STEREO CLUB TOKYO

自作マウントの可能性

 写真のタテ・ヨコ比率というのはどうやって決めたのだろう。35mmフィルムが映画用フィルムの流用であることはよく知られている。映画ではフィルムの両端にあるパーフォレーションを使ってフィルム走行を行うのだが、ここの加工精度はかなり厳しく設定されている。精度が悪いと、映画の画像がタテ・ヨコにブレてしまうからだ。スチル写真用カメラのフィルム送りに、この精度の良いパーフォレーションを使うのはごく自然の流れだったのだろう。
 一般的な35mm版カメラの画面サイズを「ライカ版」と称するのは、8パーフォレーション分のコマ送りで画面を構成したライカに由来すると聞く。僕は常々、これはちょっと横長すぎだと感じている。世の中、高アスペクト比が歓迎されるけど、撮影する側からすれば、アスペクト比が高すぎると画面構成を考えるのに苦労する。
 昔、ニコンは7パーフォレーション送りの独自フォーマットを採用したが、既にライカ版が浸透した世の中では受け入れられなかったと聞く。この画面サイズはヨーロピアンフォーマットのステレオカメラとほぼ同じで、アスペクト比は1:1.33となる。偶然にも、この比率は中版カメラの6×8フォーマットと同じである。
 僕は6×7をよく使っていたことがあるが、これはヨコの長さが中途半端で使いづらい。あまり一般的ではないが、6×8フォーマットの方が構図を作りやすい。そんなわけで、ヨーロピアンフォーマットはとても気に入っている。
 リアリストサイズはほぼ正方形と言いながら、若干縦長。マウントで完全な正方形、21mmスクエアにトリミングしたらスッキリするだろうか。そんなことも、マウントを自作できるので簡単に試すことができる。もちろん、ヨーロピアンも、ライカ版も作ることができる。マウントの自作は、いろいろな可能性を広げてくれるのだ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月28日 10:00

ライトボックス

 フィルムを使わない方々にはもはや不要のものであろうが、マウント作業には不可欠の道具がある。これがないとマウント作業はとても困難な、苦痛な作業になる。どうということもない、ライトボックスとかライトビュアーと呼ばれているもの。名前の通り箱型の筐体に蛍光管がセットしてあり、片面に乳白板がセットされている。
 今では薄型の発光体を組み込んだコンパクトなものが主流だ。過去にはポジフィルムのチェックに欠かせない、色調と明るさを調整したものもあった。大きな箱に専用の蛍光灯が2本内蔵されたものだが、構造が簡単な割にはとても高価だった。画面が大きいのはいいのだけど、やっぱジャマ。
 そんなわけで、マウント作業用にもう一つ買ったのだ。この手のものはどういうわけか高価な気がするので、演色性は犠牲にしてもいいから一番小さな、一番安いものを選択した。それでも5~6千円はしたかな。
 駅前の量販店に行ったのだが、いま一つ割引率が良くない。そこでebayをチェックすると、全く同じものが送料込みでも安く買えることを発見した。輸出用のモデルだけど、仕様は全く同じ。何年も前の話です。
 単4乾電池で使えるのだけど、マウント作業など長時間使用にはACアダプタから電源を取ったほうがいい。小さな画面だけど、マウント作業をするには何の不自由もない。じゃまにならない、程よい大きさ。
 ふと気付くと、カバーを開けた窓枠がリアリストマウントの大きさに近い。これはと思ってマウントをセットしようとしたら、マウントの方が僅かに大きかった。セットできたら何か面白い使い方ができるかもと思ったのだが。それはともかく、もう何年もこのチッチャイヤツを使っている。なかなかの耐久性である。今でも売っているのかな?


▲演色性重視のライトボックスの中身、それとハクバの製品

▲演色性重視の蛍光管

(追記)
現行商品をネット検索してみましたが、フィルム用のライトボックスがほぼ絶滅状態であることがわかりました。
ebeyなど海外マーケットには僅かに現行品が流通しているようです。
蛍光管を自分で交換できる大型のライトボックスは、今やとても貴重なものになってしまったのかもしれません。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年02月21日 10:00

ピンセット

 マウント作業にピンセットは持っておいたほうがいい。自分にあった、使いやすい一本があればいい。カメラの修理に使うやつではなかなかしっくりこない。フィルムを取り扱うのに便利なやつが一つ欲しい。
 ピンセットと一口に言っても、いろんな種類がある。先端が鋭く真っ直ぐなもの、ギザギザが付いているもの、鶴の首のように曲がったもの。大きさもバネの効きかたも様々だ。どれも用途に合わせて作られている。
 こういうのがいいのかなあ、と常々思っているのが、切手用のピンセットだ。なんだそれ?という方もいらっしゃるでしょう。僕が小学生の頃、切手収集が大ブームになったことがある。誰もが学校に持ってきてはいけない切手帳をランドセルに忍ばせ、仲間同士で物々交換に興じたのである。何しろ、その頃はニンテンドーなんて無かった(会社としての任天堂は存在していたが、当時は花札やトランプの会社だったからね)。
 このとき、素手で切手を扱うことがとても忌み嫌われたのだ。切手を扱うにはピンセットを使うのが常識、という認識が広まると、誰も彼もが専用のピンセットを携帯した。先端がカモノハシの口のようなヤツだ。
 そのピンセットは金属製で、上手に使わないとかえって切手を痛めてしまう。そんなことに気が付いた者もいたのだが、一度「常識」がセットされると、手で触れた切手の価値は無い、だからやっぱりピンセット・・・だった。
 そんな思い出もあって、便利そうな切手用ピンセットはまだ使っていない。手元にあるのは、使い古して先端も研いで丸まった、くたびれた一本だ。だけど、僕のマウント作業にはこれが一番しっくりくるのである。ヒンジのところが壊れそうだったので、新しく似たようなものを買ってきたのだけど。やっぱりイマイチだった。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年02月14日 10:00

芯紙

 紙製ステレオマウントを使っていて、真ん中あたりがふにゃふにゃするなぁ、とか思いませんか?
 どんな紙マウントを使っても同じなんだけど、左右にフィルムを挟む部分はフィルムの厚さの分だけ厚くなる。だからマウントの真ん中は一番薄くなり、強度が出ない。ふにゃふにゃするだけじゃなく、マウントを束ねたときに真ん中の厚さが足りないのがどうにも扱いにくい。どうにかなりませんかね、これ。
 だったらフィルムの厚さ相当の何かを真ん中に挟めばいい。例えば紙。紙片を適当に切って挟めばいいはずだ。大事なのは厚さなので、まずはフィルムの厚さをノギスで測ってみた。えーと。0.1mmだね。
 この厚さに合う紙はなんだろなと、あれこれノギスで測ってみる。フィルムは硬いのでそれなりの厚さがあると思っていたのだが、実は厚紙なんかよりずっと薄い。紙だとコピー用紙より少し厚いかなぐらいなのだ。写真用フィルムってそんなに薄いのか。ロールフィルムって結構薄くできていたんですね。
 ホントにコピー用紙程度でいいのか?って感じだけど、コピー用紙を適当な紙片に切り、マウントの真ん中にあらかじめ糊付けしてみた。マウントの糊を塗るときに一緒に刷毛で貼り付けてしまえばいい。かんたん。
 これをいつものようにラミネーターを使ってシールしたんだけど、仕上がりはなかなかいい感じ。真ん中の段差のようなものはなくなったし、何よりふにゃふにゃした感じが改善した。薄い紙を入れただけなのにね。
 白ボール紙マウントはやわらかく、強度が出にくいのでこの方法は使えます。真ん中に入れる紙をコピー用紙より若干厚めで、やや硬い紙を使うとより良いと思います。ちょっとひとてま、お試しあれ。


 

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年01月31日 10:00

落款

 ステレオマウントに是非してほしいこと。それはオモテ面へのスタンプなのだ。なんでかっていうと、これがないとウラオモテ・ウエシタがわかりにくいから。何か目印があるとイイ。そんなわけで、僕はオリジナルのスタンプを作って押している。スタンプを自作するのって結構おもしろい。だが、世の中の自作スタンプ事情は昔とは変わってきている。
 僕が愛用しているのは三菱鉛筆の「すたんぷりん」というキット。文字だけでなく図案も正確に転写できる。スタンプを自在に作ることができるのだ。残念なのは自作スタンプというのはブームに乗らなかったんだな。数年前にこのキットは販売終了になっている。以来、この手のスタンプキットは新しいものが出ておらず、三葉虫のように絶滅した。
 「すたんぷりん」のいいところはどんな図案もスタンプ化できるとこ。欠点は浸透インクを使った孔版印なので、インクの充填に手間がかかる。もっと簡単なスタンプはないかなと探すと、ゴム活字をつかう凸版キットがあった。数字記号とアルファベットの文字だけしか使えないが、ゴム印と同じように使えるというのは魅力だ。価格は約2千円。
 早速使ってみると、コレ、いいではないか。”STEREO Realist”の文字を並べるだけでもサマになる。このキットを製造しているのは台湾の三勝文具という会社。シャイニースタンプで検索すれば見つかるはず。いわゆるはんこ方式は単純だけど面倒さがない。インクの色を変えるのも簡単だ。版面をよく拭いて別色のインクパッドを使えばいい。
 もう一つ。よく撮れたカットには落款を併せて押すことにした。落款印は市販もされているが、僕はろう石のような印材を買ってきて自分で彫ることにした。実体顕微鏡を覗きながら精密ドライバーの先で削る。そんなのでも仕上がりには満足している。朱肉は乾きにくいので色味を似せたインクを使うことにした。こういう遊びが撮るのを楽しくする。


