこう悩むものだ。新しい冷蔵庫、どうしよう。僕にもそんなときがあった。
 仕事の都合でやや長期間、家族と離れて住むことになった。食う寝るところに住むところ、には困らないのだが、冷蔵庫がない。新しく買おうにも、どうせ後で無用の長物になる。テレビは余分にあっても何とか工夫して使うけど、冷蔵庫は二つもいらない。小さい冷蔵庫でも、一抱えもあるようなのはやはり邪魔だ。
 生活する上で冷蔵庫が基本的に必要ではなかったが、フィルムの保管にはどうしても必要だ。何か良いものはないか。探しているうち、どうせ買うならちょっと洒落たものが欲しい、なんて欲が出てきてしまった。
 商店などで見かける、清涼飲料水のブランドロゴが入った、ガラスケースのような冷蔵庫。タワー型でそれなりに大きいが、中身がよく見えるというのはなんだかいい。中古でもいいから、デザインのいい物はないものか。ずいぶん探した末、このタイプは断熱材を使っていないから消費電力が馬鹿にならない、と聞いた。で、あっさり断念した。

冷蔵庫.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月06日 10:00

フィルムが無くなったら

 不吉な予言である。弾がない鉄砲、ガス欠の車、電池のないデジタルカメラ。どれも役に立たない。無いなら買ってくればいいが、売ってないなら買いだめしておくとか対策が必要になる。だから自衛隊では有事のために弾薬を備蓄しているし、政府は産業に必要な重要な物資は計画を持って備蓄している。デジカメを使う人だって予備の電池を携帯しているはず。
 ではフィルムも備蓄しておけば解決かというと、そうはならない。フィルムには有効期限があって、これを過ぎるとカラーバランスが崩れてゆくのだ。変な色の写真になる。もうひとつ、フィルムには現像のプロセスが不可欠だけど、フィルムの供給が止まれば現像のインフラもすぐに無くなる。今のうちフィルムを買いだめしておいても、いずれ使えなくなるのだ。
 そんなことを考えながら、過去に撮った写真を眺めているとスカーラ200で撮ったものを見てひらめいた。モノクロポジのフィルムである。カラーにはない新鮮な感動があった。フィルムを備蓄するなら、モノクロフィルムではどうだろう。しかし、ローライスライドダイレクトの販売がまだされていないので、入手しやすいモノクロネガフィルムに頼ろう。
 モノクロネガフィルムは冷凍状態にすれば長期間の保存に耐えると思われる。当然有効期限はあるが、過ぎても感度がやや低下する程度だろう。これを自家現像で反転処理をするのだ。現像のインフラもこれで解決だ。あとは簡便に自家現像で反転することが残された課題だ。なるべく危険な薬品を使わず、高品質のスライドを得る方法を探すのだ。
 というわけで、僕はいつの日にかフィルム各社が重大発表を行ったとしてもあわてない。そのときはモノクロフィルムを買い漁り、大量に冷凍備蓄するだろう。まさにフィルムのある限りリアリストを使うというわけだ。そんな日はまだ先でしょう、と思いつつ密かに研究を進めているのだ。・・・カラー写真は?・・・そのときこそデジタルです(笑)

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投稿者 sekiguchi : 2010年02月05日 10:00

クスノキとFILM

 写真はガラス乾板の時代を経て、取り扱いの簡単なロールフィルムに替わっていった。やわらかさと透明性を持った画期的な材料、それがセルロイドだった。セルロイドは石油製品ではない。天然の原料から作られている。ニトロセルロースと樟脳である。ニトロセルロースは綿花の芯を硝酸で処理して作る。また、樟脳はクスノキの精油成分から作られる。
 セルロイドの主原料としているニトロセルロースは良く燃える。砲弾を発射する発射薬の構成品としても使われるように、いったん火がつくと燃え広がる性質がある。昔の映画館やフィルム倉庫は、火事になると手に負えないほど延焼したという。そのため、写真のフィルムに使われるベースの素材は、セルロイドから難燃性の樹脂フィルムに置き換わっていったのだ。
 今ある写真フィルムに、セーフティフィルムとわざわざ但し書きを入れているのもその名残だ。セルロイドはフィルムに限らず、今ではあまり使われなくなった。きれいなセルロイド製の万年筆も、今では在庫の材料を使って作っているらしい。
 セルロイドのもう一つの原料である樟脳、これを採るために昔はクスノキがずいぶん植樹されたという。クスノキは自然林にはあまりなく、里山に人の手で植えられたものが多い。それが今では巨木になって残っていることもある。僕の住む町にも県の天然記念物になっている大きなクスノキがある。樹齢は数百年が経っていると思われるが、木の勢いは衰えることなく枝の隅々まで葉が茂っている。遠くから見ると小さな森のようにも見えるほどだ。
 石油が枯渇したら、プラスチックが世の中からなくなる。そうしたらプラモデルも作れない、と子供の頃に心配した。当然、写真フィルムも作れない。だけど、セルロイドを使えば石油がなくても大丈夫じゃないか。燃えにくくする工夫ができればいいのだ。そんな世の中になるのはまだもう少し先なのだろうか。せめて、今のうちにクスノキを大事にしておこう。