投稿者 J_Sekiguchi : 2012年11月01日 10:00

EMDEマウント

 紙製ヒートシールマウントの供給が途絶えて久しい。海外の通販サイトをよく見ても、新しいマウントの供給に関する情報は入ってこない。ebeyを検索しても、紙製マウントが出品されることは珍しく、比較的高めの落札になりやすい。
 そのebeyをパトロールしていると、ガラスマウントである“EMDE”マウントを時折見かけることがある。これは過去に作られたストックが放出されているのであって、今でも作られているものではない。僕はこのマウントをいくつか所有しており、気に入ったカットが撮れた時など、特別な場合に使っている。いいものだからちょっと紹介しよう。
 構成は、2枚の板ガラスとこれに挟まれるフィルム枠、全体をシールするアルミ製の外枠から成る。外周はリアリストマウントのサイズと同じ。少し厚くて重いけど、どのようなビュアーでも使うことができる。
 マウントの手順は、まずフィルム枠にカットしたコマをセットすることから始める。普通のマウントと同じように、ステレオウインドウが正しくなるように位置を合わせる。僕はコマを固定する方法として、市販の粘着テープを使っている。小さく切ったものをコマの四隅に貼るのだが、これをしないと後でずれたときに困るのできっちりやるべし。枠は薄いアルミ板でできていて、遮光性は抜群に良いし、窓枠のエッジもきっちりしている。何より仕上がりがきれい。
 ガラス板はあらかじめきれいに磨いておき、ブロワーで埃を落としてからフィルム枠をサンドイッチする。この状態で外枠に入れ、枠の挿入口を折り返して閉じれば完成だ。ラベルなどをいっしょに封緘することもできる。
 何枚もあると重くて扱いにくいが、フィルムへの傷つきを気にしないで気楽に取り扱えるのがいい。こういった方法を応用し、ポリカーボネートの板を使って自作したらどうだろう。軽くてカッコいい自作マウントが作れそうなんだけど。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年10月11日 10:00

菓子の箱

 ステレオスライドマウントは一般的な規格ではなく、ちょうどいい収納箱がない。だから僕は自分で箱を作っている。同じ形、同じ大きさの箱を作り、ラベルを貼って収納している。本棚に敷き詰めてゆくと、ライブラリができあがってゆく。きちんと整理すればアルバムと同じように閲覧できて楽しい。だが最近、これが崩壊し始めている。
 理由は、この箱を作るのがメンドクサイのと、溜まった現像済みフィルムを片っ端からマウントしているので箱に入っていない状態で放置され始めたのだ。これが溜まってくると、だんだん撮った順番が不明瞭になってゆく。
 このままではマズイ。せっかく撮影したものがゴミになってしまう。整理整頓は面倒でもやらねばならぬ。原因は収納箱にある。簡単に作れる箱をデザインし直さねばならない。それに、今まで作っていた箱はマウントが40枚入るように作っていた。リアリスト版なら1ロール29枚になるから半端な大きさだ。これも使いにくい原因である。
 新しい箱は1ロール分だけ入るようにして、折り畳みができるデザインにしよう。箱の作り方というのは調べてみるといろいろな方法がある。厚紙から切り抜くのはクラフトロボを使って機械任せでできるが、糊付けは面倒だから最小限にしたい。だが、折り畳みができる箱というのは複雑な形になったりで、ちょうどいいものがない。
 悩みながらタバコを一服。タバコの箱もすごい工夫が盛り込まれている。お菓子の箱も最近のものは凝っている。昔のキャラメル箱はもっと単純だったよなあ、なんて思い出していたら、それを作ればいいじゃないかとひらめいた。
 そんなわけで、昔食べたグリコキャラメルの箱を思い出しながら専用箱を作ってみた。作りやすさ、使用感ともに上々。マウントサイズに合わせて作ったので、姿形はキャラメルの箱というより羊羹に酷似する、という結果になった。

菓子箱.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月14日 10:00

白ボールマウント

 マウント製造に適した厚紙として、今村紙工で作っているA4サイズ用個別ホルダーが適していると以前に紹介した。それ以降、この他にもいいものがないか継続して調べている。安くて加工しやすく、マウントに適した紙だ。
 ボール紙は手に入りやすいが、これにも種類がある。パルプの叩解が低いものが黄ボール。今村紙工のものはこれに近い。叩解程度が高くなると白ボールになり、6号が厚さ0.4mm近辺になる。白ボールは塗料のコートがなく、表層は漂白パルプを使っている。規格化されたものであり、手に入りやすい。マウントに使えるだろうか。
 クラフトロボで切ると、カッターの入り方が深い。紙の密度が低いためだろう。カット線の重ねを減らしても切り残しが出にくい。切り口のケバ立ちも少なくていい。難点を上げれば紙のコシが若干低い。マウントとして使える程度のコシはあるから、加工のしやすさを考えると十分に選択肢に入る。ではテスト貼り付け。
 PVA糊(ポバール)を刷毛で塗る。すると今までと様子が違う。糊が紙にどんどん吸い込まれてゆくのだ。乾いた表面は艶がなく、糊が表面に露出していない感じだ。ここに霧吹きで水をかけ、折ってラミネーターに通す。出てきたものは接着面に隙間があり、封止されていない。やはり、PVAが紙に吸い込まれて表面に残らなかったのだ。
 何とかヒートシールができるように工夫しなければ紙の束が全て無駄になる。PVAが吸い込まれないようにするには。いろいろ考えて、微粒子を糊に混ぜればいいと考えた。粒子が紙の目に吸い込まれず、糊も留まる。市販墨汁は微細なグラファイトを使っている。PVAに混ぜて実験してみると、バッチリ。いつも通りに封止できた。
 墨汁は黒くて使いにくいから、白い絵具でもいけそう。やってみたらこれもバッチリだった。お試しあれ。

改良糊.jpg
いろいろ試しておりまする。

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年06月07日 10:00

自作マウントの追加情報

 紙のマウントで困ることの一つに、切り口のケバ立ち。紙は細かい繊維を重ねたような構造だから、刃物で切った切り口にはこの繊維がケバとして現れる。鋭利な刃物で切ることが大事なのだが、厚紙だとケバができやすい。
 マウントの開口部にケバが出ていると、ビュアーで鑑賞するときに拡大して見えるのでかなり不快。ここはきっちり処理したい。処理の方法はいくつかあるが、物理的に取り除く方法は結構大変なのだ。指で切り口をなぞるだけで取れてしまうケバもあるが、そうでないものは紙やすりをかけたり、ライターの火であぶって焼いたり。火であぶる方法では細かいケバしか除去できないし、紙やすりは使い方を誤るとケバが増えたり、開口部が変形してしまう。
 そこでお勧めしたいのがマウント接着の糊を塗るときに、この糊でケバを封じ込める方法だ。ヒートシールにするため、ポバール(液状合成糊)を刷毛でマウントに塗るのだが、この時にする。糊が乾かないうちに指でマウント開口部をなぞってやるとケバが糊の中に封じ込められて目立たない。指は糊で汚れるけどね。
 無理に取り除くのではなく、糊でコーティングしちゃうわけである。この方法はほかにも利点がある。先に紹介したマウント用の紙は、板紙の片面に白い塗料を塗ったもの。クラフトロボで加工をしていると、この塗料が削れてできる微粉がたくさん発生する。この微粉がフィルムに取りつくと不快。だからこれも糊でくるんでしまおう。
 このほか、マウント開口部の角がきれいな角になっていない場合もある。これはクラフトロボの刃の動きでできてしまうもの。カット線の工夫である程度解消することもできるけど、ピンセットの柄のところで押さえてやるときれいな角に整形できる。出っ張っているところを押し込めるような感覚でやるとうまくいくはず。ためしてみてね。がってん。