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投稿者 sekiguchi : 2010年01月29日 10:00

なぜFILM?

 ステレオの話を書き続けて、ちょっと間が空いたりしながらもよく続くものだと自分でも感心する。まだまだ続けばよいなと思っている。そのうち、自分の子供の友達から「カメラおじさん」と呼ばれそうである。このコラムでは自分のことを「僕」と称しているが、実はいいおじさんの年齢である。カメラおじさんといえば「ちびまるこちゃん」に登場するたまちゃんのお父さんを思い出す。ライカ、ライカと熱を上げているお父さんである。どこか自分に似ていなくもないな、と思う。
 「ちびまるこちゃん」の原作者のさくらももこさんはエッセイの中で、ライカを作品に登場させたことで当時の販売代理店から感謝され、漆塗りのライカをプレゼントで貰ったと書かれている。今まで、ごく一部のヒトしか知らなかった外国製のカメラを世に知らしめた功績を讃え、ということである。漆塗りのライカ。なんともうらやましい。僕がせっせとリアリストのことを書いても、ホワイト社はすでに存在していないので漆塗りのリアリストを手に入れることはできそうにない。
 こんなことを書いていると、じゃあ自分で作ってみるか、漆塗り。などとろくなことを考えない、とも言えないので恐ろしい。でもいいだろうな、金蒔絵か象嵌、螺鈿なんぞをほどこしたリアリスト。
 でもまあ、誰に感謝されるのでなくてもいい。僕の話がフィルムでステレオを撮る人の何かの役に立ってくれればいいのだ。ステレオ写真というのはとても楽しい。ちょっと難しいところがあるかもしれないけど、それもまた楽しい。立体写真になじみのない人に見せてあげると、つまらない写真でも感動してくれる。撮ってあげてプレゼントすれば、なお喜ばれる。思い出がいつまでも残るし、特別な機械を使わなくても、いつでも思い出をよみがえらせてくれる。僕がフィルムにこだわるのは、もしかしたらこんなのも理由なのかな。と、書きながら思う。

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投稿者 sekiguchi : 2010年01月11日 10:00 | コメント (3)

モノクロスライド

 ポジフィルムでステレオ鑑賞する、この方法は一番臨場感がある。ポジフィルムと一口に言ってもいろいろな銘柄があるけど、フィルムによって色の出方とかコントラストが違う。普段使い慣れているものから別の銘柄に変えると、新しい描写に感動したり、逆にがっかりということもある。自分の感覚にあったフィルムが見つかると撮影も楽しい。
 カラー写真だけでなく、モノクロの世界というのも味わいがある。だけど、モノクロのポジフィルムというのはかなり特殊な分野になるみたいだ。かつてはアグファからスカーラ200が発売されていた。感度設定がある程度自由にできて、現像のときに感度指定をする。専用の現像プロセスだから普通のリバーサル現像とは一緒にできない。料金も割高だった。
 このフィルムを使って何回かステレオ撮影をしたけど、その仕上がりにはちょっと癖になりそうなところがあった。カラーにはない感動がある。次はどんな題材で撮ろうかと考えているうちにフィルム販売と現像受付が終了してしまった。そんなわけで今でも我が家の冷蔵庫には4本のスカーラたちが寝ている。
 今でも海外のどこかでスカーラの現像をしているという噂も聞く。そんな気の遠くなるような手間をなくしてモノクロポジで撮れないだろうか。普通にネガで撮り、ネガフィルムにコンタクトプリントしてポジを得る。最もオーソドックスな方法だけど、これも手間がかかるし画質がどうしても劣化する。モノクロネガを現像の段階で反転する方法もある。だけど廃液の処理が面倒な危険な薬品が必要だ。環境にやさしく、安全な方法はないものか。
 さらに深く調べると、モノクロ現像でポジが得られるフィルムがある。ローライスライドダイレクト。ヨーロッパで売られているらしいが国内ではまだ販売されていない。あまり情報がないのだけど、早く入手できる環境になって欲しいものだ。