マウント製作2.jpg マウント製作.jpg
マウント工場絶好調 

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月31日 10:00

斬鉄剣参上

 フィルムステレオカメラ愛好家の方々には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、マウント台紙はクラフトロボで切り出しておられると思いますが、これのカッター刃はどの程度の耐久性を持つのでしょう。僕もかれこれ千枚を超えて切り出していると思いますが、一向に切れ味が劣る気配を見せません。あんなにちっさい刃なのにね。
 そんな心配をしていたある日、カットがずれることが続いた。突然の異音。刃先が引っかかって送りのギアが悲鳴をあげているようだ。これはいよいよ刃がダメになったかな、と感じ、実体顕微鏡を持ち出して刃先を見てみた。
 顕微鏡のフォーカスを合わせてゆくと、鋭利な刃先が立体的に浮かび上がる。こういうとき、実体顕微鏡はいい。刃の角度がどのぐらいになっているのかもよくわかる。驚いたのは、刃先に刃こぼれや摩耗がほとんどない。先端の方がわずかに丸みを持っているかなあという程度で、切れ味に影響するような欠陥は見つけられなかった。
 この刃は超硬合金でできている。炭化タングステンとコバルトの粉末を混合し、焼結した素材だろう。ダイヤモンドに次ぐ硬さのはずだ。ためしに砥石をあててみたが、研ぐことができないほどの硬さだ。鋼の刃よりもずっと硬い。
 よく調べると、異音の正体はカッティング台紙から剥がれかけたワークが引っかかって起きていることがわかった。カッティング台紙を新しいものに交換し、さらに用紙1枚からマウント4枚を切り出すデザインに変更し、ワークの引っかかりが起きないように配置を整えた。さらにテストカットをしながら微修正を加えてゆく。
 楽に大量にカットできるようデザインを変更し、約300枚のマウントを1日で切り出した。刃先は少しも鈍っていない。気をつけねばならないのは、超硬合金は硬いが、衝撃を受けると欠ける。無理な力は禁物。ご注意を。

カッター刃.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年05月24日 10:00

糊付名人

 紙マウントの自作についての続きのおはなし。厚紙から切り抜いたマウントを貼り付けるのに、スティック糊がいいよとご紹介したのだが、もう少し塗りやすいものがないだろうかと作業のたびに悩んでいた。固形の糊を押し付け、丁寧に塗るのだが。どうしてもマウントの窓のところとか、縁のところでこの固形の糊が削れる。削れたカスがあちこちにまとわりついてベタベタになるのだ。これが煩わしい。カスを指で拭うのでベタベタ。何とかしてよ、このベタベタ。
 どんなものが塗りやすいのかなあ、なんて日々考えていた。前に住んでいた家は障子があって、年末になると張り替えていたなあ、なんていう思い出と重なる。障子は障子糊で貼るのだが、お湯でのばしたでんぷん糊を使う。これを刷毛で塗るのだ。障子を綺麗に張るにはコツがあって・・・いや、障子のハナシではない。そうだ、刷毛で塗ろう。
 マウントに糊を塗るのなら、大きな刷毛ではなく、小学校の図画工作で使うような水彩絵具用の筆がいいかも。ちょっと扁平のやつがいいかな。これにちょっとゆるい、流動性のある糊を塗ればいい。なんかいけそうじゃないか。
 ただし、でんぷん糊ではダメ。塗った後に乾かしてドライな状態にし、熱で接着できるものじゃなきゃダメだ。糊とはいえ、熱可塑性プラスチックの仲間、樹脂成分でできた糊じゃないとダメだ。さて、どんな糊がいいか。
 スティック糊の主成分、PVPはポリビニルピロリドンといい、水溶性のプラスチックである。これをお湯で溶かす、なんていうのはめんどう。他に探すと、アラビックヤマトがあるじゃないか。昔は天然成分のアラビアゴムを主成分としていたので名前に名残があるが、今の主成分はPVAL、ポリビニルアルコールという樹脂だ。これを水でのばして筆で塗り、乾燥させた。ちゃんと「楽ちんマウント大作戦」で紹介した方法で、バッチリ接着できるよ。

のり.jpg
PVAL(別名ポバール、PVAとも)
視認しやすいようインクでブルーに着色しています。
塗りやすい粘度になるよう、水を加えてください。
(PVPはお湯で溶かせますけど、泡立つので使いにくいですヨ)

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年12月22日 10:00

「マウント楽ちん大作戦」の補足

全体を通して「どういうしくみ?」とか「どこが工夫?」というところがわかりにくいと思いますので補足いたします。

①自作の紙マウントで糊を扱う作業は「手がべたべた」になりますので、まず先にスティック糊を塗り、乾かしてドライな状態にします。乾いていても、アイロンを使うと糊の樹脂成分が高温で溶けるのでホットボンドと同じ仕組みで接着ができます。フィルムを扱う作業が格段にやりやすくなります。
 このアイロンをラミネーターに替えたらさらに楽、というものです。

②ラミネーターでは、フィルム面にも熱がかかってしまいます。フィルムは僅かに湾曲しているので、フィルムの一部がラミネーターの高温部分に触れます。触れていない部分との大きな温度差のため、乳剤面のゼラチン層に皺ができてしまいます。
 では、フィルム全面に均一に熱がかかればどうか?という実験がうまくいったので、そのような治具を紙で作ったのです。本当はフィルム面に熱が伝わらないようにするのが一番でしょう。これは今後の課題です。

③ラミネーターは手で押さえつけるアイロンよりも、温度、圧力ともに低いようです。そのため、より低温で溶ける樹脂が望ましいのですがなかなか見つかりません。
 一度乾いた糊に水をスプレーして湿らせる方法は、単に接着力を回復させているようにも見えますが、接着力の回復は十分ではありません。
 それよりも、水分があることで熱の伝わりが格段に良くなりますので、接着部分の温度が急激に上昇する効果があると考えています。このため、糊の樹脂成分が効果的に軟化すると推測しています。

④ラミネーターの効果は自動化だけではなく、均一な圧力がかかりますので、マウント仕上がりが平坦になるという効果もあります。

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月29日 08:00 | コメント (2)

マウント作業の新方式

 さて、フィルムへの熱影響がないように治具を作った。今度はラミネーターの温度設定を最高温にしてみよう。被験物は自作のマウント、接着剤はPVPのスティック糊をあらかじめ塗って乾燥させている。さて、結果はどうか。
 一応は接着ができているが、まだ十分に着いていない。フィルムの変形はなく、一安心。ただ、実験の結果わかったのは、フィルム面に接触する治具の紙面には、コート剤が無いほうがいい。白色の面は簡単に言うと白い塗料のようなものをコートしてある。このコート剤が剥がれ、細かいゴミとしてフィルム面に付着する。これがまた、かなり強力にくっついちゃうのだ。くれぐれも気を付けてください。フィルムに接するのは茶色のクラフト面。
 ここで、過去に市販されていたヒートシールマウントを同様に処理してみる。ところが、これが全く接着されない。どうやら、アイロンほど温度が高くないことと、ローラーの圧着力がそれほど大きくないことが原因のようである。
 自作マウントの場合、より低い温度で接着できるように工夫をすれば、フィルム面へのダメージもより小さくなるはずである。そう考えて、PVPより低い温度で接着できるものを探してみた。合成糊に使われているPVALを試してみたが、うまくはいかなかった。どうやら、接着面の密着性も関係している。さて、低温でよくつく接着剤、無いものか。
 あるとき、切手を手にしてひらめいた。乾いた糊なのだからもう一度水分を含ませたらどうか。フィルム部分に覆いをかけ、霧吹きで片側を濡らす。そのまま治具にセットしてラミネーターに投入した。設定温度は一番低くしてある。
 さて、結果はどうか。なんと、完璧に接着され、フィルム面もマウントも素晴らしい平面に仕上がっている。これなら簡単。新しい方法の完成だ。さあ、溜まっていた長巻24本分、約700枚を一気にやってしまおう。(おわり)

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投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月22日 10:00

超兵器H420号

 誰でも知っているラミネート加工というのは、ステレオマウントのヒートシールと仕組みがよく似ている。熱で溶ける接着剤を塗布したフィルムで紙をはさみ、加熱したローラーで圧着するのがラミネーターなのだ。だけど、ステレオマウントのような厚い素材を通すことのできる機種は限られている。すでに紹介したアコ・ブランズ・ジャパン社GLMH420型は、1.0mmまでの厚い素材でもラミネートすることができる仕様で、ホビーユースとしては稀有な存在だ。
 それに、この機種はローラーの加熱温度を3段階で調節することもできる。ステレオマウントを作るには高温がいいのか、低温がいいのか。実験してみなければわからないのだが、温度の選択ができるというのはいいことだ。
 さて、さっそく実験をしてみた。マウントをそのまま通すと、露出したフィルム面に加熱されたローラーが直接触れてしまう。熱の伝達の点ではマイナスだが、二つ折りにした厚手の紙で挟んで通すことにした。さすがに初めてのことなので、機械に通すときには緊張する。ほんの十数秒で加工が終わり、機械の後ろから被験物が出てきた。
 なんと、フィルムの乳剤面が熱で変形している。マウントの接着は・・・いまひとつ接着が弱い。機械の温度設定は最低温にしている。温度を上げることはできるが、フィルムはさらにダメージを受けるだろう。はてさて。
 まずは、フィルム面のダメージを回避する方策が先だ。フィルム面が湾曲して高温の部分に直接触れないように、マウントと同じ厚紙で窓の部分を覆うことにした。マウントを自作したときに切りかすとして出た部分を使う。若干サイズを小さく加工している。これを厚紙の台紙に位置合せをして貼り付け、さらにマウントをセットしやすいように位置合せのパーツを貼り付けた。この治具で何とかうまくいって欲しい。というわけで再実験。(つづく)

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投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月21日 10:00

マウント楽ちん大作戦

 未だにフィルムでステレオ撮影をしている人は少ないだろう。ステレオ・デジカメが登場してから、フィルム派は激減、絶滅の危機に瀕している。デジカメという脅威が駆逐している、のではない。だいたい、ポジフィルムでステレオ写真を作るということ自体、とってもメンドクサイのだ。メンドクサイことは誰でも嫌い。これが激減の原因だ。
 自分でポジをマウントに仕上げるときに、とっても面倒なのがマウントのシール。アイロンで接着できるとはいえ、一枚ずつ、フィルム面を避けながらアイロンを押さえる作業はくたびれる。時間も力も必要。しかも単調。ツマラナイ。
 こういう、単調でツマラナイ、くたびれる作業というのは機械に任せてしまいたい。いくらフィルムで撮ることが好きだといっても、僕だってこんな作業はとってもイヤなんです。有能なロボットでもいてくれれば、すべてお任せしたい。
 まあ、全てをお任せできなくても、フィルムをセットしたマウント台紙を機械の入り口に入れれば、後は自動で出口からシールされて出てくる、そんなことぐらいはデキルのではないだろうか。そんなことを毎日考えていた。
 マジメに考えると、加熱されたローラーで挟んで、モーターで送ればいいのだ。単純な構造。自作することもできそうだけど、僕は電気モノには弱いのである。特にヒーターは怖い。火傷だけじゃなく、漏電の可能性も高い。
 自作は無理かな~なんて、思考が行ったり来たりする日々が続いていたが、市販でこういった機械があることに気が付いた。ラミネーターである。書類をフィルムでパウチするときに使う機械です。まさにぴったりの機械。
 早速、アコ・ブランズ・ジャパン社GLMH420型を選定し、購入した。ハロゲンヒーター採用のクイックスタートラミネーターA3対応マシンである。作業の詳細は追って紹介しよう。(つづく)

H420.jpg H420a.jpg
▲導入した最新鋭機w                ▲怪しく光るハロゲンヒーター

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年10月20日 10:00 | コメント (2)

イエロージャック式マウント(完)

何回かに分けて紹介したマウントの自作方法、お役に立つでしょうか。
具体的な各部の寸法は?
という方は、既存のマウントをモノサシで測っていただいても簡単なのですが、
図を載せておきますので参考にしてください。
この通りでなければならない、ということはありません。
どうぞ、あなたのオリジナルマウント作製にお役立てください。
ご質問は、コメント欄にて随時受け付けています。

YJマウント.jpg

では次週より、話題を変えて、毎週木曜日に更新します。
更新・・・できるといいなぁ。できるかなぁ。
とりあえず、お楽しみに。

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月26日 10:00

紙のふしぎ(2)

 僕がステレオマウントの自作で使っている紙は、事務用品で使われている「個別ファイル」といわれているもの。適度な厚さがあって、強さがあり、折り曲げ線で素直に折れるので使いやすい。もともと「個別ファイル」に求められる性質がそういうものであったからだろう。書類をたくさん束ねて、仕事で使うたびに取り出しを繰り返しても丈夫で、表紙も兼ねる紙。つまり、適度な厚さと腰の強さがある紙が使われている。
 ふしぎなのは、この「個別ファイルの紙を単体で購入しようとしても、手に入るルートが見つからないのだ。このぐらいの厚さの紙になると一般的な需要としては少ないのだろう。工作用としてならもっと質の低いボール紙があるが、紙の繊維が粗すぎ、厚さも極端に厚くなる。一方「個別ファイル」の紙より少し薄くなると、紙種はとたんに豊富になる。
 では、僕が求める紙はどこで使われているかというと、製本業界らしい。本の各パーツ用に、厚さや腰の強さもいろいろな紙が流通しているらしい。ごく僅か、自分で本を作る人向けに買える所もあると聞く。だが、選択の自由度は小さい。
 だから個別ファイルのように、一般に流通しているものが使えるなら、それを利用するほうがずっと安価である。
 たかが「紙」であるが、「これ」というものを買うのは難しい。そんなばかな、たかが紙ではないかという人もいるかもしれない。では、新聞紙を、印刷前の状態で買ってきたまえ、とか、A3サイズのティッシュペーパーを買ってきたまえ、とか、辞書に使われている薄い紙をA4で用意したまえ、なんて言われるととたんに閉口してしまうはずである。
 いつも身近にある紙も、その性質に着目すると実に奥が深いのである。個人的には「お札の紙」をどうやって作っているのか、ルパン三世並みの興味を持っているのだが、日本の優秀な印刷技術とともに国家の機密だそうである。

▼ マウント切り出しの要領を参考として提供します。
カット要領.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月23日 10:00

紙のふしぎ(1)

 写真用品やカメラの道具やらを自作する上で、便利な素材が紙なのだ。ごくありふれたものなのに、種類によって性質が異なる。紙の作り方はご存知の通り、主に植物に由来する繊維を漉いて形にするのだが、元となる植物の種類に起因する繊維の形や、繊維に加工する工程、漉き方でずいぶんと違ったものになる。
 身近でありながら特殊な紙といえば、お札。ミツマタという、繊維の長い植物から作られ、薄い割に破れにくい強さを持っている。札束を胸ポケットに入れていたため、銃で撃たれたのだが命拾いした、という話もあるぐらいだ。
 ステレオマウントの素材として使う場合など、適度な厚さと強さが求められる。ただ強さといっても、お札のような破れにくさではなく、たわみにくい腰の強さが必要なのだ。そうすると、厚さがほどほどにある紙に的が絞られてくるのだが、紙の製造工程が変わると強さも変わるので、厚ければどれも強い紙かというとそうとも限らない。
 紙の規格を表すものに、坪量とか連量がある。これは一定の大きさの紙の重量を示したもので、数字が大きいほど重い紙ということになり、厚い紙であることがわかる。では、数字が同じなら厚さや強さが同じかというと、厚さは大体同じぐらいになるものの、強さに関しては全く当てはまらない。厚くてもふにゃふにゃなものがあるし、トレーシングペーパーのように繊維を化学処理したものが混ざっていると薄くても腰の強い紙になる。
 そういうわけで、紙選びには結構苦労が付きまとう。実際、マウントに最適の紙を手に入れるというのは難しい。まるで、書道家の紙選びのような様相を呈してきたわけだが、マウントに使う紙は和紙と違って、腰の強い洋紙に的が絞られてくる。和紙の工房に頼んだり、自分で漉くといった究極の行動に移るわけにもいかないというわけだ。

▼ 窓枠をうまく切り落とすための小技も提供しておきます。
枠の切り方.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月21日 10:00

マウント時の工夫

 自作に限らず、マウント作業の一番のポイントは左右のコマ位置の微調整だ。左右の位置調整はステレオウインドウの調整とトリミングも兼ねるから、この調整で雰囲気が大きく変わる。また、上下の位置調整が狂うと目が疲れる画面になるし、微妙に傾きがずれていても、ウインドウの周辺で違和感が出てしまう。
 この調整作業を助けてくれるのが、貼りなおしができる糊。適度な粘着力をもっているので便利だ。最近、文具店の糊コーナーでよく見かけるのが、テープタイプのもの。これは、ロール状になったベースに、ドット形状で粘着物が並べてある。手を汚さずに扱えるので便利だし、貼りなおしもある程度できるので良さそうな感じ。使ってみると、確かにいいんだけど、ちょっと糊の弾力が強すぎる感じがする。微調整をするときに、糊の弾力が利きすぎて、コマの位置が元に戻ってしまうのだ。十分の一ミリ単位の調整にはちょっと向かない。
 もう少しいいものがないかと、いろいろ試した結果、いい物を見つけたので紹介しよう。トンボ鉛筆製の“液体のり・ピットマルチ2”というやつである。白い粘液状の糊で、乾かした後に粘着性を持った状態になり、貼りなおしができる。これを薄く塗ると、弾力を無視できる程度になるので位置調整がやりやすい。ごく薄く、少量だけ使うのがポイントだ。
 ヒートシールマウントには、この糊を要所に置いて、フィルムの仮位置決めに使うと作業が楽である。アイロンを当てて固定する前に、仮止めの状態でビュアーに入れて確認するのだ。ステレオウインドウがおかしいなど、フィルムの位置を微妙に修正する時、仮止めができる糊はとても便利である。シールするときに熱を加えても、何の問題も生じない。
 さて、新型マウント製造の主な紹介はここまで。この後も若干、アイデアを紹介します。ご活用あれ。