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投稿者 sekiguchi : 2009年10月17日 00:30

フィルムの調達

 今から20年ほど前、僕がまだステレオカメラを持っていなかった頃、ほんの少しだけ北海道の某地方都市に住んでいたことがある。当時は6×7判のプラウベルマキナに凝っていて、リバーサルフィルムで大自然を撮影することが楽しみだった。ブローニーのリバーサルなんて札幌に行かなければ買えないので、近所の写真屋さんにあらかじめ頼んでおいて、やっと一週間後に届くという状況だった。現像だって札幌送りだから一週間以上かかる。これが当たり前だった。
 あるとき、富良野や美瑛の大自然を撮りに行こうと、機材を車に積んで一人旅に出かけた。宿は行き当たりばったりで決める気ままな旅である。雄大な大自然と美しい風景に、ついシャッターの回数が多くなる。120のブローニーしか使えないマキナ67は、1ロール10カットしか撮影できない。あっという間に手持ちのフィルムを使い切った。しまった!もっと買っておくんだった。とりあえず写真屋に行けばネガフィルムぐらいはあるかもしれない。そう思って美瑛の国道沿いの小さな写真店に飛び込んだ。小さな店だったが、ブローニーを置いてあるか?と聞くとあると言う。リバーサルは?と聞くと、何本ですかとたずねられた。驚いた。多くの写真家が撮影に来るので、主要なフィルムは豊富に置いてあるのだ。
 同じようなことが昔、ハンガリーで。うっかり予備のフィルムをホテルに置いたままステレオ撮影の散歩に出かけた。戻るのも面倒なので、たまたま通りにあった小さな写真店に飛び込んだ。英語が通じない。リバーサル、スライドと言っても通じない。ポジフィルムと言ってようやく通じ、今は無きコニカのフィルムが出てきた。やっぱり外国人はポジをよく使うのだろうか、と思った。需要のあるところにはちゃんと置いてあるものなのだ。それにしても、このときのコニカのフィルムは地味な発色で粒子が粗かったなぁ。手に入らなくなっちゃうと、無性に懐かしくてまた使いたくなってしまうものだ。
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投稿者 sekiguchi : 2009年10月03日 21:40

コダクロームK335

 巷では銀塩写真の終焉とか、デジタルの勝利とかひとしきり話題になった。だいぶ落ち着いた感じではあるけど、フィルムの需要が先細りになるのは時代の流れだ。止められない。ただ、今のところフィルムの長所をデジタルが全てカバーしているとは思えない。ステレオ写真の鑑賞方法はその一つだと思う。ポジフィルムで鑑賞するステレオ写真の素晴らしさは、まだまだデジタルで再現できていない。だからといってフィルムとデジタルの優劣を議論することは、どんどん姿を変えてゆくデジタルが相手ではあまり意味がないようにも思う。僕はデジカメが鑑賞方法も含めてもっと本物になるまでフィルムで撮り続けようと思っている。そんな思いもあって、リアリストのメンテ師・イエロージャックが誕生したのだ。ここまでのコラムがリアリストユーザーの何かの役に立てば嬉しい。
 さて、コダクロームの国内販売終了にショックを受けている諸君も多いだろうが、僕は秘蔵のコダクロームを2本持っている。どちらも1955年期限のフィルム。片方は20ペアのリアリストスライドが撮れるように長さを調整したステレオ専用(?)フィルム「K335」という珍しい1本だ。ステレオが大流行した名残、あるいは証人というべきか。もう使えない、いや、使わないのだけど、これを持っていると何故かいつまでもフィルムで撮り続けたいという気持ちになるね。デジタルデータに変換するのは後でいい。フィルムがあるうちはフィルムで撮る。やっぱりフィルムで撮るのは楽しい。もしフィルムの時代が終えたとき、まだステレオデジカメ&鑑賞システムが世の中に登場していなければ、僕はその時本当に寂しいと思うだろう。
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投稿者 sekiguchi : 2007年03月25日 01:18 | コメント (2)