仮付け糊.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月19日 10:00

フィルムガイド

 マウント作業で、やっぱりあると便利なのがフィルムガイド。マウントにコマをセットするときに基準となる印のことである。過去に売られていたヒートシールマウントでは、紙を型押しして段差が作られていた。
 この段差のところにフィルムの底辺を当てれば、大体の位置が合うというもので、これがあると無いとでは作業の安心感は雲泥の差である。試しに、ガイドのないまっさらなマウントを使用すると、慣れるまでにかなりの練習が要る。
 もちろん、ステレオウインドウを調整するには、このガイドだけに頼るのではなく、枠と画面構成物の位置をよく確認しながら調整する必要があるのだから、ガイドはあくまでも位置の目安としていただきたい。
 では、クラフトロボで切り抜くマウントでは、どのようにしてガイドを作ればよいか。難しい問題のようで、やってみたら実に簡単だった。試しに、マウントの底辺から2mm上に、一本の切れ込み線を入れてみた。ただの線。
これをライトテーブルの上に置くと、切れ込み線から光が漏れ、ガイドが良くわかる。この位置、窓枠との関係もちょうど良く、あれこれ悩む必要も全くなかった。光の漏れが少ないようなら、カット線を重ね、深く切ってください。
 さて、段差の無いフィルムガイドは、シールしたマウントを重ねるときに引っかかったりせず、とっても快適。段差のあるマウントは、ここで引っかかったり、重なった方のマウントの窓を壊したりと、いいことがなかった。アイロンをあてる時に、ここを潰すために何度も力を込めたものだ。もう、そんな無駄な努力はしなくても良い。
 そう、今度の新しい方法、とてもいいです。ただ、マウントの裏表がわかりづらくなるので、それは表側に気に入ったスタンプを押すなど、別の工夫をすればいい。使いやすいマウントへの、小さくても大きな工夫だよぅ。

フィルムガイド.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月17日 10:00

クラフトロボ運用ガイド

 クラフトロボを使ったマウント作製作業、快調である。カッターと定規を使った手作業などとは、比べ物にならないほど速く、正確にカッティングできる。これを使うようになった経緯については前に紹介したとおりだが、はじめて使う人には戸惑うことも多いだろう。もっとも、これを使って作業をしている人が日本中で何人いるか知らないが・・・。
 僕が使っている機種は既に旧式となり、今ではパソコンに接続しなくてもカッティング動作ができる新機種が発売されている。それでも、基本的なメカの機能は同じだろうから、以下に述べることを参考にしていただきたい。
①カット線の順番は指定できず、機械が勝手に切る順番を決めて動くので、カッティングヘッドがあちこちに移動しすぎると精度が出ない。微妙にずれたりするので注意。対策は、図案を用紙範囲に全て並べるのではなく、上下に分割するなどして、カット作業自体を分離するといい。つまり、図案を複数のデータにして、順番にカット指示をする。
②ヘッドの送りスピードは最速にしても、カット精度が落ちることはない。
③マウント開口部が切り離されて、ここの切りカスが引っかかることがある。ワークの下にはカッティング用台紙をあてて、切りカスがあちこちに行かないようにしよう。プラ下敷きにスプレー糊を軽く吹いたものでも同じように使うことができる。
④前後方向のカットでは、送り方向によって切れる深さが浅くなる。カット線を重ねて確実に切れるよう工夫する。また、折線は点線でカットするといいが、ここのカットが浅いときは、カッターでなぞる手作業をした方が仕上りはいい。
⑤マウントのデザインは、1mm間隔のグリッドを設定し、グリッドスナップを有効にすると作りやすい。スナップ有効のままでも、実用的なデザインが可能。微妙な調整をするには、スナップを無効にしてから頂点編集で直すといいだろう。 

カット順.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月15日 10:00 | コメント (3)

どんな紙がいいか?

 マウントに使う紙はどんなものがいいか。これには個人の趣味も出てくるので、これじゃなきゃダメだというものはない。だけど、昨今の自作マウント事情を調べてみると、誰もが苦心しているのが紙のコシのようである。
 一般に手に入りやすい厚紙は、坪量で200g/平米台のものが多く、厚さで0.3mm前後、はがきよりちょっと厚いという感じだが、ステレオマウントに使うにはちょっと薄すぎる。もう少し厚いものが欲しいところだが、このランクで「特厚口」とされ、これを超えるものは普通に流通していない。仕方なくこの厚さのケント紙を使っても、コシが弱いのでなんとも頼りない。そんなわけで個別ファイルなど、厚紙製品を流用して最適な用紙を手に入れようとしたわけである。
 個別ファイルといっても、紙の種類や価格帯も様々で、やはりケント紙をベースにしたものはコシが足りない傾向がある。たぶん、表面の滑らかさを出すためにパルプ繊維を細かくしているためだろう。もっと粗い紙のほうがいいか。
 楽天は、最安価格帯を調べるのにも重宝。ここで、個別ファイルの安いものを探してみるといい。50枚入りで千円を切るものもある。見つけたのが、今村紙工という会社で製造している個別ファイルである。これがなかなかいい。
 特別厚手のクラフトペーパーのような厚紙でできており、片面には白色コートが施してある。マウントにするときは、白色の面を外側にするといい。茶色の面はやや粗い感じだが、糊付きが良いので不便はない。クラフトロボでのカットもスムーズだし、他の紙にはないコシがある。この個別ファイル50枚から、600枚のリアリストマウントを作ることができる。
 この個別ファイル50枚は、送料込みで1,500円ほどだから、マウント1枚当たり2.5円になる。素材のみの価格になるが、これほどリーズナブルなものは他にはあるまい。次は、カット精度を上げる工夫を紹介します。(つづく)

▼ 参考としてカッティングデザインの小ネタを提供します。
マウント窓枠.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月13日 10:00

これはいける。新マウントのカギ。

 自作マウントを改良しながら、イロイロと苦労を重ねてきたわけであるが、一番の苦労は糊付けだった。糊付け作業が楽になるよう、糊シロを分割したマウントを考案したのも過去の工夫の一つ。だいぶ改善されたのだが、それでもはみ出た糊で指がベトベトになる。慎重にフィルムを扱わなければならない作業にあっては、やはり煩わしい。
 もう一つ、糊シロを分割したマウントは形が特殊なため、A4サイズの用紙で4枚しか取れない。屑として捨ててしまう部分が多く、もったいない。ヒートシールの紙があれば、こんな無駄や苦労が省けるのだが。何とかならんか。
 そんなわけでヒートシールの紙を捜したが、見つからず。そこで、前回の実験の結果である、合成樹脂系の糊がヒートシールに応用できるというものを実践してみた。張り合わせ面にスティック糊を塗り、十分に乾燥させる。はみ出した糊はマウント作業前に取り除いておく。糊を塗るだけなら結構簡単。ストレスなく作業が進んでゆく。出来上がったものは、粘着性が全く失われていて、本当にこれで大丈夫だろうかという感じ。乾いた糊が熱でくっつくのだろうか???
 フィルムとアイロンを用意し、シール作業をしてみる。すると、どうだろう。過去に購入したヒートシールマウントと全く同じように仕上がるではないか。さらに実験すると、シールする片面に糊を塗っただけでも接着する。これは驚き。
 こうなると、糊シロを分割しなくても良いので、簡単な形状のマウントに戻すことができる。クラフトロボのカットデザインを一新し、A4用紙で6枚が取れるようにした。ただし、クラフトロボではカット可能範囲にぎりぎり収まる状態なので、用紙セット時の位置調整には微妙な手加減が必要。まねをする人は、この点に十分注意下さい。
 ようやくゴールが見えてきた。こういうのが趣味の醍醐味だよなぁ、なんてつぶやいてみる。(つづく)

マウント切断配置.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月11日 10:00

ヒートシール方式への実験

 過去に、マウントを自作するためにカッティングプロッターという機械を購入し、これで厚紙を切り取る方法を紹介した(*)。この方法はなかなか便利なもので、プレスで型抜きする方法と違い、マウントデザインを都度変更することができ、高価な金型や大掛かりなプレスマシンを使用しない。ホビーユースとして最適だ。公開するのは、この方法の続き。
 過去に紹介した方法は、マウントの貼り合わせを一般的なスティック糊で行うことを前提にし、糊付けがやりやすい形のマウントをデザインした、というもの。手法として、一応の完成に至ったと思われたが、継続して作業をしてゆくとやはり不便を感じる。繊細なフィルムを扱う作業と、糊を扱う作業は、作業の流れの中でどうしてもなじまない。
 アイロンの熱で貼り付ける、ヒートシールマウントはこの点でやはり優れていた。こんなドライタイプの接着剤というのは今の世の中、いろいろな工場の中で大活躍しているという。一般的には「グルーガン」の名称で売られているものが有名。工業用にはさまざまな特性を持つ接着剤があり、ホットメルトと呼ばれ、どれも主成分は熱可塑性の樹脂だ。
 ふと、手元にあったスティック糊の成分を見ると、PVPと記されている。ポリビニルピロリドン。まさに樹脂である。もしかしたら、これらの樹脂製の糊はヒートシールと同じ効果を持つかもしれない。さっそく実験である。
 いろいろな糊を短冊状の紙片に塗り、乾いた後で同じ糊面同士を向かい合わせ、アイロンで接着する。結果は、2種類の糊を除いて完全に接着した。接着力が出なかったのは「何度でもはがせる」というタイプと、定番の赤いPrittである。Prittの主成分は不明だが、100%植物由来であるというから、熱可塑性の特性は持たないのであろう。
 さて、新しい発見をしたので、これを基に新しいマウントの製造法を考えてみたのである。(つづく)

(*) 「ステレオマウント」のカテゴリーを参照ください。

接着テスト.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月09日 10:00 | コメント (2)

【号外】新型マウント・開発完了

 安価なヒートシール紙マウントの入手が困難となった今、フィルムでステレオ写真を撮ることに躊躇している皆様が大勢いらっしゃることと思います。方やデジタル機器の進出目覚ましく、いまさらフィルムという感じでもありましょう。「久しぶりにクラシックでちょっと撮ってみっか」という気持ちが芽生えても、「撮ったところでマウントがねぇや、やめやめ」ということで気持ちが萎えることも多かろうとお察しします。そんな皆様に朗報です。
 当ステレオクラブ東京・フィルムカメラ研究所(仮称)におきまして継続実施して参りましたマウント開発が、このたび無事完了いたしましたので、謹んでお知らせ申し上げます。以下「イエロージャック式新型マウント」の概要です。
★特厚のコシの強い厚紙からクラフトロボにて切り取ります。
★実用的な、十分なマウント強度を確保しました。
★ヒートシール式紙マウント(アイロンで接着可能)です。
★フィルムガイドは出っ張りなしでより使いやすくなりました。
★高精度紙マウントが、素材費2.5円(マウント1枚あたり)で製造可能です。
★リアリストサイズだけでなく、各種画面サイズに対応したマウントにカスタマイズ可能です。
こんなことで、どこまでお役に立つかわかりませんが、順次詳細を公開いたします。
ご質問などはコメント欄にお寄せください。
では、どうぞお楽しみに。

イエロージャック式マウント.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年05月07日 14:30 | コメント (3)

マウント作業の前に

 ステレオカメラで撮影したフィルムは、現像のときに必ず「長巻で」と伝えるようにしよう。普通のライカ判とはコマ送りが異なるから、間違ったところで切断されると困るからだ。とはいえ、ヘンなところで切られることはまず無い。うっかりそのまま現像に出しても「コマの間がわからないから長いままで返却します」ということで長巻になって帰ってくる。
 長巻は、文字通り1本のフィルムを切らずにロール状に巻いたもの。現像所によって、薄い紙を間に挟んで巻いた場合と、長いビニールチューブに入れて巻く場合の二通りある。どちらもその状態のままでコマ毎にカットすると、カールが強すぎてうまくマウントできない。平らに戻してやらなければならない。一番簡単なのは、一方の端を洗濯ばさみで挟んで吊るし、一番下に適当なおもりを付けておけばいい。あるいは、戻ってきた状態と逆向きに巻いておいてもカールが取れる。ただし、うっかり忘れて放っておくと逆向きのカールが付いてしまうので注意。
 どちらの方法でもある程度のカールは取れるが、なかなか平らにならない。適当な長さにカットして、フィルムシートホルダーに入れて数日置いておけば平らになる。平らになったフィルムをはさみで一コマ毎にカットし、マウントすればいいのだが、たくさんあると面倒なのだ。慣れてくれば楽しい作業だが、すぐに見たいときもある。マウント作業をやらなくてすむ方法が無いのだろうか。
 リアリストでもヨーロピアンの場合でも、コマを切り分けた後は画面をひっくり返さなければならない。だからロールのままでビュアーにセットしたら逆ステレオ、つまりは凹凸が逆になる。何かの仕組みで左右を入れ替えなければならない。・・・ロール専用のビュアーを自作するのは難しそうだ。

フィルムロール.jpg Newビュアー.JPG
こんなビュアーがあればいいのだけど、この方式では逆ステレオになってしまう  ▲

投稿者 sekiguchi : 2011年03月19日 00:10

銘を入れる

 日本刀の刀身の、柄の部分には刀匠の銘が入る。硬い刀身に、タガネを使って銘を入れる。砂鉄から作った鉄の塊に、命を吹き込んだ鍛冶職人の、証というか、仕上げの仕事というか。なかなか深いものがあるよなぁ、と常々思っていた。日本刀は砥師や鞘などを作る職人たちの分業によって完成するわけだが、刀身には命を吹き込んだ刀匠が銘を入れるのである。
 ステレオ写真だって撮影者が命を吹き込み、ラボの職人が現像し、マウント師が仕上げをするという分業になる。まあ、現像以外は一人の仕事になるのかもしれないけど、完成した作品には銘を入れたい。そんな思いがあって、僕はマウントには自作したスタンプを押している。スタンプではなく、手紙に蝋でシールするときのイニシャルとか、落款を押すのもいいかもしれない。あるいは直筆のサインか。作品の題名とか、撮影年月日、ちょっとしたコメントなんかを入れるのもいい。
 ペーパーマウントに記入するとき、僕は鉛筆を使っていた。シルクスクリーンの版画なんかに入れられたサインも鉛筆だから、これをイメージしたのもあるけど、ペンだとインクが滲むことがあるからだ。今はマウントの紙質を選んで自作するから、インクが滲まない紙を選ぶことができるようになった。こうなると、万年筆で銘を入れたくなってくるのである。
 カメラと万年筆。男の趣味の王道の一角を占めるこれらのアイテム。ステレオ写真にして両者が交わるという事になった。万年筆というのも深い深い沼である。踏み入れるとなかなか抜け出せぬ楽しみが待っている。文章を書くには太字がよいのだろうが、マウントに銘を入れるのならばどんなペン先が合うのだろう。インクは何がよいだろう。あれこれ考えながら、手持ちの万年筆で銘を入れる練習をする。なかなかイメージ通りの文字にならないのだが。
 インクの濃淡が美しいセピアのインクなどないだろうかと探しながら、密かに美しい文字の練習をしているのである。

銘を入れる.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年01月06日 10:00

コマ箱

 マウントするために長巻のフィルムをカットすると、全部で58コマになる。これをバラバラにならないよう保管しておくのはけっこう苦労するのだ。いったん全部カットして、左右のペアごとに並べ替える。ここまではまあいいとして、これをどう保管するか。一つにまとめてフィルムケースの中に入れておくのも良い。蓋を閉めておけばバラバラになったり、コマの順番が乱れてペアが崩れることがない。だけど、マウント作業のときは取り出しにくい。
 理想を言えば、内部に仕切りがある箱で、1ペアごとに取り出せるものがいい。そんなものがリアリストのマウントキットに、プラスチック製のトレイとして同梱されている。もちろん中古品。ebayなどで入手するしか方法がない。
 キット全部はいらない。この箱だけ欲しい。それでebayを監視していたが、結構人気があって高額になりやすい。たかが箱に、と思うほど高くなる場合があるのだ。それに実物を見たことがなく、細部の仕様がわからないので入札しにくい。
 それなら、自分で作ればいいではないか。またまた「自分で作るシリーズ」である。たかが箱なら紙で作ればいい。自作マウントの研究のため、買っておいたA4判ケント紙がある。これを使おう。紙のカットは、自作マウントの加工で活躍してくれているクラフトロボを出動させれば簡単なはず。さてと、早速カットデータを作成しよう。
 自分が使いやすいよう寸法を決めてデザインするのは楽しいものだ。クラフトロボを使うと、はさみで切るより数段高精度に、しかも早くカットできる。こういうとき、ホントウに頼りになる。カットしたパーツを組み合わせるとピタリと合う。
 各部を糊付けし、保管時の埃避けのために蓋も作る。クラフト模型を作るのはこんな感じかな?と思いながら楽しく作業完了。どうせならと3個作製した。その日からマウント作業が実にやりやすくなった。おススメです。

コマ箱.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年02月02日 10:00 | コメント (2)

マウント職人への道

 たかがマウント。されどマウント。台紙に挟めばとりあえず立体に見える。しかし、二つの画面の位置関係とか、構図の調整で見栄えがまったく変わってしまう。僕が初めてマウントしたものをあらためてみて見ると、ステレオウインドウがめちゃくちゃだったりする。でも、初めのころはそんなの気にならなかった。立体に見えることのインパクトのほうが大きくて、少々の欠陥は見逃しちゃうのだ。
 だけどしばらく自分でやっていると、マウントのときの画面調整で表現自体も変わってくることに気がつく。これは一つの作品作りの一工程であって、他人任せじゃだめなんだ。機械でオートマチックにやったんじゃだめ。だからコダックがマウントサービスをやっていた頃も、値段も理由にあるけど依頼したことはなかった。
 マウント作業で一番厄介なのが、ごく近い距離にある被写体を撮影した場合だ。ステレオウインドウがうまく作れなくなる。解決する方法は、マウントの窓の幅を小さくする。昔は、ハーフサイズ用のマウント台紙を使って解決していた。今はマウントが自作できるからどんなものも作ることができる。
 マウント作成の自由度は広がったけど、作業は面倒な部分も出てきた。より使いやすいマウント、作業がしやすく疲れないマウント、まだまだ改良しなければならない。これが完成形だと思っていても、しばらく使っていると改善しなければならない部分が見えてくる。ヒートシールの紙とか、新しい素材が手に入っても新しいアイデアが生まれるだろう。
 そんなわけで、マウント作業の職人を目指していたつもりが、マウント自体を改良するに至ってしまった。いったい、どこまで突き詰めれば良いのだろう。片方の眉を剃って山篭りでもすれば答えが見つかるのかもしれない。

B09.jpg
△ebeyで手に入れたスチール製マウント
(使い方が今ひとつ不明)

●● これからもさまざまな話題で登場いたします。どうぞヨロシク。 ●●

投稿者 sekiguchi : 2009年09月11日 23:30

新型マウント・大地に立つ

 再び、ここは前線に立つリアリスト部隊である。備蓄のマウントは日々少なくなっている。
伍長:隊長殿、補給部隊から新しいマウントが届きました。輸入品ではなく、新たに作ったそうです。
軍曹:おお!成功したのか。それにしても・・・今度のはずいぶんと変わった形をしているな。
伍長:糊で貼り合わせるマウントですから、作業性を考慮してノリシロを分割したそうです。
軍曹:4辺を内側に折り込むのか。これなら面がフラットになるな。材料は事務用品の個別ホルダーか?
伍長:はい。厚い材料をカットするため、窓のところはカッターを3回走らせて切り抜いています。
軍曹:ということは、当初の設備で加工が成功したんだな。
伍長:設備投資の費用も含めて、1枚あたり9円のコストだそうです。この程度なら気軽に使えます。
軍曹:これで近接用、ヨーロピアン用も含めて自由に作ることができるのは心強い。作戦は成功だ!
 こうしてリアリスト防衛軍は戦略物資を自ら作り出すことに成功した。今回の成功の最大の鍵は、クラフトロボで厚紙を切断する工夫ができたことにある。カット線を往復させると厚い紙もカットできることが研究の結果わかったのである。A4サイズの事務用品は大量に作られているため、探せば安価なものが手に入るし、供給も安定している。糊は試作結果でウレタン系のコクヨ・パワープリットか、PVP系ならトンボ鉛筆のピットハイパワーがよい。近年の糊は、接着剤と呼んだほうが相応しいほど新しい技術が導入されている。このほかにも数々の工夫を盛り込んでマウント加工の体制を確立した。幾多の困難が立ちはだかろうとも、微かに光るインスピレーションを大切にすれば解決することができるのだ。
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投稿者 sekiguchi : 2009年09月06日 13:35

マウント開発

 ここはリアリスト研究所にある特務機関の一室である。マウントを自給できる体制を確立するのだが、次のような大前提のもとに研究を進めている。まず、機材や材料は特別なものではなく、一般に流通しているものから簡便に調達できること。次に、1枚あたりのコストが10円程度になること。コストといっても、販売を目的としないので自分の作業費はタダとしておく。加工機械の償却費も合わせて従来のヒートシール紙マウントと同じぐらいの費用負担になることを目指す。
 まず、加工機械としてグラフテック社のクラフトロボ(CC200-20)を導入した。オープン価格であるが、市場価格は24,000円前後といったところ。5千枚のマウントを加工すれば投資分は1枚当たり5円を切る。材料は1枚20円程度のA4サイズ厚紙を使い、ここから4枚のマウントが取れればトータルで1枚10円以下になる。
 他の高グレードのマシンであれば厚紙でも自由に切れるのだろうが、それではあまりに初期投資が大きすぎる。安価なマシンを選定したのだがその能力はどうか。これが最大の課題である。テストカットの結果、加工のスピードと精度は十分なレベルにあるものの、マウントに最適な厚紙は切り抜けないことが判明した。対策として切断可能なケント紙を分割して加工し、重ね貼りで強度を出すことを試みた。しかし糊付けの手間が増え、作業性が非常に悪い。
 加工が簡単でかつ貼り合わせがやりやすいこと、A4用紙からなるべく多く作れることといった問題が重なり合って解決の糸口が見えない。新しい展開図を作り、切断加工して試作、変更してまた試作をするという行為が続く。この方法では不可能かもしれないと諦めかけたこともある。厚紙を切り抜くことさえできればいいのだが。やはり高グレードの機械を導入しなおすしかないのだろうか。苦悶の日々が続く。さて、実用的なマウントは完成するのだろうか。(つづく)
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投稿者 sekiguchi : 2009年09月03日 23:01

マウント製造作戦会議

 ここはリアリスト防衛軍の作戦参謀室である。重要戦略物資である、ヒートシール紙マウントが枯渇の危機にあることが判明し、徹夜の作戦会議が続けられている。参謀たちの疲労もピークに達している。しかし、前線に物資を届けなければ全体の士気に関わるのだ。負けるわけにはいかない。課題はいかにして自前で製造体制を構築できるか、である。
中尉:加工方法はともかく、ベースとなる紙の種類を決めなければなりません。入手性も考慮したほうがいい。
少佐:中尉の意見に賛成だ。しかし、市販のケント紙では強度不足であることが判明している。どうする?
中尉:入手性と価格の点から、事務用品の個別ホルダーが最適の材質です。後は加工方法が・・・。
少佐:やはりダイ&パンチ方式か。あれは型の作製に費用がかかりすぎる。後から変更もきかないんだぞ。
中尉:似たような型抜き式のものに家庭用のがありますが、型は特注になりますね。実用的といえるかどうか。
 行き詰まったとき、見方に強力な諜報機関がいる。その名はヤフー。さあ、今こそ力を発揮するのだ、ヤフーよ。
というわけでさっそく検索したがマウント自作の有力な情報はない。いざというときに役に立たない一面も持っている。
途方にくれていると、検索でカッティングプロッタというパソコン周辺機器がヒットした。ホビーレベルの安価な設定の機種もある。デザインした図案の通りにカッターが紙の上を走り、高速かつ正確に切り抜いてくれるマシンである。ただ、あまり厚い紙は切れないらしい。どこまで能力があるのか。果たしてわれらの新しき工廠として活躍してくれるのだろうか。
とにかく、加工の自由度と初期投資のバランスからしてカッティングプロッタで加工技術を確立することが最善の方策であろうという結論に達した。さっそく作戦本部に上申し、試作作戦を展開することとする。作戦行動開始!

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△導入した最新鋭工作機械

投稿者 sekiguchi : 2009年08月30日 01:09

緊急入電!製造停止!

 ここは前線に位置するリアリスト部隊である。戦闘に必要な物資は補給部隊の支援を得なければならない。
伍長:隊長殿、そろそろマウントを補給しないと備蓄が枯渇してしまいます。あと200ほどしかありません。
軍曹:よし、いつものように海外通販で購入したまえ。今回は2箱、2500枚を船便で輸送させよう。
伍長:了解!・・・隊長殿!海外通販のサイトに物品が出ていません!まさか・・・
軍曹:慌てるな。先方に状況確認をするのだ。メールだ。緊急打電したまえ。
伍長:返信が来ました。読みます。「セイゾウガイシャ、トウサン。キカイフルク、セイゾウサイカイノメドナシ」
 何だって!?・・・隊長の脳裏にあった一抹の不安が、いま現実になったことを知らせる電流が走った。
とうとう来たか。それにしても早かったな。いつかは来ると思っていたよ。最近補給されるマウントときたら窓の切り口に毛羽立ちがあったからな。だからマウントのたびに窓の毛羽立ちをサンドペーパーで除去していたんだ。あれは明らかに打ち抜き型のパンチがすり減っている証拠だった。マウントの製造部隊は疲弊していたに違いない。
 思えば、8年前は紙マウントの接着部分が濃いグリーンで遮光の点でも優れ、窓もきれいに切られた使いやすいものだった。それがいつの間にか接着部分が水色になり、角窓の切り口に毛羽立ちが目立つようになり、そして送られてくるものが長く在庫していたような感じのものになっていった。それでも、このマウントが無いと困る。在庫を確保しなければ。
伍長:隊長殿、どこも在庫が無いようです。1カ所だけ在庫を持っていましたが、価格が高騰しています。
 ううむ。高値でわずかな在庫を掴んでもこの前線の維持は続かない。やはり自前の工廠が必要か。
(次回作戦行動を待て)

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△1250枚入 リアリストマウントの箱の表示

投稿者 sekiguchi : 2009年08月28日 23:04

第1回マウント製造計画の頓挫

 約10年前、僕がはじめてリアリストを手に入れたとき、マウントのことはあまり重要に考えなかった。あのころはコダックの現像所がマウント仕上げのサービスをしていたけど、これを使うことも考えていなかった。理由は料金が高かったから。出だしから金をかけすぎる趣味は長続きしない。今はなきマウントサービス、僕は一度も利用したことがないのだ。
 実は、どこかにマウントが売っていると思っていた。ダイヤモンドカメラに束でスリップイン式のマウント台紙(コマを台紙のスリットに差し入れてセットするタイプ)が売っているのを見つけたけど、使いづらそうだったから買わなかった。他の店ではどうかな?と、有楽町、銀座、新橋、新宿の老舗の中古カメラ店を覗くと、意外にもステレオカメラが多く陳列されている。だけどマウントが置いていない。いろいろ回ってやっと、新橋のお店でとても古いヒートシール紙マウントが30枚程度置いてあるのを見つけた。値札が無かったけど500円で譲ってもらったのを覚えている。
 売っていないのなら、これを参考にして自作しよう。というのが初めのモクロミだった。厚紙をカッターで切ればいいのだ。直線だけだからカンタン・カンタン。と思ったら、こいつが予想以上に難しい。「まっすぐにしかも寸法を正確に」ということが難しい。四角い穴を正確に切り抜き、切り口が毛羽立たないようにするなど至難の業だ。角がうまく切れない。薄い紙なら何とかなるが、それではマウントとして役に立たない。ある程度厚さのある、丈夫な紙で作るから意味があるのだ。結局、カッターとはさみで大量に作ることは人間の能力の限界を超えていることが明らかとなり、計画は頓挫した。
 この後海外通販で購入できることを知り、ヒートシールの紙マウントの大量購入で低コストな写真ライフを実現させていた。しかし今、再びマウントを作らねばならない時が来ている。

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△スリップインマウント(ハーフサイズ)

投稿者 sekiguchi : 2009年08月24日 22:58

マウントの危機

 僕はマウント台紙を海外から買っている。ヒートシールの紙マウントを箱で買っている。いろいろ検討した結果、この方法が1枚当たりのコストを最も低くすることができるのだ。少ないお金で最大限の楽しみを得たい。こういう考え方はケチではありませんよ。費用対効果というモノの考え方。「金ならある。一番高いものもってこい!」的な方法で最大の満足を得ようとするお方もいらっしゃる。なるべく安くね的な努力というのもそれはそれで楽しみの一つだと思うのだけど。
 とは言え「もう売ってないよ」となるとお金で解決できない状況になる。ステレオマウントなんていう、流通量がどう考えても少ないものがいつまでも売っているだろうか?という疑問は常に頭の片隅にあった。そんな現実がやってきた。
 海外通販マーケットの変化に気付いたのは、そろそろマウントのストックが尽きたなぁということで、新たに発注しようとしたときだった。通販サイトのカタログ欄にいつものモノが無い。あわててメールで問い合わせると、それを作っていた会社が倒産しただとか、古い機械で作っていたが、機械が壊れたのでこの先の目処が立たないとか悲惨な情報しか入ってこない。とりあえず在庫が残っているのを売りますとのこと。だけどもう値段が上がっている。そんな状況になってだいぶ経つ。
 まだ今のところは「高くてもいいからもってこい」で済む状態だ。今まで使っていたものじゃなくても、少々単価が高い別のマウントでも何とかなる状態である。でも、これって僕にとっては楽しい状況じゃない。安く上げる努力が楽しいのだ。
 僕がはじめてステレオカメラを手に入れたときは、マウント台紙をどうやって手に入れようかなんて考えていなかった。売っている所さえ知らなかった。紙を手作業でカットしても何とかなるさ、ぐらいに考えていた。でも実際にやってみると手作業では難しい。それを克服して自給体制を作る、というのがこの危機の脱出方法だろう。そんな話をこれから連載します。

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△定番 ヒートシール紙マウント

投稿者 sekiguchi : 2009年08月22日 21:54

写真の整理

 リアリストマウントは日本国内では製造していない。普通の35mm用マウントなら写真用品店で入手できるし、保管ファイルも発売されている。リアリストはマウントを何とかしても、ファイリングがお手上げになる。撮影を重ねて枚数が多くなってくると保管に困ることになる。ちょっと前までラボでマウントサービスをしていたころは、紙箱に入って渡されたからその箱がそのまま保管に利用できたが、今はそれもない。サイズの合う空き箱を探すのも一苦労だ。
 では米国ではどうかというと、専用のビニール製ファイルリフィルが売られている。1シートに10枚のスライドを差し込むポケットがついていて、透明だから内容の確認も簡単。とても使いやすく、通販で購入することができる。しかし困ったことに、このリフィルを綴じるファイルが日本規格じゃない。日本のファイルはA4とかB5サイズで綴じ穴が2つというものが主流。一方米国では台紙サイズがまず異なり、綴じ穴は3つである。この3つ穴ファイルが普通の文具店ではまず手に入らない。
 あれこれ探してみると、かつて流行(継続中?)のトレーディングカードのファイルリフィルが米国製で3つ穴だ。これを綴じるためのファイルも同じ店においてある。たぶん米国から輸入したものだろう。これはいい、と思ったらファイルにカードのキャラクターがプリントされている。これはちょっといただけない。さらに探すと、落ち着いた無地のファイルも僅かにあった。これだ。というわけで便利な専用ファイルが手に入った。
 これでも量が多くなると書棚があふれてしまう。というわけで僕は省スペース化のために、専用の収納箱を厚紙から自作している。1箱40枚の収納で、側面には整理用のラベルを貼っている。これは便利です。それから、マウントにはテーマごとにスタンプを作って押している。うまくできているでしょ。

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投稿者 sekiguchi : 2008年02月16日 13:45

ロゴ入りマウントで差をつけろ!

 皆さんはリアリストで撮影したフィルムをどう処理しているかな?リバーサルで自分でマウント?はたまたスキャナーで取り込んでデジタル鑑賞?いろいろな楽しみ方があるだろうが、リアリストは基本的にリバーサルを使って、スライドペアを鑑賞するシステムとして創られた。数年前までは日本国内でも現像所に注文すればステレオマウントに仕上げてくれた。今はもう便利なマウントサービスはやっていないから、自分でマウントしなきゃならない。こんな現実にお手上げの人も多いだろう。けど、昔はみんな手作業だった。ステレオウインドウをうまく作りながら構図を決める。やっぱりマウントは自分で納得する形で仕上げたい。
 リアリストが販売されていた当時もラボでマウントするサービスがあった。これも手作業だった。個人でマウントする人のためにも用品が売られていたが、これも手作業。なるべく快適にマウント作業ができるよう、工夫を凝らしたさまざまなマウントが売られていた。リアリスト・ブランドでいえば、ロゴの入ったプラスチックマウントがある。これはフィルムをセットした後、裏からガラス板を当ててペーパーシールで封止する。これは入手しても古くなっていて使いづらい。その他に、ロゴの入ったアルミ薄板でできたホルダーがある。これは表裏の両面をガラス板で挟み、周囲をテープで封止するもの。この他にも各社からいろいろ販売されていた。ヒートシールの紙マウントは昔も今もポピュラーに使われている。シールするにはアイロンが必要だ。リアリスト・ブランドで、専用アイロン付のマウントキットがある。中古マーケットでも決して安くはないが、このアイロン、温度にムラがありうまくシールできないのだそうだ。
 僕はマウント作業を自分でやるのだけれど、とにかく消費量が多い。一年で1000枚ほど消費してしまう。だから安価な紙マウントを箱買いして愛用している。シールには温度ムラのない最新式のアイロンを使っている。最新式?・・・普通の小さいアイロンです。

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投稿者 sekiguchi : 2007年05月04日 00:10